S・M・C

世界史の退屈な授業を、右から左へ聞き流しながら、窓の外を眺めて大欠伸する。

良い天気だなぁ…。正直、勉強してるのが勿体ねーよ。

頭が禿げ上がった年寄りの世界史教諭(人間)は、ただただだらだらと何処かの国の独立戦争について語ってる。

…こんなの覚えたトコで、何の得になるってんだかねぇ…。

暇。退屈。つまんね。時計を見れば、授業が終わるまであと15分。…微妙に長ぇし…。

いい加減飽き飽きしてきた俺は、四つ前の席、最前列に座っているフワフワモコモコ、ズングリムックリしたクラスメート

に視線を向ける。

大半の生徒が話を聞かず、思い思いに内職してる中で、やっぱりあいつは真面目にノートを取ってた。

三角の耳をピクピク動かして、時折うんうん頷き、誰も聞いていない老教諭の話に真剣に聞き入りながら…。

栗色のモコモコした毛に覆われたそいつの名は、平山判太(ひらやまはんた)。

ここからじゃ後頭部しか見えねーけど、つぶらな目の回りと口周りは白っぽく、頬には涙の痕のように黒いラインが縦に入っ

てる。体の基本色は栗色で、手足は黒。モコッと太い尻尾には七本の黒いリング。

ハンタはレッサーパンダだ。レッドパンダ。またはファイアフォックスとも言ったりするらしいけど、そっちの呼び方はな

んかかっこいいから却下。ハンタのイメージに合わねーし。

実家は老舗の判子屋で、父親もじいさんも名前に「判」の字がついてるそうだ。

なお、妹はまんま判子(はんこ)という名前をつけられたらしい。…いや、不満がねーんならそれで良いけどさ…。

ぼんやりとハンタの後頭部を見つめてたら、いつの間にか時間は進み、鐘が鳴った。やっと昼休みか…。

学級委員長の起立、礼の号令がかかる。俺はおざなりに礼をしながら、教科書とノートを手早く机に突っ込んだ。

足早に机を離れ、モタモタノロノロと筆記用具を片付けてるハンタの脇を抜けながら、

「先に行ってるぜ?」

そう声をかけて教室の前の方のドアに向かった。

「あ、うんっ。お願い」

ハンタの返事は、いつものようにワンテンポ遅れて、俺の背中に返って来た。



俺は秋山直久(あきやまなおひさ)。焦げ茶色の犬獣人だ。

ピンと立った耳、キリッと巻き上がった尻尾、高い身長、弓道で鍛えた筋肉質の体、言っちゃなんだがルックスには自信が

ある。

毎日昼には激しい席取り合戦が発生する学食で、俺は今日もいち早く、二人分の席の確保に成功した。

数分後にやっと食堂入り口に現れたハンタは、小走りに(ただし遅い)俺の所にやって来ると、

「今日は何にするの?」

と、女子のように高い子供声で、いつものように聞いてきた。

「たぬきそばと…、あと、味噌おにぎりな」

「うん。判ったぁ〜。僕はラーメンにする〜」

ハンタは「たぬき、みそ、ラーメン…。たぬき、みそ、ラーメン…」と、ブツブツ呟きながら、食券を買いに行った。

…間違ってたぬきそばと味噌ラーメンとか買うなよ?有り得るんだから、お前の場合…。

背の低いハンタは、あっという間に人混みの中に飲み込まれた。

券売機前でごった返す生徒達の中で、時折手が出たり耳が見えたりしてる。必死にもがいてる姿が実にラブリー。

これが昼時の俺達の分業だ。俺は食堂に急行して席を確保する係。ハンタは食券を手に入れて飯を持ってくる係。

え?俺が並んだ方が良いんじゃねーのって?

