S・M・C 2nd
アルコールランプにかけられて、グツグツ煮立ってるビーカーの中身から視線を逸らし、窓の外を見る。
青い空に、丸っこい、薄い灰色の雲がプカプカと漂ってるのが見えた。
…良いよなぁ〜…、お前らは自由で…。
なんて事を、化学の実験に飽き飽きしてた俺は考える。まぁ、なんだ…。典型的な授業中ヒマやで少年でゴメンナサイ。
視線を動かして他の机に視線を向けると、小太りな栗色のムクムクが、真剣にビーカーを見つめてるのが目に入った。
そいつの名は、平山判太(ひらやまはんた)。俺のクラスメートでルームメートで親友。
つぶらな目と口の周りは白っぽくて、頬には泣き痕を連想させる黒いラインが入ってる。
体の基本色は鮮やかな栗色で、手足は黒。モコッと太い尻尾には七本の黒い縞模様…、いや輪っか。
ハンタはこの国じゃ非常に珍しい、レッサーパンダの獣人だ。
机の間を縫って、各班の実験の様子を見て回っていた虎獣人の化学教諭が、ハンタの後ろからビーカーを覗き込んで何か声
をかける。
でっぷり太った、虎獣人らしからぬ風貌の、黒縁の分厚い眼鏡をしているその教師は、化学の寅大(とらひろし)先生。
いつもぼーっと眠そうな顔をしてるのが特徴。ちなみに、ウチのクラスの担任でもある。
褒められたんだろうか?ハンタは尻尾を立てて嬉しそうに振り返ると、先生に笑顔を向けた。
…なんかジェラシー…。…俺もあっちの班だったら良かったのに…。
先生が机の間を縫ってえっちらおっちら、今度はこっちに歩いて来たので、俺は視線をビーカーに戻す。煮えたぎる薬品の
中で金属の破片が少しだけ色を変えていた。
…暇だ…。なんであいつはあんなに真剣にビーカーを見つめてられるんだ?イライラして来ねーのか?
その後二十分ほどビーカー内の変化を見続けてノートを取った後、やっと授業は終わった。…んで、何の役に立つ実験なん
だこれ?
俺は秋山直久(あきやまなおひさ)。犬獣人だ。
ピンと立つ耳にキリッと巻いた尻尾。高身長に筋肉質な体。フサフサした毛並みは光沢の無いくっきりした焦げ茶色。
中身はド外道だが、外見上はルックス抜群の好男子だ。…自画自賛というなかれ、事実だし。
昼食時には戦場になる学食で、いつものように席を確保していた俺に、これまたいつものように遅れてやってきた栗色のフ
ワモコズングリムックリが、トトトッと小走りに(でも遅い)駆け寄って来た。
背が低くて小太りだから、仕草の一つ一つが子供っぽく見える。…でも、これで俺より誕生日が半年早いんだよな…。
「今日はどうするのぉ?」
ハンタは子供みたいに高い、そして間延びした声で、いつものように聞いてくる。
「トンカツ定食がいい」
「ん。じゃあ僕はカレーにするぅ〜」
ハンタは「トンカツ、カレー…、トンカツ、カレー…」と、口の中でモゴモゴ呟きながら食券を買いに行った。
小柄なハンタの姿が、食券販売機前で混み合っている生徒の波に飲み込まれる。
時々人混みの中から必死に伸ばされた手や、頭の先っぽや、耳が微かに見えたりするが、その様子はさながら荒れ狂う波に
揉まれる小動物だ。
本人は必死だが、一生懸命になって人混みの中でもがいている様子は実に愛くるしい。
押しが弱くてトロいハンタはなかなか食券を買えず、戻ってくるまで少し時間がかかるが、まぁそれにはもう慣れっこだ。
俺だったら後輩連中を押し退けて券売機に辿り着くんだけど、ハンタにはそれができねー。列から押し出されねーようにす
るだけで精一杯の有様だ。
そして、約十五分後…。
「…お…、おまたせ…」
「お。ごくろ…う…?」
もみくちゃにされ、制服や毛に妙なクセをつけられたハンタは、俺が想像していたものと全く違うモノを盆に乗せて帰って
きた。
ノロノロモタモタと、慎重に盆を机に下ろしたハンタに、
「…あの…、ハンタ…?」
俺は目を丸くしながら尋ねる。
が、ハンタはその異常に気付いてねーのか、「ん?」と聞き返しつつ、俺と自分の前におしぼりを置く。
ちょ?おい?何の疑問も感じてねーのかよお前?
