BellyBeater(中編)

ピューマを担いで戻ったオイラを、途中まで追ってきていた二人が出迎えてくれやした。

なんだかちっと驚いてるような顔をして…。

「さっきは、荒事は嫌いだとおっしゃっていませんでしたか?」

オイラが背負って来たピューマを軽々と持ち上げて、ひょいっと肩に担ぎながら、白い熊が片方の眉を上げて見せやす。

「嫌いでやすよ?でも、苦手たぁ言ってやせんぜぃ?」

肩を竦めてみせると、ヨルヒコ君は可笑しそうに笑いやす。

「な〜んだ。本当は強いんじゃないか!」

「強くはありやせんよぅ?ちぃっとばっかし慣れてるだけでさぁ」

そう。ユウ君みてぇな馬力も、ヨルヒコ君みてぇな素早さも、オイラにゃあねぇんでやすよう。

ま、小細工を使って生き延びる術にゃあ、そこそこ長けてやすけどね。



結局、虎猫と黒犬は、取り押さえるにゃあ手に余したらしく、それぞれヨルヒコ君とユウ君に仕留められてやした。

首をへし折られておっちんでる黒犬はともかく、首を裂かれた鹿と、胸に風穴をあけられた虎猫は、まだ瞳に意志の光が残っ

てやす。

生きてる訳じゃあありやせん。ヨルヒコ君の人狼の呪いのせいで、死に切れねぇでるんでさぁ。

「片方は解放しちまって構いやせんぜぃ?」

オイラの言葉に頷くと、ヨルヒコ君は虎猫の脇に屈み込んで、首筋にそっと触れやした。

途端に呪縛から解放され、虎猫の目からは光が失せやす。

「さぁて…、あんたが眠れるのはもうちょい後でやすよ?こっちにゃあ、まだ訊かなきゃいけねぇ事がありやすからねぇ…」

目だけ動かして見上げてくる鹿の瞳を見据えて、オイラは脅すように歯を剥いてやりやした。



「これだけの相手を…、たったお一人で…?」

死体三つに加えて、ユウ君からキッツイのを貰って気絶してる水牛に、オイラがどつき倒したピューマ…。

シルバーフォックスの皆様方の手で、次々と車に運び込まれてく、計五名の狼藉者に視線を向けながら、美人の娘さんが感

嘆の声を上げやした。

人間の姿になってるオイラの前にゃあ、御前の一人娘であるお嬢さん、芒野焦狐(すすきのしょうこ)さんと、同行して来

た若い女の方が立ってやす。

「お呼び立てして申し訳ありやせんでした。けど、オイラだけで人目につかねぇで運ぶのは、ちょいとホネだったもんで…」

オイラはそう応じつつ、運ばれてく水牛に目を遣りやす。

…嗅がせた薬はしっかり効いてやすね?