うん。まぁたぶんその方が良いんだろうけど、人の波にもまれて四苦八苦してるハンタを眺めてるのが好きなんだよ。…そ

の必死っぷりが実に愛くるしくて…。

それに、ハンタはトロい。トロい上に押しが弱い。

 全校生徒の半数以上が一気に流れ込み、毎日戦場になる食堂で席を確保するなんてどだい無理だ。賭けても良い。

ハンタが無事に帰って来るまで、まだまだ時間が掛かりそうだから、今の内に俺達の事を少し話しとくか…。

俺達は共にそれぞれの親元を離れ、この学校の寮で生活してる。

地元が違う俺とハンタは、一昨年の入寮式で初めて顔を合わせた、高校からの友人だ。

ちなみに、三年間ずっと同じクラスだったし、寮ではルームメートでもある。

引っ込み思案なハンタは、なかなか親しい友人ができなくて、いつも俺にくっついてた。

あいつが俺と同じ弓道部に入ったのも、たぶん他の部に一人で入るのが心細かったからだろう。トロくて体力も無いハンタ

は、弓を引くのも一苦労だったし、三年間ずっと補欠だったけど…。

そして、実はハンタは…、

「お、おまたせぇ〜…」

「おー、ご苦労!」

生徒達の中でもみくちゃにされ、制服は皺だらけになり、あちこちの毛に変な癖をつけたハンタが、ラーメンとたぬきそば

と味噌おにぎりを盆に乗せ、零さねーように慎重に、ノロノロと戻ってきた。

『頂きます』

声を揃えた俺達は、同時に食事に取りかかる。

「…でな、…な訳だ」

「ん〜」

「…したらよ、…あほくせーよなー」

「んっ」

食べながら話しかける俺に、ハンタはあまり口を離さず、相づちを打つ事に専念してた。

猫舌のハンタは、ふーふー息を吹きかけ、入念に冷ましながらラーメンを食べてる。

…まぁ、熱くなくても飯を食うのまでトロいのがハンタなんだが…。

自分の食事を終え、ハンタが食い終わるまでしばらく喋った後、

『ご馳走様でした』

俺達はまた声を揃える。盆に空の器を乗せ、食器を下げて行くのは俺の係だ。

その間にノロノロと移動したハンタは、他の生徒の邪魔にならねーように、食堂を出たところの廊下の壁際で、あちこち跳

ねた毛を直しながら俺を待ってる。

「行くか」

「んっ」

俺とハンタは、残り半分の昼休みを満喫すべく、並んで歩き出す。

「午後の授業、何だっけ?」

「古文〜」

「うわっ、かったりー…」

「その後は体育〜」

「よし、頑張ろう」

性格も、見た目も正反対だけど、それでも俺達は親友だ。表向きは。

俺達は、寮の部屋の外では友人で、部屋の中では…、



巧みなドリブルでディフェンスを抜き去り、華麗なレイアップシュートを決めた俺に、クラスメートから歓声が送られる。

自慢じゃねーけどスポーツは得意だ。何だってそつなく出来る。…勉強はアレだが。

ふと隣のコートを見ると、俺の活躍に見とれてるハンタの姿。

「あ、危ね…!」

俺の声に気付き、前を向いたハンタは、目前でバウンドした味方からのパスを…、

「ひにゃぁっ!?」

 …見事に顔面で受け止めた…。

ポテッと仰向けにひっくり返ったハンタに、周りのクラスメートが駆け寄る。

頭を振って起き上がったハンタは、鼻を押さえて目尻に涙を溜めていた。

その顔を目にし、俺の背中をゾクゾクとした感触が這い昇る。

…そう、今でははっきりと自覚してる。俺はドSだ。

ハンタの必死になってる姿や、泣きそうな顔に、ゾクゾクと心を刺激される。

鼻血を出して、先生の手で鼻にティッシュを詰められたハンタは、恥ずかしそうに頭を掻いていた。



授業が終わると、俺達は一緒に寮に戻る。