ハンタは言葉に詰まった俺の前にカツカレーを、そして自分の前に豚丼を置いた。
席についたハンタは、頂きますを言おうとして口を開き、そこでやっと気付いたのか、口を半分開けたまま豚丼をじっと見
つめた。
しばらく豚丼を凝視した後、ハンタは顔を上げ、「なんで僕の前に豚丼があるのぉ?」とでも言いたそうに、不思議そうな
顔で小首を傾げて俺を見た。
…いや、そんな顔されてもさ…。俺としてもあてがわれた事に度肝を抜かれてるし…。
しばしの沈黙の後、
「…ごめ…。間違っちゃった…」
ハンタは耳を伏せてしょぼんと項垂れた。
…ドジっ子のハンタは、これまでも何度かオーダーを間違えた事があったが…、今回のは強烈だな…。
恐らく、必死になって食券を確保している内に、覚えて行ったオーダーがまぜこぜになったんだろう。
しかも、頼まれた分はともかく、自分が食べたいモノまで間違う辺りが実にハンタだ。
今回に至っては、自分の希望品に近いカツカレーを(間違えたとはいえ)持ち帰っているわけだが、それを俺の前に出す辺
りがスゲェ。呆れるのを通り越して感心する。
「ほら、カレー…。ソレ俺によこせ」
俺がつっけんどんにカツカレーを押してやると、ハンタは申し訳なさそうに豚丼を両手で持って差し出した。
「頂きます」
「い、頂きます…」
俺は不機嫌な顔で、豚丼をガツガツと掻き込み始め、ハンタは少し遅れて、しょぼしょぼノロノロとカレーを食い始める。
…一応説明しておくと、実は俺、全然怒ってねーんだよな。
こうした態度を取っておく事で、後でのお楽しみに活用できるから、不機嫌そうな振りをしてるだけってわけ。
「ご馳走様でした」
さっさと食い終わった俺は、ノロノロと食べているハンタが食い終わるのを待つ。
食器を下げるのが俺の分担だからなんだけど、こうやってじっと待ってられるのはハンタにすれば相当居心地が悪いだろう。
「ご…、ご馳走様…でした…」
落ち着かなげにモリョモリョとカレーを食べ終えたハンタに、十分なプレッシャーを与えた俺は、外面はあくまでも不機嫌
そうに、内心ではほくそ笑みながら、食器を片付けに向かった。
いつものように食堂を出たところで待ってたハンタの前を、今日の俺は足を止めずに通り過ぎる。
ハンタは慌てて追いかけて来て、
「あ、あのぉ…、ごめん…」
と謝るが、もちろんこれには答えない。
極力不機嫌そうに努め、顔を見ないようにしてはいるが、ハンタのその声の調子だけで、背筋がゾクゾクする…!
そう、俺はサドだ。かなり重症の。
ハンタが見せる必死な姿や、泣きそうな顔に、強烈な快感を覚える。
そしてハンタはマゾだ。それも重度の。
いぢめられると、すぐに泣きそうな顔をして…、ってか泣いてヨロコぶ。
性格も、見た目も正反対だけど、それでも俺達は親友だ。…そう、表向きは。
俺達は、表向きはタダノオトモダチで、実際にはコイビトドウシ…。つまり、それぞれ重度のサドとマゾなだけでなく、ホ
モのカップルだ。…もちろん周りにはヒミツだが…。
うん。我ながら少数派だと思う。互いの好みが合致する俺とハンタが出会えたのは、はっきり言って奇跡だろう。
…いや、それとも世の中って案外、こう上手く収まるようにできてんのかね?