ヨルヒコ君とユウ君が言いつけを破ったのがバレちゃいけねぇんで、今は眠ってて貰わねぇと困るんでやすよ…。

事が済みゃあ、二人の手柄って事に話を纏めて、狩人になる後押しにするつもりでやすが、今の時点じゃあオイラの働きっ

て事にしときやす。

でねぇと、二人とも勝手な真似ができねぇように、連れ戻されちまいかねねぇんで…。

「軽く尋問しときやしたが、ここらに潜り込んでる連中は、どうやらまだまだ居るようでやすねぇ」

「そうですか…。そちらは何とか対処します」

オイラの報告を聞いて、思案するように眼を細めて頷いた後、お嬢さんは笑みを浮かべて見せやした。

「それよりも、長旅の後のお働きで、さぞお疲れでしょう?私達と一緒にホテルにお戻り下さい。働いて頂いたお礼を兼ねて、

美味しいお酒と料理、それに選りすぐりの酌婦をご用意致します」

「そいつぁ有り難ぇんでやすが、もうちっと用事が残ってるもんで…」

酒は確かに欲しいトコでやすが…、オイラは生唾を飲み下した後、苦笑いしながら応じやした。

「それと、おなごは結構でやす。帰ったら酒だけ、有り難く頂くとしやすかねぇ」

「あ、そうでしたね…」

お嬢さんは思い出したように頷きやす。

「では、ユウでもあてがいましょうか?…手を出されては困りますけど」

冗談めかしてクスクス笑いながら言ったお嬢さんの隣で、同行して来た女性が首を傾げやした。

「オイラぁゲイなんでやす。おなごに興味はありやせんから」

「…なるほど…」

オイラが説明すると、女性は少し驚いている風に頷きやした。

「あ、ユウといえば…」

お嬢さんは小さく呟くと、周囲を見回して、形の良い鼻を小さく鳴らしやした。

「ユウとヨルヒコ君が、貴方と会った後どこへ行ったか、ご存じですか?」

尋ねて来るお嬢さんの隣で、同行してきた女の方も頷きやす。

「ヨルヒコ達は、携帯の電源を切っているのか、圏外の所に留まっているのか、一向に捕まらないので…」

「はて?残念ながらオイラにゃ判りやせんねぇ…」

…いやぁ、実は携帯切っとくように指示したのは、他でもねぇオイラでやすけどね…。

手柄ぁ立てるために、今晩だけはお叱り覚悟でってヤツなんでやす…。

「まったくヨルヒコめ、また勝手に突っ走って…!大方、ユウ君もヨルヒコにそそのかされたのだろう…。何かあったらケイ

コさんやビャクヤ、ヤチさん達に何と詫びればいいか…!」

苛立たしげに舌打ちした女性の横で、お嬢さんは目を細めて、じっとオイラを見つめやて来やす。

「…ナナシノさん。もしも二人を見つけたら、伝えて頂いてもよろしいでしょうか?」

「合点でさぁ。大人しくホテルに帰るように、でやすか?それとも連絡するように、でやしょうか?」

「いいえ」

ショウコさんは首を横に振ると、悪戯っぽく笑いました。

「「覚悟があるなら好きにしなさい。ただし、半端は許さないわよ?やれるとこまで全力でやりなさい!」と…」

オイラは目を丸くして、次期玉藻御前となるはずの、まだ若ぇおなごを見つめやした。

…こいつぁ、お見それ致しやした…。お見通しでやしたかぁ…。

「しっかり、伝えときやすよ」

苦笑いしながら応じたオイラに、お嬢さんはニッコリ微笑みやした。

こんな姉貴分が居ちゃあ、二人もそうそうオイタはできやせんねぇ…。



「…って、お嬢さんがおっしゃってやしたぜぃ?」

事前に示し合わせてた場所で再集合した後、オイラからお嬢さんの伝言を聞いたユウ君は、困ったように眉根を寄せやした。

「さすがショウコさん…。お見通しですか…」

「でも、暗黙の了解を貰ったって解釈して良いのかな?これは…」

ヨルヒコ君が難しい顔で呟きやす。

「ま、そういう事でやしょうねぇ。お嬢さんにゃあ立場もありやすから、表だっては二人の後押しをできねぇんでやしょう。

でも、内心じゃあこうして、応援してくれてるんでさぁ。それが証拠に、こうやって見逃す事で、ちゃ〜んとチャンスをくれ

たんでやす。良い姉御に恵まれやしたねぇ、二人とも?」

オイラがニンマリ笑いながら言うと、二人は困ったような表情を浮かべて、顔を見合わせやした。

「…後で、ちゃんと謝ろうな…」

「ですね。お礼も言わなくちゃ…」

嬉しそうな、そしてくすぐったそうな表情を浮かべる二人は、さっき見事な立ち回りを演じた獣とは思えねぇほど、幼ぇ感

じがしやした。

「さぁて、憂いが消えたトコで、気ぃ取り直して準備しやしょう」

そう声をかけたオイラの前にゃあ、テーブルに山と積まれたハンバーガー。

言い忘れてやしたが、今オイラ達が居るのは、先に来たファーストフード店でやす。

オイラ達ライカンスロープは、人間と比べると、ちょいとばかし大食らいなんでさぁ。

人間の姿を維持してる状態ってぇのは、オイラ達にしてみりゃあ常に体を緊張させてるような感じなもんで、それだけでか

なりのエネルギーを消費していっちまうんでやす。

おまけに、高速修復や筋力増強、身体強化なんかの力を使えば、カロリーが一気に大量消費されちまいやす。

しっかり栄養を摂っとかねぇと、こっから先の重労働にゃあ耐えられやせんからねぇ。

「きっちり食って備えやすぜぃ?お相手しなきゃあいけねぇ連中は、まだまだ居るんでやすからね」

二人は表情を引き締めて、大きく頷きやす。

おっと…、すっかり遅れちまいやしたが、飯食ってる間に、オイラの能力について、ちぃっとばっかし説明させて頂きやすか。

え?興味ねぇ?ま、まぁまぁそう言わず!聞いておくんなせぇよぅ!

オイラの能力は、狸囃子ってぇ名前なんでさぁ。

色々と応用が利く能力なんでやすが、代表的な使い方としちゃあ、放った音の反射で、地形から何から把握するソナー能力

がありやす。

普通に集音しても結構色々と探れるもんでやすが、自ら放った音…、例えば腹鼓なんかでやすが、そいつを当てて跳ね返っ

た音を聞けば、ソイツの構造や材質、中の空洞の有無まで、ある程度は解りやす。いわゆるパッシブソナーってぇヤツでやす

が、オイラの感知精度はイルカやシャチ以上でやす。

他には、先にもちょいとお見せしたみてぇに、力を乗っけた特定の音を聞かして、相手の感覚を狂わせたりもできるんでやす。

コンクリを手で叩いたり、アスファルトを踏む靴音を使ったり、色んな方法がありやすが、最も確実なのは腹鼓でやすね。

音の強弱から、どの可聴域に合わせるかまで、細かく自在に変えられやすから。

あ。今「地味だなぁ」とか思いやしたね!?これでも結構使い道はあるんでやすよぅ!?