二段ベッドと、隣り合った二つの勉強机。小さな冷蔵庫と、四角くて大きな座卓。それぞれの私物を入れるためのクローゼッ

ト。フローリングの床には手触りの良い絨毯、ビーズクッション(これはハンタの私物)。換気扇とエアコンも完備。

ぱっと見は手狭ながらも、過ごしてみれば落ち着く広さのここが、俺達が寝起きし、漫画を読み、勉強し、馬鹿話で盛り上

がり、夜更かししている部屋だ。

「今日のノート、写す?」

「ああ。んじゃ先に借りていーか?」

俺はハンタからノートを受け取り、代わりに読み終えた漫画雑誌を渡す。

ハンタは真面目だ。決して頭が良い訳じゃねーし、成績は中の上といったトコだが、俺と違ってちゃんとノートを取り、試

験前には必死になって勉強する。

対して不真面目な俺は、ハンタからノートを写させて貰い、時には判らない所を教えて貰う。その報酬という訳でもねーん

だけど、俺はハンタに読み終えた雑誌(週に三冊買ってる)を回してやってる。

俺がノートを写している間、ハンタは静かに雑誌を読んで、終わるのを待つ。

ノートを写し終えたら、座卓で二人の勉強会。夕方になれば寮の食堂で一緒に飯を摂る。その後それぞれ寮の風呂で汗を流

し、思い思いに休憩しながら寮監の点呼を待つ。それからはまた二人で、寝る前まで勉強会だ。

おおまかにはそれが俺達の毎日。嫌になるほど勉強づくしだが、大学受験を四ヶ月後に控えれば、いかに不真面目な俺とい

えども勉強せざるを得ねーわけで…。

え?なら真面目に授業受けてノート取れ?…ごもっとも…。



「お風呂上がったよ〜」

ベッドに寝そべって雑誌を読んでいた俺に、風呂から帰って来たハンタが声をかけてきた。

湯上がりホカホカのハンタは、薄いティーシャツにハーフパンツ。首にタオルを巻いた格好だ。

ぽっちゃりしてるハンタの胸と腹は、ティーシャツの上からでも、丸みを帯びたそのラインが判る。

「空いてそうか?」

「うん。あまり混んではないよぉ〜」

「そっか。んじゃ行こうかな…。あ、これ借りてたぜ?」

俺はニヤリと笑い、ハンタの手にポン、と雑誌を手渡した。

ハンタのヒミツの宝物の分厚い雑誌だ。…ヌード写真満載の…。

ハンタは目を丸くし、尻尾をピンと立てた。突っ立った尻尾は毛が逆立って、ボサッと太くなってる。

慌てた様子で雑誌を抱え込むと、ハンタはぺったりと耳を寝せ、恥ずかしげに俺の顔を見上げた。

「じゃ、行ってくるぜ」

「…う、うん…」

上目遣いに見つめてくるハンタの頭を、ぐしゃっと乱暴に撫でた後、俺は入れ替わりに風呂に向かった。



「秋山直久」

「う〜っす」

「平山判太」

「はい〜っ」

点呼を終えた寮監が部屋を出て行くと、俺はそっとドアに鍵をかけた。

ハンタは自分の机につき、明日の予習をしている。

その背後に静かに歩み寄り、俺はハンタの腋の下から両手を入れ、脂肪の乗った両胸を掴んだ。

「ひゃっ!?」

ビックリして声を上げたハンタの肩に顎を乗せ、俺は胸を揉みしだいてやりながら、耳元に囁いた。

「四日目だし、溜まってんじゃねーの?」

「あっ…!あ、アキヤマ君…!だ、ダメ…、勉強、しなくちゃ…」

胸を揉む俺の手を、上から押さえながら、ハンタは弱々しい声で拒絶する。

と言っても、本気の拒絶なんかじゃねーのは明らかだ。

俺に迫られてハンタが拒絶できた事なんてねー。押さえる手にも殆ど力が入ってねーし。

「休憩も、必要だろ?」

「ま、待って…、んっ…!明日は小テストが…、は、にゃ…!」

胸を揉まれて感じ始めているらしい。なおも言い訳するハンタの声にはしかし、微かな喘ぎが混じっている。