トボトボとついて来るハンタを連れて教室に戻りながら、俺は寮に帰った後の事を考え、期待に心を震わせた。
授業が終わったら真っ直ぐに帰れれば良かったんだが、残念ながら今日は俺、進路相談に当たってる。
「失礼します」
生徒指導室(個人的になんかヤな響きだ…)のドアを潜った俺は、担任のトラ先生に軽く会釈した。
虎獣人と聞けば、ほとんどの者が、まず最初に雄壮で精悍なイメージを抱くと思われる。…たぶん。
先生はそんな固定観念を、それはもう完膚無きまでに破壊してのけるビジュアルをしてるんだこれが。
何事にも例外はある。この先生はそんな言葉を文字通り体現する虎獣人だ。「え?これが虎?」と思える程に、むっちりでっ
ぷり肥えてる。
ワイシャツのボタンが飛びそうなほどにむっちりした腹。丸く出っ張った腹で閉められないのか、前をはだけて白衣を羽織っ
てる。その白衣もいつだってよれよれ。
三十五歳だが、中年太りにしても限度がある。たぶんただ単に不摂生なんだろう。…ちなみに独身。
そんな、とにかくだらしないイメージがあるトラ先生ではあるが、生徒の評判は決して悪くない。
この先生は、どんな生徒にも深い理解を示してくれる。のんびりおっとりしていて、とても優しいのだ。
…そして、俺の風変わりな好みに気付いても、ただ優しく、理解を示してくれた…。
先生の「気にしないで良い」っていう一言が、悩んでた俺を救ってくれた。つまり、俺にしてみれば恩人なのだ。
トラ先生は、ぼ〜っとした、眠そうな顔に笑みを浮かべて、俺に席を勧めた。
俺は会釈して、折り畳み式の長机を挟んだ向かいの席に腰を下ろす。
「さて、アキヤマ。今日は進路の最終確認なんだが…」
独特ののんびりした口調で話し始めた先生の言葉を、
「希望の変更はありません」
即座に遮って、俺はそう言った。
言葉を遮られたトラ先生は、気分を悪くした様子もなく苦笑いしながら頷く。
もっとも、俺だって別に先生に嫌がらせしてる訳じゃない。単に先生の口調がのろのろ〜っとトロいから、ついつい先回り
して答えてしまうだけ。
「うん。まぁ、そう言うんじゃないかなぁ、とは、思っていたけどなぁ」
「厳しいですか?」
問い掛けた俺に、先生は笑みを浮かべたまま、
「厳しいなぁ」
げ!?ちょっ!?頷いたぁぁぁあああ!?
あんぐりと口を開け、眼球が飛び出さんばかりに目を見開いた俺に、
「まぁそれは冗談で…」
先生は笑みを絶やさねーまま、手をはたはたと振って見せた。
自分の成績を自覚してるだけに、冗談に聞こえなかったし!
…ついでに言うと、この先生は言ってる事が本気か冗談か非常に判りづらい…。悪い冗談で心臓がバクバク言ってる俺に、
「私は大丈夫だと思っているよ。このままのペースで行けばなぁ」
先生はそう続けると、身を乗り出し、テーブル越しに俺の頭に手を伸ばした。
「アキヤマ、最近かなり頑張ってるようだしなぁ。うん。いい子だ、いい子だ」
肉のついた分厚い手で頭を撫でられ、俺は恥ずかしくなって視線を下に向けた。
この先生は18にもなった生徒に対しても、まるで子供にするように頭を撫でて来る…。
テーブルにタプンと乗っかった、ワイシャツの生地が張ってボタンが弾けそうなほどにでっぷりしてる腹を眺めながら、俺
は不快じゃないけど恥ずかしい気持ちをグッと堪える。
以前は太ってる体型って好きじゃなかったんだけど…、ハンタと付き合い始めてからか?むしろ好みになりつつある。
…とは言っても、ハンタ以外と付き合うつもりはねーけど…。
そんな事を考えていた俺の頭から手を離すと、
「あ、いた、いたたたたたた…!」
先生は顔を引き攣らせ、手を伸ばしたまま身悶えした。
「ど、どうしたんですか?」
驚いて尋ねると、
「いたっ…!せ、背中…、背中から脇腹にかけて攣った…!」
肥満虎は辛そうに顔を顰めながらそう言う。
…机越しに腕を伸ばしただけで?普段どんだけ動いてねーんだよこのひと…?