まぁ、派手な使い方は、機会があればお見せする事にしやして…、もっぱら使うのはこんな感じでさぁ。

他にも、オイラ特製の爆弾なんかを起爆させたり、ちょいと毛色の変わった肉体操作なんかもできやすがね。

「ところで…」

物凄ぇ勢いでガツガツとテリヤキバーガーをかっ喰らってたヨルヒコ君が、思い出したように口を開きやした。

…傍らに置いてある、ザクロココアなる謎のドリンクが入ったカップが無茶苦茶気になりやす…。

「ナナシノさんは、タマモさんとどんな関係なんだ?」

「オイラ自身は、特に繋がりはありやせん。オイラがお仕えしてる御方と御前に、ちょいとした縁があるんでさぁ」

そう答えると、モソモソとチキンバーガーを囓ってたユウ君が、興味深そうに視線を上げやした。

「お仕えしている方って…、ホテルにいらっしゃっているお医者様でしょうか?確か、パラケルススさん?」

「ま、お医者じゃあねぇんでやすが、その方がオイラのお師匠でやす。もう会ってやしたか?」

「はい。ホテル地下の医務室で、受け入れた方々の診察をしておられました」

あぁ、なるほど…。御前に頼まれた用事っての、きっとソレでやすね…。

オイラ達、最初は、御前にちょいと挨拶をして、すぐに出発する予定だったんでやすよ。

が、オイラがお仕えする御仁であるパラケルスス博士、…まぁ、オイラはお師匠って呼んでやすが…、そのお師匠が御前か

ら何か頼まれたそうで、しばらく滞在する事になったんでさぁ。

「医者のその人と、タマモさんと、どんな関係が?」

首を捻ってるヨルヒコ君に、オイラはお師匠から簡単に聞いてた事情を、かいつまんで話す事にしやした。

「ま、食いながら聞いておくんなせぇ。もっとも、オイラもそれほど詳しくありやせんが…」

むか〜しむかし、オイラとお師匠が出会うちょいと前、今から十年以上も前の話になりやす。

世界中を流離ってたお師匠は、この日本にしばらく滞在した後、探し物の為に再び海を渡ろうと、この街にやって来やした。

その時、当時もここの元締めをしてらっしゃった御前様は、ちょうど今みてぇに、どっかの組織と事を構えてらしたんでさぁ。

で、何も知らずに街に入り込んだお師匠は、運悪く、ここの狩人とその人間の組織の戦いに巻き込まれちまいやした。

そして、いくら無関係だって主張してもまったく聞く耳持たねぇ頑固者の人狼と、三日にも渡って街中を逃げ回りながら、

お一人で渡り合ったんでさぁ。

生粋の人間の身でありながら、人狼を相手にやりあえる辺り…、我が師匠ながら相当なバケモンでやす…。

結局、お師匠とソイツの逃走VS闘争が四日目に入ろうかってぇ時に、人間の組織の本部が、業を煮やして直接殴り込んで大

暴れなすった御前様自らの手で灰にされて、決着がつきやした。

で、ようやっと無関係だった事が判明したお師匠は、その人狼やここのトライブの連中から、ひたすらに詫びを入れられた

そうでやす。

ちょうどオイラに対して、ヨルヒコ君とユウ君がそうだったように。…歴史ってなぁ繰り返すもんでやすねぇ…。

「そういった訳でまぁ、お師匠はここのトライブの客分扱いになってるんでさぁ」

そう話を締めくくると、もう腹は膨れたのか、手早く食事を終えたヨルヒコ君が、居心地悪そうに頭を掻きやした。

「なんだかその人狼、他人事とは思えない失敗してるなぁ…」

「ヨルヒコ君とも少し似てるんですぜぃ?ソイツも銀色の狼なんでさぁ」

ま、今は留守にしてやすが…。

…にしてもあんにゃろう…。いつのまにやら嫁さんまで貰ってやがって…。

いや、別に羨ましくはありやせんぜぃ?オイラぁゲイでやすから…。

ふと見れば、黙ってモソモソとバーガーを咀嚼してたユウ君が、何故か困り顔になって、上目遣いでオイラを見てやす。

「…その人狼…、きっと、心の底から悪かったって思ってますよ…」