肩越しに振り返るハンタの目は、すでに潤んでいる。…もう一押しだな…。

「ひゃんっ!」

耳を甘噛みし、椅子の背もたれごと、ハンタのモコモコした柔らかい体を抱き締める。

「なー…、良いじゃん小テストぐらい…」

「で…、も…」

抱き締めた俺の腕に手を添え、涙目で、珍しく頑張るハンタに、俺の嗜虐心が刺激される。

俺は右手を下ろし、ハンタの股間をキュッと掴んだ。

「ひっ!」

硬くなっていたソコを掴まれ、ハンタが可愛い声を上げる。

柔らかいハーパンの生地越しに、ハンタのソレがピクッと動いたのがはっきりと判った。

「へへへ…!嫌よ嫌よも好きの内ってか?体は正直だなーおい?」

「ち、違っ…、んっ!」

何か言いかけたハンタは、しかしソコを握る手に少し力を込めてやると、身悶えしてヨロコんだ。

「良いのか?止めても?」

俺が意地悪くそんな質問をすると、ハンタは押し黙る。

「そっか。じゃあ仕方ないな。止めるか」

俺はハンタのソコから手を引き、抱き締めていた腕を離す。

「え?ま、待っ…」

その腕に、ハンタの手が縋り付いた。

「お?待って欲しいのか?」

しめしめ…。思わず言ってしまったハンタは、「うっ…」と呻いて俯いた。

…そう。俺達はクラスメートであり、ルームメートであり、親友であり…、そういう間柄でもあるのだ。

実は俺、ホモである。

そんな俺が、自分のルームメートも同類であった事に気付いたのは、ハンタのヒミツの宝物、あの雑誌を見つけてしまった

からだ。



「…っと!?」

コーラについてきた販売促進用のボトルキャップは、袋を開けた途端に宙へ飛び出し、クローゼットの辺りまで床を転がっ

て行った。

「あーっ!?待てダース○ーダー!」

俺はようやく引き当てたお目当てのキャップを探し、四つん這いになって床を捜索した。

「お?そこに居たか!」

横からクローゼットの裏を覗き込むと、そこには恋い焦がれた黒い甲冑姿っ!

手を突っ込んでダー○ベーダーを救助しようとした俺は、その奥、クローゼットと壁の間の狭い空間に挟まっていた雑誌に

気付く。

分厚い割に小さいその雑誌には、見覚えが無かった。

その、いかにも「わたくし、隠れております」的なオーラを漂わせてる書物の正体を、俺は直感で見破った。

「…エロ本か…」

俺に覚えがない以上、隠し主はもちろんハンタだ。

可愛い顔してやる事はやってんだなぁ…。などと、妙な感想を抱きつつ、俺はハタハタと尻尾を振りながらその雑誌を引っ

張り出した。

その雑誌は、俺が想像した通りの物だった。…半分は。

何が半分違っていたかと言うと、掲載されている写真、その被写体の性別だ。

ゴクリと喉を鳴らし、表紙を捲ると、巻頭グラビアが俺の目に飛び込んできた。

比較的小柄な太った熊獣人と、筋骨隆々たる大柄な狼獣人が、白いシーツの上で絡み合ってる…。

どうやらこれは、獣人の男同士というシチュエーションをメインに据えた雑誌らしい。

俺は興奮しながら、次のページを捲る。

モザイクを被せられた何かを、熊が咥え込んでいた。喉の奥を突かれたんだろうか?熊は涙目だった。

激しく興奮しながら、次のページを捲った。

仰向けになり、大きく股を広げた熊に、狼がのし掛かっていた。狼の手は熊の柔らかそうな乳を鷲掴みにしてる。熊の口は

大きく開けられていて、喘ぎ声が聞こえて来るような錯覚を覚えた。

数ページに渡って、熊が狼に犯されている様子をじっくりと見終えた頃には、俺の股間は痛い程に屹立していた。

さらなる刺激を求めてページを捲りかけた俺は、興奮に忘れかけていた大事な事を思い出した。

…この雑誌…、ハンタの…だよな…?