俺は机を回り込み、先生の背中から脇腹の筋を揉みほぐしてやった。
ハンタと違って、先生は体格自体が大きめなのもあり、指の間にムニッと余る程に乗ってる脂肪は、ボリューム満点でなか
なかに良い感触だった。
…うん。思わぬ役得…。
進路相談を終えて昇降口に向かうと、ハンタが俺を待っていた。
上目遣いでおずおずと見つめてくるハンタを、俺は昼休み以降ずっとそうしてきたように、相変わらず無言のまま無視する。
足早に、そして不機嫌そうに前を通り過ぎると、ハンタは慌ててトテトテと追いかけてくる。
ぬぅっ…、かわいいぞコンチクショウ!
…でも、ここはまだ我慢だ…。お互いに夜を楽しむ為に!
こぢんまりとした、しかし居心地の良い、過ごし慣れた寮の部屋に帰ると、ハンタは荷物を乱暴に下ろした俺に、おずおず
と話しかけて来た。
「あ、あの…。今日のノート…」
あぶね!うっかり「サンキュー!」って受け取りそうになった!
ここで甘い所を見せたら、ここまで我慢して蓄積させてきたハンタのMっ子ゲージ(いぢめられる事で溜まる、ハンタの感
度のゲージだと思ってくれぃ)が大幅に減少してしまう。飴を出すのはまだ早い…!
俺は咄嗟に不機嫌な表情を固め、ハンタがオドオドと差し出したノートを、無言のまま、少し乱暴にひったくる。
そして一言も話さないまま、ハンタが真面目にとっていたノートを写し始める。
いつもなら、ノートを写させて貰ってる間の暇つぶしに、漫画の雑誌なんかを貸してやったりしてるんだが、今はもちろん
無しだ。…済んでから貸そう。
実のところ、俺も結構辛かったりするんだこれが。
ハンタを焦らしている俺自身が、実はしっかり焦れていたりする…!
ビクビクオドオドしているハンタの態度が、顔が、声が、もぉ愛くるしくて愛くるしくて…、油断したら「なんだお前は!
けしからん!」と、乱暴に抱き締めて、ぐしゃぐしゃに撫で回して、裸にひん剥いて、唇を貪って…、
…って、はっ!?ま、まずい!
もしかして無意識にニヤニヤしてたのか?気付けば、ハンタが俺の顔を不思議そうに見つめてた。
俺が視線を向けると、ハンタは少し俯き加減で、上目遣いに俺を見ながら、へにゃっと、遠慮がちな笑みを浮かべた。縞模
様の太い尻尾が、ペタンと床を軽く打つ。
その「仲直りしよぉ?」的な、そんな控えめな微笑みに、グッと来る…!
だがまだダメだ!俺は鋼の意志(?)で笑い返したい衝動をねじ伏せ、勝手に左右に振り出しそうになる尻尾を押さえつけ、
ギロッとハンタを睨み付ける。
とたんに耳を伏せ、半泣きの怯え顔になったハンタから無理矢理視線を剥がし、俺はそのままの表情でノートを睨み付けた。
…危険だ…!ハンタの表情は、笑顔も泣き顔もとにかく危険だ…!
寮の食堂で夕飯を終え、雑誌を読んでくつろいでいると、
「あのぉ…、お風呂…」
と、ハンタがおずおずと口を開いた。
俺達が生活するこの寮には、階毎に三つの風呂がある。
一つ一つはあまり広くねー、いわゆるユニットバスってヤツで、これを各階それぞれの寮生が交代で使う。
無理って訳じゃないけど、とにかく浴槽も狭いから、普通は一人ずつ入る。んだが…、
「今日は…、一緒に、入らない…?」
ハンタはおずおずと、上目遣いで俺を見つめながら、そう言った。
ここで説明しとこう。
普通、ハンタは俺と一緒に風呂に入りたがらねー。というのも、以前、調子に乗って風呂場で弄り倒した事があるからだ。
弄られるとヨロコぶハンタも、どうやらちょっと嫌だったらしく、以来俺が声をかけても、決して誘いに乗らなくなった。
にもかかわらず、今日はなんとハンタからのお誘いだ。
おそらく、仲直りしたいが故に少々の身の危険(?)は覚悟したんだろう。もぉ実にけなげ!腐れ外道を自覚してる俺でも
グラッと来る!…それにしても効果覿面だったじゃねーのオイ!我慢した甲斐があったぜ!