「でやしょうねぇ。いつもはツンとしてやがるくせに、お師匠と会う度にペコペコしてやすから…。って、ユウ君、あんまり

進んでやせんねぇ?」

結構長話をしたってぇのに、ユウ君の前のバーガーやらポテトやらは、あんまり減ってやせん。

「もしかして、ファーストフードは嫌いでやすか?それとも、割と小食なんで?」

尋ねたオイラに、ヨルヒコ君が肩を竦めながら、代わりに応じやす。

「バーガー系は嫌いじゃないし、小食どころか無茶苦茶食うよ?ただ、食うのがえらく遅いけど…」

モソモソとバーガーを食いつつ、ユウ君が頷きやす。

「良く噛んでゆっくり食べないと体に悪いって、義姉さんとフータイさんから言われていますし…」

「それにしたって限度があるだろ?ただでさえポリバケツみたいに入る胃袋してんのに、そうやってモソモソノロノロ食って

るもんだから、いつまでも飯食い終わらないんだよ」

「ヨルヒコさんこそ、ちゃんと噛んで食べないと消化に悪いですよ?顎も弱くなっちゃいますし」

そうケンケンと言い合う二人の様子は、オイラの目にゃあ、なんとも微笑ましく見えやした。

…やっぱり、兄弟みてぇに見えやすねぇ、この二人…。

笑みを浮かべてるオイラに、二人は視線を向けて来やした。

怪訝そうな光を湛える四つの瞳は、オイラの顔から、胸元にと向けられやす。

「ナナシノさんって、キリスト教徒なんですか?」

ユウ君が不思議そうに首を傾げながら尋ねて来やす。

無意識にペンダントを弄ってたオイラは、胸元に視線を落としながら応じやした。

「そういう訳じゃあありやせんが…。何ででやしょ?」

「いえ、十字架を下げてらっしゃるから…。ライカンスロープは宗教を持たないって聞いていたので、ちょっと気になって…」

「信じる者は救われる、ってヤツ?」

ヨルヒコ君もウンウン頷きながら、オイラの胸元の逆さ十字架を見つめてやす。

「逆に言やぁ、信じる者しか救わねぇんでやすよ。神さんってやつぁ…」

オイラは苦笑いしながら、ペンダントを摘み上げて見せやした。

「こいつぁ普通の十字架じゃあねぇんでさぁ。ほれ、逆さでやしょ?」

オイラが吊した逆十字を見つめながら、二人は頷きやす。

「このハングドクロスは、神さんにゃ頼らねぇ、縋らねぇってぇ、覚悟の証なんでさぁ…」

二人に告げるこの言葉は、オイラ自身への言葉でもありやす。

雲の上?それともどっか他の場所?何処とも知れねぇトコでふんぞり返ってる神さんになんぞ頼らねぇ。

忙しくて手が離せねぇ?それともそもそも地上になんぞ興味がねぇ?素知らぬ顔してる神さんになんぞ縋らねぇ。

地べたに生まれ落ちて、死ぬまで地べたを這いずり回るオイラ達は、地べたで物事を解決するしかねぇ。

あの時アイツの口から聞かされた言葉は、今はオイラの口を通して、若い獣達に伝えられて行きやす。

…きっと、昔っからずぅ〜っと、オイラ達みてぇな夜の住人は、人間さん達とは違う独特のしきたりや戒めを、こうやって

口伝で継いで来たんでやしょうねぇ…。

「ま、ひねくれ者の空意地でやすが、そういった考え方もあるってぇ事でさぁ」

話を締めくくったオイラを見つめて、ヨルヒコ君は丸くした目をしばたかせやした。

「どうかしやしたか?」

尋ねるオイラに、ヨルヒコ君はニ〜ッと緩んだ笑みを浮かべて、頭を掻きやした。

「いや…。ナナシノさん、かっこいいなって、思ってさ…」

「へ?」

意表を突くセリフを言われて、目と口を丸くしたオイラに、ユウ君も笑いかけやした。

「ええ、格好良いです。すっごく!」

キラキラした目で見つめられて、オイラは年甲斐もなく顔が赤くなりやした…。

かっこいいとか、滅多に言われねぇもんで…、うへへっ!そんな事言われたらぁ…、て、照れちまいやすよぅっ!