衝撃は大きかった。同室の親友が、まさか俺と同じホモだったなんて、今まで全く気付かなかったのだ。

「ただいまぁ〜」

風呂から戻ったハンタはドアを閉めて、クローゼット脇の床に座り込んでいた俺に視線を向け、手にしてる雑誌に気付くと、

「あっ…!」

小さく声を上げて、手に持っていたタオルや着替えを床に落とした。

「そ、それ…!」

目を大きく見開いているハンタに、雑誌を閉じ、軽く振って見せる。

「これ、お前の?」

俺の問いに、ハンタはオドオドノロノロと、首を縦に振った。

「心配するなよ。誰にも言わねーって。…実は、俺も同じ趣味してるんだし…」

そう言ってやろうと思った。…だが…。

「う、うぅっ…」

ハンタは絶望感すら滲ませた、この世の終わりでも来たような顔で、震える呻き声を漏らした。

「…お、お願いっ…!誰にも…、言わないでぇっ…!」

俯き加減で、上目遣いに俺を見つめ、涙を浮かべて懇願するハンタの顔を見た途端、ゾクゾクとした快感が、俺の背中を駆

け上った。

「へぇ…。お前、ホモだったんだ…?」

俺の言葉に、ハンタはビクッと身を竦ませた。そして床に跪き、潤んだ瞳で俺を見上げる。

「お願い…!この事は、誰にも…!」

「…さぁ…、どーすっかなぁー?」

気付けば俺は、ハンタの目を見つめ、意地悪い笑みを浮かべていた。

「お、お願いっ!何でも言うこと聞くから、この事だけはっ…!」

床に跪き、俺の顔を見上げながら何度も頭を下げ、懇願するハンタ…。

その顔を見下ろしながら、初めて覚える奇妙な悦びに戸惑い、しかし心を委ねる俺…。

…この時、俺は初めて気が付いた。自分がSだったという事に…。

「何でも?何でも言う事聞くのか?」

俺の問いかけに、ハンタは怯えたような表情になった。

「…う、うん…」

目に涙を一杯にため、ビクビクと頷いたハンタに、

「ふ〜ん、何でもねぇ…」

俺はニヤニヤと笑みを浮かべながら言ってやった。

「そうだなぁ…。じゃあ、脱げよ」

僅かな沈黙。意味が分かってねーらしいハンタに、俺は繰り返した。

「服脱いで、裸になれよ」

ハンタはやっと言葉の意味を理解したのか、怯えきった目で俺を見上げた。

「あ、言う事聞けねーんだ?そっかー、んじゃ残念だけど…」

「…っ!ま、待って!」

ハンタは俺の言葉を遮ると、床にペタンと座り込んだまま、慌てた様子でシャツを脱いだ。

肉付きのいい、脂肪の乗った上半身があらわになる。…が…。

「下は?」

目を細めて見下ろしている俺が促しても、ハンタはズボンに手を掛けようとしない。

「え?で、でも…、それは…」

躊躇うハンタに、俺は大げさに肩を竦めて見せた。

「そっかそっか。さすがに下も見せるのは恥かしいよなぁ?ホモだって学校中にばれるよりも…」

この脅しは効果覿面だった。ハンタは顔色を失い、大慌てで立ち上がると、ズボンを脱いだ。

「…ん…?」

前屈みになったハンタは、もうブリーフしか身につけてねー。そのブリーフの股間が…、

「何で勃起してんのお前?」

「ち、違っ…!これは…!」

俺は意地悪く笑いかけながら、ハンタのブリーフに手をかけた。

ズリッと引き降ろすと、小さな、可愛いチンポが、ハンタの股間でピョコッと跳ねた。

ハンタは仮性包茎だ。勃起してもほとんど皮を被っていて、亀頭はほんのさきっぽしか見えない。

「何?もしかして興奮してんの?お前」

「ち、違っ…!僕、僕は…」

ニヤニヤと笑いながら言うと、ハンタは股間を両手で隠した。

「隠しちゃダメだろ隠しちゃ…」

俺は手を退けさせ、床に膝を着いてハンタの股間に顔を近付ける。そして…、

「ひゃんっ!?」

チンポを掴まれたハンタは、可愛い悲鳴を上げた。

腰を引こうとしたハンタの尻に手を回し、尻尾の根本をギュッと掴んで引き止める。

俺は興奮を覚えながら、ハンタの小さなチンポを軽く握り、上下にしごいた。

「ひあっ!あ、あっ!あきっやま、く、んっ!や、やめ…てぇ…!」

やめてとは言いながらも、その抵抗はもう無いに等しい。目を硬く瞑り、必死に快感に耐えてる。いや、快感を貪ってる。

チンポの先から溢れ出た先走りが、余った皮と俺の手を湿らせ、クチュクチュとヤラシー音を立てる。

「は…にゃっ…!だ、だめっ…!ゆるし、てぇ…!そ、そんな、事っ、されたら…!」

膝がガクガクと震え、今にも崩れ落ちそうになりながら、ハンタは俺の肩に両手を置いた。

…やばい…!これすげームラムラ来る!