それはそうと、一も二もなく頷きたいのは山々だが、ここは最後の仕上げを…!
「…いつもみたいに一人で入ってくりゃ良いじゃん」
俺はつっけんどんに、ハンタにそう応じる。
「…で、でも、そのぉ…。今日は…、アキヤマ君と、一緒に…、入り…たいの…」
つっかえつっかえ言うハンタに、「うぉお!そうかぁ!?それなら一緒に行くかコンニャロウ!」と、即座に応じたいとこ
ろではあるんだが…。
ここは我慢!ハンタも頑張ってるんだ!もうちょっとだけ耐えろ俺!お互いの頑張りの方向性が完全に違うけど!
「勝手に行けば?」
そっけなく応じる俺は、実際にはもぉ欲望と理性(どっちも不純)の間で引き裂かれそうになってる。
「あの…、んっと…、お昼の…そのぉ、お詫びに…、背中…流してあげたいなぁ…って…」
や…、やっべぇええええ!ハンタの潤んだ目に見つめられ、俺の我慢はいよいよ限界を迎えそうになってる!
「…い…嫌ならぁ…、…うん…。無理…には…。…ご、ごめんねぇ…?ヘンな事言って…」
俺が黙ってると、ハンタは俯いてポソポソと呟き始めた。
ちょ!?なんでそこで引き下がるかな!?…相変わらず押しが弱い…。
でも、これ以上ハンタから誘いを引き出すのは無理だろう。ぶっちゃけたトコ、これ以上焦らすのは俺的にも限界だ。
俺は黙って立ち上がり、なるべくそっけなく、クローゼットに歩み寄って着替えの下着とタオルを取り出す。
それを見たハンタが、つぶらな目を丸くして驚き、それから微笑んだ。「行くぞ」とか声をかけたかったが、ここは無言で
頑張る…!
ハンタは大急ぎで風呂セットを用意すると、ゆっくりと部屋を出ようとした俺の後に、トテトテくっついて来た。
さっさと服を脱いで浴室に入り、シャワーの前の椅子に腰を下ろすと、後から大急ぎで、だがモタつきながら入ってきたハ
ンタが、俺が掴もうとしたシャワーを横から取った。
無言でギロッと睨んでやると、ハンタは耳を伏せてビクッとし、おずおずと口を開く。
「ん、んと…、背中、流させて…」
やっ、やっべぇえ…!ハンタの声で、表情で、強烈なゾクゾクが背筋を這い上がる!
黙ったまま答えない俺の背中に、ハンタは温度を調節したシャワーをそっとかけた。
「あ、熱く…ない…?」
「……………」
小声での問い掛けにも、俺は無視を貫く。
ハンタの指先が背中を撫で回し、体毛の間に割って入って、優しく皮膚を刺激する。
…気持ちいい…。
時に強めに、時に優しく、絶妙な力加減でタッチして来るその指のせいで、俺の我慢は簡単に解け去ってしまいそうだった。
体を硬くし、歯を食い縛って耐える俺を、怒っているものと勘違いしたんだろう。ハンタは泣きそうな声で謝る。
「ご、ごめんね…。僕、ドジだから…、うっかり、間違っちゃって…」
黙っている俺に、ハンタは震える声で囁き続ける。
「…もぅ…、これからはしないように気を付けるから…、だから、ねぇ…、赦して…くれない…?」
「お前さ…」
俺は極力平坦な口調で口を開いた。
「え?う、うんっ!何?」
やっと口を開いたとホッとしたのか、ハンタは嬉しそうに先を促す。
「トラ先生と、仲良いよな?」
「え?」
急な話題の転換についてこれなかったのか、戸惑ったようにハンタの手が止まった。
「普通じゃ…ないかなぁ…」
俺の反応を伺うように、ハンタは恐る恐るといった感じにそう呟いた。
「だって、担任の先生だし…、優しいし…、僕みたいなホモも…、嫌わないでくれるし…」
よく言ったぁ!と、ガッツポーズを心の中で取りつつ、俺はつっけんどんに吐き捨てる。
「だよな。俺なんかと違ってやさしーもんな」
「え?そ、そんな意味で…言ったんじゃあ…」
ハンタは泣きそうな声で呟いた。解ってる!解ってるってば!