「これで…、ぜへぇっ…!トータル、何人?」

「に…、ふぅ…はぁ…、二十七人です…」

廃ビルの屋上、ひび割れたコンクリの床に座り込んだユウ君が、自分の背中に寄り掛かって来たヨルヒコ君に、疲れたよう

に応じやす。

オイラが囮になって誘い出しての掃討も、繰り返す事四回目。

今回の、九人一度に相手しての大立ち回りはさすがに堪えたらしく、二人とも息が上がってやす。

それにしても、二人ともやるもんでさぁ。戦闘そのものに関しちゃあ、オイラが手助けする必要もありやせん。

オイラも一応は獣姿に戻ってやすが、最初の一戦以来手を出さねぇで、囮と応援に徹してるんで楽なもんでやす。

…が、二人はさすがにそろそろキツいでやしょう…。

それに、こんだけやりゃあ、手柄としちゃあ十分でやす。そろそろ切り上げ時でやすね。

「それじゃあ、ここいらで切り上げにしやしょう」

「い、いや…、まだまだぁ…!」

「僕も…、まだやれます…!」

へたり込んで肩で息してるくせに、狼と熊はやる気を見せてやす。

「もう限界でやしょう?無理は禁物ですぜぃ」

オイラは二人に笑いかけてから、傍に倒れてる猪に歩み寄りやす。…一応、情報だけは貰っとかねぇといけやせんからね。

「正直に答えねぇと、こいつを鼻の穴から突っ込んで、脳みそこねくり回しやすぜぃ?」

屈み込んで、傘を眼前に突き付け、オイラは尋問を開始しやした。

オイラの脅しに屈してってぇより、二人の強さに度肝を抜かれてた猪は、怯えた顔で頷きやす。

この街に潜り込んでる他のグループについて訊くと、素直に応じてあっさりゲロってくれやした。

「…確かでやすね?」

念を押して尋ねると、猪はコクコクと頷きやした。

…こいつぁ…、ちぃっと厄介でやすね…。

「どうかしたのか?」

いつのまにかすぐ後ろに歩み寄ってたヨルヒコ君が、オイラと猪を交互に見下ろしやした。

後ろから歩いてきたユウ君も、怪訝そうに首を傾げてやす。

「いや、何でもありやせん。さぁ、お嬢さんに連絡入れやすよ!二人は行った行った!オイラもお嬢さん達と一緒にホテルに

帰りやすから。今夜はこれでおひらきでさぁ!」

気取られねぇように注意して、オイラは二人に笑顔を向けやした。

「…判りました。帰る事にします」

「だな…。ナナシノさんも随分付き合わせちゃったし…」

頷き合う二人を前に、オイラは心の中で詫びやした。

…ウソついちまって済みやせんねぇ…。こっから先は、ちょいと危険なんでさぁ…。



ヨルヒコ君とユウ君を帰して、駆け付けたお嬢さんに相麻の傭兵共を引き渡した後、オイラは一人、とあるビルの非常階段

を登りやした。

ちょいとガタが来た古めのビルを選んだのは、警備員も居ねぇ様子で、警備システムもロクなもんがついてねぇみてぇだっ

たからなんでやす。

太鼓腹を揺すりながら、息を切らして十五階分の階段を登り切り、施錠された鉄柵の扉を乗り越えて屋上に出た時にゃあ、

オイラぁすっかり汗だくになってやした。

ライカンスロープっていっても、人間の格好をしてる間は、体力的にゃあ人間さん達とさほど変わりやせん。

デブっちょのオイラにとっちゃあ、熱帯夜に延々と階段を登るのは結構な苦行なんでさぁ…。

…ちったぁ痩せるべきでやしょうか…?

蒸し暑い風が吹く、あちこちひび割れた屋上で、オイラは周囲を見回しやした。

手近な距離に建った隣のビルは、ここよりかなりノッポでやす。

目星をつけた通り、おあつらえ向きでさぁ。このビルを選んで正解でやした。

乱れた息を整えながら、オイラはまずはシャツを脱いで、たるんだ身体を風にさらしやした。

涼しいとは言い難ぇ、生あったけぇ風でやすが、それでも汗で濡れた体にゃあ心地良いもんでやす。

…いや、別に一人ストリップショーをやろうと、こんなトコまで登って来た訳じゃあありやせんぜぃ?

今度はちょいと本気で働かなきゃならねぇもんで、上は裸の方が都合が良いんでさぁ。

続いて、靴を脱いでベルトを緩めたオイラは、精神の束縛を解除しやす。

縛り付けられてた全身の細胞が、歓喜に震えながら活性化しやした。

灰褐色の体毛が伸びて全身を覆い尽くし、筋肉がその性質をより強靱なものに変えながら膨れあがりやす。

骨格が音を立てながら変形して、足の甲が伸びて、獣の脚に形を変えやす。

同時に鼻と顎も前にせり出して、人外の顔を形作りやした。

尾てい骨が伸びて、それに絡み付くように神経と筋肉も延長されれば、ぼふっと太い尻尾の出来上がりでさぁ。

目の周りから頬までに、黒い隈取りが現れた狸の顔。

短ぇけれども太くてしっかりした手足。

丸っこい体型はそのまんまながらも、内側じゃあ筋肉が発達してやす。

肩や腕、太ももなんかは、ちゃ〜んと筋肉で盛り上がってるんですぜぃ?