興奮が強くなってきた。ハンタが、俺の手でチンポをしごかれて、快感に喘いでいる。

これまで想像もしていなかったそのシチュエーションが、俺を激しい興奮の中に引きずり込んでいた。

はっきり言うと、ハンタは別に好みじゃねー。同じ部屋で寝起きしてて、こいつに欲情した事なんて一回もねーし。

なのに今は、その半泣きの顔が、その震える喘ぎ声が、その乱れた呼吸が、俺の心をがっちり掴み、強く揺さぶっていた。

これまで何とも思っていなかったのに、俺は、追い詰められたハンタに、いびつな恋をしてしまったらしい…。

「は、ハンタ…!気持ち良いか?

乱暴にチンポをしごきたてながら、俺はハンタの泣き顔を見上げた。

「んぅっ、ひっ!あっ、お、おねが…い!も、もう…!ゆるしっ…」

「気持ち良いんだろ?はっきり言えよ!」

「うぅっ!う、ん…、うんっ…」

羞恥と快感で顔を歪ませたハンタが、涙を零しながら頷く。

「で、でもっ…!だ、だめぇっ!ひっ!もうっ、で、出ちゃう、よぉっ!」

ハンタの宣言で気付いた。可愛いチンポはもうすっかりグチョグチョで、震えて脈打ってる。…もう、発射寸前なんだ…。

「良いんだぜ?出しちゃって…」

初めて投げかけられた、優しい口調の俺の言葉に、ハンタは薄く目を開けた。

「出しちゃえよ。気持ち良くイかせてやるからさ…」

ハンタの顔を見上げて笑みを見せてやり、俺は可愛いチンポをより一層激しくしごいた。

「にゃっ!あ、あっ!はっう…!あ、あきや、ま、くんっ…!僕…、ぼくぅっ!」

ハンタの全身がビクッと震えた。

濃い、白濁した体液がチンポから放たれて、素早く被せた俺の手の平にパタパタと当たった。

ハンタはピクッ、ピクッと体を震わせ、何度も射精し、やがて力尽きたように、俺の前でペタンと座り込んだ。

俺はヌチャヌチャしている、生暖かい精液塗れの手の感触を確かめながら、ハンタの顔を見つめる。

涙でグショグショになった顔で、目を閉じて快感の余韻に浸り、はぁはぁと息をついているハンタの顔が、たまらなく愛し

かった。

…俺のものにしたい…。初めて、そう思った。

「どうだった?気持ち良かったか?」

俺の問いに、ハンタは薄く目を開け、それから我に返ったように目を丸くし、怯えた表情を浮かべる。

「あ〜あ〜、こんなに出しやがって…。見ろよこれ?ぐちゃぐちゃになっちまったじゃん」

俺が精液塗れの手の平を突き出すと、ハンタは涙を目に一杯に溜めて俯き、

「ご、ごめん…なさい…」

と、蚊の鳴くような声で呟いた。

「あ、あの…。皆には…、黙ってて…」

「ああ。誰にも言わねーって」

「ほ、ほんと…!?」

ハンタは泣き顔のまま、上目遣いに俺を見た。

「何だよ?疑うならバラしちまうぞ?」

「え!?そ、そんなっ!?」

ハンタは顔を歪ませる。いや、冗談のつもりだったんだが、…真に受けるなよ…。

とは言っても、こいつにとっては死活問題だもんな。無理もねーか。

「うそだよ、う・そ!」

俺は笑いながらハンタにそう言ってやった。…そして…。

「…ついでだ。バラさねーって証拠に、俺の秘密も教えてやる」

戸惑っているハンタに、俺は自分の股間を指さして見せた。

ハンタの目が丸くなった。こいつの泣き顔に興奮し、ギンギンに勃起した、俺の股間を目にして。

この日だった、俺達が初めて、お互いのチンポに触れたのは。

どちらからともなく言い出し、付き合うようになるまでは、そう時間は掛からなかった。

もちろん、表向きはただの親友のままで…。



結局、小テストの勉強はお流れになった。

机のライトもつけっぱなしで、俺はハンタを抱えてベッドに移動した。

仰向けに寝かせたハンタの上に覆いかぶさり、右手でタップリしたハンタの乳を揉みしだきながら、しっかり舐めて湿らせ

た左手の指を、ヒミツの穴へとゆっくり入れる。

「ふにゃっ!…くっ…!」

ハンタは声をあげ、俺の背に回した手に力を込める。太い尻尾がビーンと突っ張り、布団を叩いた。