見事なまでに俺の思惑通りのセリフを口にし、クモの糸に絡め取られるように術中にはまってくハンタ。くぅ!自分のこの
方面に特化してる才能が怖くなるぜ!
そして、もう焦らすのも限界だった!臨界点に達した俺は、勢い良く立ち上がって振り返る。
屈んで俺の背中を流していたハンタは、驚いて尻餅をつき、オドオドと俺の顔を見上げた。
ハンタの手から落ちたシャワーのヘッドは天井を向き、噴水のように湯を吹き上げてる。
シャワーと、流れる湯の音だけが響く浴室で、俺は目を細めたまま、じっとハンタを見下ろす。
ハンタは股を開いて尻餅をついてる。
コロコロした小太りの体に、黒い毛に覆われた、短くて太めで丸みを帯びた手足がついてる。抱き心地の良い体だ。
脂肪で丸く膨れた乳房と、同じく脂肪で丸みを帯びた柔らかい腹。首は短く、毛と脂肪でずんぐり太い。
尻、太もも、腰回り、全部に程よく肉がついて、フワモコの体毛と合わせた手触りは最高だ。
丸見えの股間には、小さな可愛いチンポ。やっぱり興奮してたんだろう、ピコッと勃ってる。
仮性包茎のハンタのチンポは、勃起しても亀頭の先っぽが僅かに見える程度だ。そこがまた俺好みにエロい…!
股間をモロに晒している事に今更になって気付いたハンタは、慌ててペタンと脚を閉じ、両手で股間を隠した。
…可愛い…。そう思った。それと同時に無茶苦茶にしてやりてーとも思った。
そう、俺は変態だ。愛おしいと思えば思うほど、ハンタの泣き顔が見たくなる。ハンタを虐めたくなる…。
「赦して欲しいのか?」
俺の声に不穏なものを感じたのか、ハンタはピクッと体を震わせた。
耳を伏せた怯え顔で俺を見上げながらも、ハンタは小さく、おずおずと頷いた。
「なら隠すなよ」
俺の言葉にピクッと体を震わせると、ハンタはしばらく躊躇した後、そろそろと股間から手を退けた。
それでも、ピタッと閉じた太ももの間に挟み込まれて、チンポは先っぽしか見えねー。
「股、開けよ」
ハンタはかなり躊躇った後、ゆっくりと、じりじりと、脚を横にずらす。
小さく開いた太ももの間で、小さな、だが完全に勃起したチンポがヒクヒクしてた。
ずっとつれない態度を取られた事でさんざん焦らされ、ハンタは早くも感じ始めてる…。
「相変わらずおこちゃまのチンポだなぁオイ?」
俺は座り込んだままのハンタを傲然と見下ろし、鼻で笑ってやる。
「…う…!」
ハンタは股を閉じてチンポを隠す、が…、もちろんそんなのは許さねーし。
俺はハンタの顔を見下ろしながら、ねっとりとした口調で言う。
「おいおい、何勝手に閉じてんだよ?」
「だ、だって…、恥ずかしぃ…し…」
目尻に涙を溜め、潤んだ瞳で俺を見上げるハンタ。
「あんな淫乱になっちまうくせに、今更恥ずかしい?ちゃんちゃら可笑しいぜ。いいから股開けよ」
ハンタはウルウルした目で自分の股間を見下ろし、おずおずと股を開いた。ヒクヒクしてるチンポの先は、シャワーで濡れ
たのか、それとも自ら濡れたのか…。
ハンタの感度はかなり上がってる。自慢じゃないがドSな俺には表情と態度からそれが判る。言葉で責められてハンタがヨ
ロコんでるのが、手に取るように解る。
俺はシャワーを止めて拾い上げ、ハンタの顔を見下ろした。
「あっち向けよ」
何をされるか判ったんだろう。ハンタは怯えた目で俺を見上げる。
「別に嫌なら良いんだぜ?」