それと、変わったのは見てくれだけじゃあありやせん。

基礎身体能力のアップに加えて、各種感覚もバッチリ鋭敏化してるんでさぁ。

覚醒した視覚が捉える、鮮明さを増した夜景が、黒い瞳に映り込みやす。

鋭さを増した嗅覚が、雑多な匂いの混じった風の香りを嗅ぎ分けやす。

おまけに味覚も鋭敏化してやすんで、風に混じる匂いを味として捉えやす。…あ。餃子の匂い…。

触覚ももちろん精度を増して、被毛の一本一本が、大気の流れや震動を捉えやす。

極めつけは、ますます磨きがかかった聴覚の働きでさぁ。

車のエンジン音、雑踏の衣擦れや足音、風が運んでくる、何処かの部屋の室外機の駆動音…。

音源の方位特定能力の上昇に加え、可聴領域も大幅に拡大して、ビルの屋上に居ながら、オイラの耳は街が奏でる様々な音

を拾い上げ、分析して、脳に送り込んで来やす。

ちなみに、ちょいとした自慢になりやすが、オイラの変身所要時間は一秒半を少し越えるぐれぇ…。こいつぁかなり速ぇ部

類に入りやす。

まずはシャツと靴をポーチに押し込んで、前にせり出した太鼓腹を上に乗っける感じで、ベルトを締め直しやす。

少々見てくれがだらしねぇ唐傘狸、一丁上がりでさぁ。

が、この格好にゃあちゃ〜んとした理由があるんでやすぜぃ?

腹ぁ出しとかねぇと、いざってぇ時に不都合があるんでさぁ。

準備を終えたオイラは、思いっきり助走をつけて隣のビルに向かって跳躍しやした。

で、壁の溝に両手両脚の爪を引っかけて、カエルみてぇにベタっとひっつきやす。

…あ。もしかして今、かっこ悪ぃ、とか思いやしたか?

仕方ねぇんでやすよぅ!他のライカンスロープと比べると、狸ってぇのは鈍重な部類に入るんでやす!

大跳躍や高速走行が苦手なのは、別にオイラに限った事じゃあねぇんでやすよ!?

高低差が40メートル近くもある隣のビルの屋上にひとっ飛び、な〜んて真似は逆立ちしたって無理でやすっ!

…え?体型のせいだろう?…って?

い、いや…。デブっちょな事も、ライカンスロープの筋力にしてみりゃあ些細な問題でやす!こいつぁ体そのものの機能に

よる、向き不向きの問題なんでやすよぅ!

…ま、まぁその事は置いといて…。オイラは壁の溝に爪を立て、屋上目指してえっちらおっちら這い登り始めやした。

生憎と、壁に擦れる出っ腹が邪魔んなって、イモリみてぇにスルスルっと、ってぇわけにゃあいきやせんが、それでも数秒

で登り切って、手すりを越えて屋上に侵入しやす。

思ったとおり、こっちのビルは位置も高さもバッチリでさぁ。

貯水槽の上に飛び乗ったオイラは、目を閉じて、嗅覚と聴覚を研ぎ澄ましやした。

これから、さっき相麻の傭兵から聞き出した、この街に潜り込んでるはずの、とある連中を探し出しやすんでさぁ。

クンクン鼻を鳴らして風に混じる匂いを嗅ぎ取り、ピクピク耳を動かして音を拾いやす。

人間さんは両方の耳に到達する、音の時間差で音源を察知しやすよね?その察知方数は十六方って、どっかで聞いた事があ

りやす。

けど、オイラの場合は百九十二方…、角度で言うなら二度未満の精度で、音源の方向を絞り込んで特定できやす。

もちろん、距離の把握もバッチリでさぁ。

オイラが探ってるのは、ある大分類に属するライカンスロープ特有の匂いと、騒ぎの音源でさぁ。

街が奏でる雑多な音の中から、それらしい音だけを拾い上げて行きやす。

車の音、カラオケ、歌声、怒声に歓声…。オイラが探すのは、そんな人間さん達の営みの常音に紛れた、夜の住人の立てる

音でやす。

やがてオイラは目を開けて、右手側、捉えた音の方へと顔を向けやした。

…見つけやしたぜぃ…。

さぁて…、飯と宿を世話して貰ってる義理、働いて返しやしょうか!



オイラが目当ての連中を見つけたその時、やっこさん達は、狩りの最中でやした。

追い詰められ、路地裏のどん詰まりで立ち止まり、肩で息をしてるのは、すらっとした体付きの中年女性でさぁ。

ここいらは随分と寂しい界隈で、他と比べて静かでやす。

だからこそ、結構簡単に見つけ出す事ができたんでやすけどね。

激しく追いかけっこしてる足音や、ゴミ袋を蹴飛ばし、篭をひっくり返す音。

加えて、複数人の乱れた息遣いに、連中の誰かが発した、「待ちやがれ」ってぇ品のねぇ声。

刻々と位置を変えてくそれらが、オイラの耳に届いたんでさぁ。どうでやすか?良い耳してるでやしょう?