左手で俺の尻尾をしっかり掴み、歯を食い縛って息を殺すハンタ。…この、必死な顔がまたかわいい…。

強く、少し乱暴に尻を弄り、ほぐしながら、しばらくハンタの表情を楽しむ。

ハンタの股間では可愛いチンポが、早くも先走りを溢れさせ、ピクピクと反応してる。

「もうぐちゃぐちゃか?相変わらずヤラシーなーおい」

耳元で囁いてやると、ハンタは耳を伏せ、きつく目を閉じてピクンと震える。ヨロコんでるヨロコんでる。

ハンタはMだ。ホモである事がバレたあの時、俺に弄られるまで自覚は無かったらしいが、どうやら真性のMらしい。俺達は

ある意味ピッタリのカップルって事になる。

指を増やし、グリグリと肛門を押し広げられ、苦悶と快感の入り混じった表情を浮かべる愛くるしいハンタの唇を、俺は夢

中になって吸う。

舌を入れられ、震えながら口付けに応じるハンタが、愛しくて愛しくて仕方ねー…。

「入れるぜ?」

「ん…、うん…」

指を抜きながら言うと、ハンタは呻きながら頷いた。

おしめを変えられる赤ん坊のような格好で股を開いているハンタのアソコに、俺は自慢のぶっとい逸物をあてがう。

押し広げるように足を開かせながら、ゆっくり、ゆっくり挿入を開始する。

「んあうっ!」

亀頭が肛門を押し広げ、中に侵入すると、ハンタは可愛い声を上げた。

この瞬間。いつものように、俺の中に僅かに在ったハンタを気遣う気持ちが消え失せた。

ずぷっ

「いっ…!ひにゃああああああぁぁぁぁぁああっ!!!」

無理矢理、一気に侵入され、ハンタは可愛い悲鳴を上げた。

「い、痛っ!痛いよぉ!あっ!あああっ!」

ずぷぷっ…、ぎゅちっ

「ま、まっ…て!もっ…ちょ…、優し…ひああああぁぁぁっ!」

一息に根本まで押し込んでやると、ハンタは激しく首を横に振り、言葉を中断して高い声を上げる。

「ま、まって!…ひぅっ!く、くるしぃ…!」

堪えたんだろう。涙目で懇願するハンタ。

「痛いか?」

「ちょ、っと…」

涙目のハンタに、俺は意地悪く質問する。

「じゃあ止めるか?」

「…うっ…!」

ハンタの顔が泣きそうにくしゃっと歪む。へへへっ!好きなクセに!

「ほら、どうして欲しいんだ?ん?」

さらに答えを迫る俺に、ハンタは、

「…あ…の…。…ちゅー、して…?」

と、震えながら懇願した。…やべ!無茶苦茶可愛い…!

おねだりに応えて乱暴に唇を重ね、舌を入れると、ハンタはピクンと手足を突っ張らせ、震えながら舌を絡ませ返してきた。

ようやく乗って来たかな?

感度がすこぶる良いハンタは、ディープキスだけで感じているらしく、肛門の締め付けが強くなった。

もう少し甘くしてやってても良かったんだけど…。…ごめん。むり!もうこれ以上小休止とか絶対むり!

柔らかく、温かい感触に包まれた俺のチンポ…。すでに十分興奮していた事もあり、締め付けがきつくなったとあっては、

もはやお預けなんて受け入れられるような状態じゃない。

唇を離し、腰を振り始めた俺の下で、前立腺を刺激されたハンタが高い声を上げ始めた。

「おいおい…、はぁっ!あんまりっ…、声出すと…!誰か、来ちゃうぜ…!?」

「そ、んにゃぁっ!…事…!ふあっ!い、言った、って…!」

「あ。悪い。ドアの鍵閉め忘れた」

「えっ!?」

ハンタは目を大きく見開き、恐怖を湛えた目で俺の顔を見つめた。同時に驚きからか肛門が一層強く締まり、俺のチンポは

キュッといい具合に締め付けられる。

ウソだ。さっきハンタに迫る前に俺がしっかり閉めた。が、Mのコイツにはこの子供じみたウソでも効果は覿面。

「ま、待って!か、鍵…んぅっ!しめな、きゃ…!」

ハンタは泣きそうな顔で中断を訴える。

「はぁ…、やめて、欲しい?ふぅ、ほんとー…にっ?」

当然、鍵を閉めてからゆっくりやりたいのが本音だろう。だが、快楽に絡め取られたハンタの顔に、一瞬迷いが浮かんだ。

それを見逃す俺じゃねーし!