突き放すような口調でそう言ってやると、ハンタは慌てて四つん這いになり、モタモタと俺に尻を向け、膝立ちになった。
緊張からか、濡れた毛が逆立ち、ボサボサになってる太い尻尾。その上の辺り、腰の後ろで、ハンタの手が「休め」の状態
で組まれてる。
俺はその手を、シャワーのホースで手早く縛った。この風呂のシャワーのホースは、最近じゃ珍しいほど柔軟で、十分緊縛
に活用できる。…ま、こんな活用の仕方をすんのは俺ぐれーだろうけど…。
そう。ハンタが俺との入浴を拒むようになったのは、これのせいだ。
以前、こうやって縛って弄りまくった時、ハンタのよがり声が運悪く半開きだったドアの隙間から廊下に漏れ出た事がある。
寮監が慌てて駆け付け、浴室のドアをドンドン叩くという事態にまで追い詰められた。
ハンタが滑って転んで鼻と腰と脛と男のシンボルとその他諸々をしこたま打って声を上げていたのだ。…と説明して誤魔化
し、なんとか事無きを得た…。
その絶体絶命の状況の中で、俺のアソコは完全に萎えていたというのに、極限まで追い込まれたハンタは、泣き顔とは逆に
ビンビンになってたっけ…。
今回は大丈夫だ。半ば覚悟していたんだろう、ハンタがドアをきっちり閉めてたからな。
着替え入れはロッカータイプだから、物盗りには遭うまいという理由からなのか、ドアには鍵がねー。
男子寮だから覗きや痴漢の心配も無いだろうと考えてるんだろうが…。甘いな。ホモの事は念頭に入ってねーらしい。
…まぁ、そういった隙があるのは理解してても、俺は覗きとかしねーけどな。
別に不正だからとか、そういったゴリッパな理由からじゃねーよ?こそこそ覗いても嗜虐心が満たされねーからってだけ。
まぁ、それはともかくだ…。
俺はホースで後ろ手に縛ったハンタを向き直らせておく。
床にペタンと座り込んだハンタは、潤んだ目で立っている俺を見上げる。
俺はハンタの顔を見下ろしながら、その股間にすっと足を入れて、足の甲でキンタマを下から押し上げた。
「ひあぁっ!?」
不意打ちで思わず声を上げ、ハンタの体がビクンと跳ねる。
柔らかい、たふたふしたタマ袋の感触を足で楽しみながら、俺はハンタの顎の下に手を入れて、グイッと上を向かせる。
怯えと恥じらい、そしてその下に期待が潜んだ潤んだ瞳が、逸らしたい衝動を必死に堪え、俺の目を見つめ返してくる。
くぅっ…!いじらしい!もうちょっと、もうちょっとだけ我慢してろよハンタ…。もっと良くしてやるから!
後ろ手に縛られた無防備な格好のまま、足でキンタマを弄ばれても、顎をしっかり押さえられたハンタは顔を逸らすことが
できず、羞恥と恐怖と快楽でMっ子ゲージをグングン溜めてく。
そろそろ良いか確認する為に、俺は一度足を引いた。
「…あっ…!」
思った通り、小さく声を上げたハンタの腰は反射的に浮きかけ、俺の足を追いかけようとした。…良い具合だ!
俺はハンタの顎を放し、一歩後ろに引いた。
やっと解放され、恥じらって顔を伏せたハンタは、チラリと上目遣いに俺の方を見る。
その目が、俺の顔から筋肉の乗った胸に、そして引き締まった腹に、さらにその下、股間へと移動する。
腰に手を当ててハンタを見下ろし、仁王立ちする俺は、これ見よがしにハンタの眼前に股間を晒していた。
そこには、充血して体積を増した、俺自慢のぶっとい逸物がそそり立ってる。
…うん。ビンッビンです…!責めてる間に興奮して興奮して…、実はもう俺の方も限界ギリギリ…!