女性を追い詰めてる相麻の傭兵、その数は六。

その内、上等な黒いスーツを着込んだ三人が、オイラの目当ての連中でさぁ。

追い詰めた女性との距離をじりじりと詰める男達。

その様子を、看板を含めて全部の灯りが消えてる雑居ビルの上から見下ろしたオイラは、傘を開いて宙に跳びやした。

「観念しろ!この街の群れの者だな?大人しく質問に…」

連中の一人、比較的若ぇ、おそらく二十代前半らしい男の問いが、途切れやした。

気付いた連中が、落下中のオイラを見上げやす。

傘で風を受けて、いくらか勢いを殺しつつ30メートル以上を一気に落下したオイラは、女性に背を向け、野郎共と向き合

う格好で、アスファルトの上にドスッと降り立ちやした。

露骨に動揺してやがる三人と、さほどビビッてもねぇ黒服の三人の姿を一睨みしたオイラは、肩越しに女性を振り返りやす。

「あんたぁ、御前のお仲間さんでやすね?」

女性は度肝を抜かれたような顔で、突然現れた見知らぬ狸を見つめやす。

…おっと、この質問じゃあ答え難いかも?考えてみりゃあ、オイラが敵か味方か、まるっきり判らねぇ状況なんでやすから

ねぇ…。

「安心しておくんなせぇやし。オイラぁ御前の味方でさぁ」

眼を細めて口元を緩め、「間抜けそうに見える」ってぇ酷評を貰ってる笑顔を向けて、オイラは女性にそう告げやした。

「お行きなせぇ。ここはオイラが引き受けやす」

そう言っても、まだ女性は躊躇してやす。

その間に、今さっき声を張り上げてた若ぇ男が、オイラを睨みながら変身を始めやした。

「てめぇ、その女の仲間か!?」

人相…、ってか犬相の悪ぃ、秋田犬に何かが混じった雑種犬が、牙を剥き出しにしやす。

「訊かなきゃ解んねぇほど、オツムがあったけぇんでやすか?」

軽口を叩いてからかってやると、雑種犬は目を見開いて唸り始めやした。…やれやれ、単純なこって…。

「いい気になってんじゃねぇぞ?状況判ってねぇのか?あぁ!?」

「判ってやすよぅ?野郎6人が、べっぴんさんに袖にされたのを逆恨みして、追いかけ回してやがったんでやしょう?」

「てめぇ…!今、棺桶に片足入れたぜ!?」

「おやおや、そんなに怒って…。ひょっとして図星だったんでやすか?」

この程度の挑発でカッカ来てやす。こいつぁ傭兵ってぇより、程度の低いただのチンピラでやすね。

畳んだ傘を握った右手を後ろに、半身に身構えたオイラは、引いた右足のつま先でアスファルトをコツコツ鳴らしてリズム

を取りやす。

そして、左手でちょいちょいと手招きしながら、雑種犬に笑いかけやした。

「ごたくはもう結構でさぁ。かかって来なせぇ」

安っぽい挑発に簡単に乗った雑種は、品のねぇ吠え声を発しながら、芸もなく正面からつっかかって来やした。

…遅ぇ…。譜面に乗っけるまでもありやせんぜ…。

両腕を高々と上げ、交差させるように振り下ろそうとする雑種。

その腕が肩の高さまで上がり、振り下ろされる直前、地面すれすれから振り上げたオイラの傘が、先に雑種の顎を捉えやす。

予想してなかったんでやしょう。まさか傘ごときが、ライカンスロープを傷付けられる武器だとは…。

下から顎を突き上げられ、上顎と下顎を、ガツン、と音を立てて噛み合わせ、砕けた牙と血を吹きながら、雑種は仰け反り

やした。

続けざまに、無防備になったその鳩尾めがけ、後ろに引いてた右足を、斜め上に蹴り上げるように叩き込みやす。

短ぇながらも丈夫な足で蹴り飛ばされた雑種は、他の五人の頭上を越えて、向こう側に背から落ちやした。

まずは早々に一抜けでやす。もっとも、小細工すら必要ねぇような相手でやしたが…。

首を巡らせて振り返り、オイラは女性に笑いかけやす。

「こう見えても、腕にゃあ多少の覚えがあるんでさぁ。さ、早ぇトコお行きなせぇ!」

女性は僅かに躊躇した後、顎を引いて頷き、それから身を屈めやした。

剥き出しの細ぇ腕を、白い毛が覆いやした。

足がすらっと長くなって、顔は縦に伸び、先に毛が集まったほうきみてぇな尻尾がしなやかに揺れやす。

シマウマの姿になった女性は、オイラにペコリとお辞儀すると、

「恩に着ます…!すぐに助けを呼んで参りますので、どうかご無事で!」

そう言い残して、横手の壁に向かって跳びやした。

壁面を蹴って反対側へ、跳ね返るようにさらに反対側へ、三段跳びで鮮やかにビルの屋上へと消えた女性を見送った後、オ