「ふぅっ!やめて欲しく、なんてっ、ねーんだろ?へへっ!…はぁっ…、とんだ、淫乱だなぁ!えぇっ?おい!」

「ひうぅっ!」

言葉責めで、ハンタの感度がさらに上がる。追い込まれれば追い込まれるほど、こいつは興奮し、敏感になる。

腰を振りながら、ハンタの柔らかい腹を掴み、グニッと強めに揉む。

「はっ!にゃっ!あ、あきやま、君…!も、もっと、やさし、くぅっ…!」

「アキヤマじゃ、ねーよ…!名前で、呼べって、言ってんだろ?」

激しく攻め立てながら、ハンタに名前で呼ぶ事を強要する。

どういう訳か、こいつは俺を名前で呼ぶのが恥かしいらしい。だから長い付き合いなのに、今でもアキヤマクンだ。

「ほら?…どうした?はぁ、俺の名前、呼べねーのか?」

「な、お…」

「あぁ?聞こえねー!」

「なお、ひさ…君…」

「君付け禁止ぃっ!」

肉棒を思いっきり奥まで付き込んでかき回してやると、ハンタはイヤイヤをするように首を左右に振った。

「なおひ…!はにゃっ!ナオヒサぁっ!」

「よーしよし、良い子だ…!」

名前で呼んでくれたハンタのチンポを握り、軽くしごきながら、俺は笑みを浮かべる。

「かわいいぜ、ハンタ…!良いか?気持ち良いか?」

「あぁっ!ナオヒサ、ナオヒサっ!僕…、僕、もうっ!はっ…!き、気持ち良過ぎて…!ナオヒサ!いぃっ…!気持ち良い、

よぉっ…!」

絶頂が近いんだろう。ハンタは喘ぐ声の隙間から、愛らしい声で俺の名を何度も呼んでくれた。

「は、ハンタ…!はぁ、はぁ!そろそろ、俺、イきそ…!」

「ナオヒサっ!僕も、僕もっ!で、ちゃう…、よぉっ!んにゃぁあああっ!」

俺とハンタの間で、精液が跳ねた。

痙攣しながら絶頂を迎え、射精したハンタの中で、殆ど間を置かずに俺の逸物が一層怒張する。

「んうぅうっ!」

「ひにゃあぁぁぁっ!」

一層膨張した俺の逸物で、ぐちゃぐちゃになった腹の中を圧迫され、ハンタはこれまでで一番高い声を上げた。

声を上げるハンタの中に存分に精液を注ぎ込む。

そしてふかふかのハンタの上にしなだれかかり、俺は果てた…。



ベッドの上で行為の余韻に浸りながら、俺は向き合って横になってるハンタのチンポ(行為の後なのですっかり縮こまって

る)を摘む。

「ひゃっ…。あんまり引っ張っちゃ、だめ…!皮が伸びちゃう…!」

「良いじゃん別に。今更気にするような軽度の包茎でもねーだろ?」

言葉で責められ、ハンタは涙目になってヨロコぶ。

「それによ…、皮、余ってた方が可愛いぜ?」

ニヤリと笑ってやると、今度は、ハンタは恥じらいながら目を伏せてヨロコんだ。

飴と鞭って言や良いのかね?鞭が七割、飴が三割、そんな感じで弄ってやると、ハンタは良い具合に可愛くなる。

「どうだ?良かったか?」

問いかける俺に、ハンタは、

「…うん…!」

上目遣いに俺を見ながら、はにかんだような笑みを浮かべて、恥かしそうに頷いた。

その顔がまた愛しくて、唇を奪った。…今度は優しく、な?

背中に回してきたハンタの手が、か細く、だが嬉しそうに震えていた。

最初は好みじゃなかったのに、今じゃこいつ以外の恋人なんて考えられねー。

俺達は、部屋の外では親友で、部屋の中では恋人の…、ちょっといびつなサドマゾカップルだ。