イラは視線を下ろしやす。

女性の逃走中に、二人が変身を終えてやした。一方はコウモリ、もう一方はブルドッグでやす。

まずは足止め、ってぇ心づもりなんでやしょう。ブルドッグが地面を蹴りやした。

迫力満点の顔が迫って来る最中でやすが、オイラは後ろのコウモリに視線を向けやす。

あっちは飛べるんで、女性を簡単に追えやす。それが心配の種でやしたが、まずはオイラに狙いを定めたようでさぁ。

顎を引いて、両拳を顔の前で構えたブルドッグは、前傾姿勢で駆け寄りつつ、素早く左拳を繰り出しやした。

横に寝せて構えた傘でそいつを受け流すと、続けざまに右拳が飛んで来やした。

首を傾げるようにして避けたオイラの頬で、毛が数本、捻りの入った拳に巻き込まれて、宙に吹き散らされやす。

…こいつぁ、ボクシングでやすか?

素早く、続けざまに繰り出される左、左、右の拳。途切れ目のねぇ連打。

さっきの雑種とは違って、こっちはそれなりの腕をしてやす。…が、リズムは掴みやしたぜぃ。

オイラは回避に神経を割きながら、ブルドッグの攻撃を、楽譜の上に音符を並べる形で把握しやす。

こうして相手の行動の傾向、テンポ、好みを、曲に置き換えて把握、行動予測に役立てるのが、オイラの戦い方なんでさぁ。

どんな相手にも、好みのパターンやテンポの傾向ってぇもんがありやす。

さして速くもねぇオイラでやすが、この予測技術のおかげで、近接戦闘で、並のライカンスロープ相手に遅れを取る事はあ

りやせん。

戦上手になりゃあなるほどパターンが豊富で、行動傾向が読み辛くなってきちまうんでやすが、このブルドッグはまぁまぁ

読み易い方でやした。

オイラに攻撃パターンを予測されちまって、まるっきりの空振りを連発するようになったブルドッグ。

その向こうで、黒服の三人は姿を消して、一人残ったコウモリが、カッと口を開きやした。

…来やすね、こりゃあ…。

甲高ぇ、人間さんにゃあ聞こえねぇ音域の波動が、コウモリの口から放たれやした。

狭い路地に反響したそれが、オイラとブルドッグを包み込みやす。

目と鼻、耳から血が噴き出して、ガクンと膝が折れて崩れ落ちるブルドッグ。その前で、オイラも地面に倒れ込みやした。

今のは、音波による攻撃でやす。

コウモリは翼を畳んだ格好で、オイラとブルドッグに近付いて来やした。

「なかなかやるようだが、どうだ?脳を直に揺さぶられた気分は?」

耳障りな声で得意げに喚くコウモリに、オイラは俯せに突っ伏したまま応じやす。

「お見事。躊躇無くお仲間まで、巻き添えにするたぁ、見上げたゲス野郎でやすねぇ」

返答が発された事に驚いたコウモリが飛び退くより先に、ガバッと身を起こしたオイラは、右腕を伸ばしやした。

コウモリの顔、下半分をがっしり掴んだその時にゃあ、手の平に握ってたモンは、やっこさんの口の中に押し込まれてやす。

さっきの音波は、オイラにゃ効いちゃあいやせん。狸寝入りってぇやつでやす。

音は、オイラの得意分野。この程度の脆弱な振動なら、声帯から発生させた震動を全身に巡らして、振動到達と同時に無害

なレベルにまで相殺できやす。

そして、ブルドッグを目隠しにして、倒れ込む前にポーチから取り出して、体の下に隠しといたんでさぁ。

たった今コウモリの口に押し込んだ、取っておきの一品、昇散型アンチモンダスト内蔵爆弾「二寸玉」を…。

「あんたぁここで、お果てなせぇ…!」

素早くコウモリから身を離し、掴み上げた傘を開いて盾にしつつ、オイラはパチン、と、指を鳴らしやした。

傘の向こうで轟音と震動。派手に飛び散る肉片と血、頭蓋骨や脳の欠片。

畳んだ傘を一振りして、返り血を払い落とすオイラの前で、胸の真ん中から上を全部無くしたコウモリは、まだ突っ立って

やした。

やがて、グラリと揺れた首無しコウモリは、アスファルトの上に仰向けに倒れると、羽をバタタッと一度だけ動かして、そ

れっきり動かなくなりやした。

黒服の三人は…、消えてやがりやすね…。

ま、追跡はそう難しくねぇし、時間は結構稼ぎやした。

あのシマウマさんも、そう簡単にゃあ捕まりゃしねぇはずでさぁ。

追跡に移る前に、まずはこのブルドッグと雑種犬、それからコウモリの死骸の処理でやすね。

こんな有様を人間さんに見られたら、大騒ぎになっちまいやすから…。