大好物を目の前に晒されたハンタはしかし、突っ立ったまま何もしようとしない俺に戸惑ってる。
普段なら俺の方から咥えさせるんだが…、今回はどうあっても、先にハンタの口を開かせたかった。
二人とも無言のまま、静かに時間が過ぎる。
やがて…、
「あ、あのぉ…」
先に耐えきれなくなったのは、ハンタの方だった。我ながらよく頑張った俺!
「…あ…の…」
だが、ハンタはそれっきり口をつぐみ、俯く。うおぉおい!もうちょっとだぞ!?頑張れハンタぁ!
むうぅぅぅっ…、仕方ない…!ここは助け船を出してやるか…。
「何だよ?はっきり言えよ?」
俺の言葉に、ハンタは肩を震わせた。
「…ははぁん?お前、もしかして…」
ハンタは顔を上げ、ニヤニヤ笑ってる俺の顔を見上げてくる。
「欲しいのか?ん?」
ピクン、と、ハンタの体と、股間のかわいいチンポが震えた。
小さく、気を付けてなければ判らない程、本当に小さく頷いたハンタに、俺は気付かない振りをする。
「どうなんだ?言わなきゃ分かんないぜ?」
本当はもちろん分かってる。ハンタが目の前のソレを求めてるって事は。
「…ほ…しぃ…」
口をモゴモゴさせて呟いたハンタに、俺の嗜虐心が燃え上がる…!
「は?聞こえねーなぁ?はっきり言えっての!」
「…ほ、欲しぃ…よぅ…!」
よしよし!良く言えた!でももう一声!
「欲しいから何だ?どうしたいんだ!?ほら言って見ろ!」
興奮で俺の声も大きくなる。ハンタは潤んだ目に懇願するような光を湛え、
「ちょ、ちょうだい…!ぼ、僕に…、アキヤマ君のおちんちん、ちょうだい…!」
と、羞恥で顔を歪ませながら言った。
「はっ!とんだ淫乱だなぁ!えぇおい!?」
…と、自分で言わせておきながら、俺はさらにハンタを言葉責めする。ハンタはハンタでビクっと身を震わせて、これをヨ
ロコぶ。
「いいぜ?ほら、しゃぶれよ?」
俺は一歩踏み出し、ハンタの目の前に反り返った逸物を突き付ける。
ハンタは「はぁっ…」と息を漏らしてソレを見つめ、それから俺の顔を上目遣いに見上げ、また俺の逸物に視線を戻す。そ
しておずおずと舌を伸ばし、裏筋を舐め上げた。
背筋を駆け上る快感…!
舌で舐め上げたのが皮切りになり、タガが外れたのか、ハンタは一心不乱に俺の逸物を舐め、口に含み、しゃぶった。
手が使えないのがもどかしそうに身じろぎしながら、懸命に奉仕するいじらしいその姿に、俺の感度がグングン上がる…!
俺は我慢できなくなって、逸物を口に含んだハンタの頭を掴み、グイッと、乱暴に突き込んだ。
「んぅっ!…ぇぅうっ…!」
喉の奥を突かれてえづいたハンタは、堪らず涙目になりながら、それでもひたむきに口での奉仕を続ける。
ハンタの口の中の粘膜が俺の肉棒に絡み付き、擦り付き、舌がかりに巻き付いて舐め上げ、俺の脳へと立て続けに快感を叩
き込んで来る。
興奮しまくった俺の逸物は、何時にも増してソッコーで臨界に到達した。
「は、はぁっ…ハンタ…!イくぞ?イくぞハンタ!?」
ハンタはチンポを咥えたまま、上目遣いに俺を見上げ、口の中で「んうぅっ…」と返事をする。
俺はハンタの頭を掴んだまま、乱暴に腰を突き出した。
喉の奥を突かれたハンタの「えうっ!?」という呻きと同時に、口の中に熱い体液をぶちまける。
「んっ!んぇうっ!えふっ!えうっふ!」
苦しくなってむせ返り、反射的に首を引こうとしたハンタの頭を、ギリッと毛を握り込んで引き留め、俺は何度も痙攣しな
がら射精し、最後の一滴までをハンタの口に注ぎ入れる。
「はっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…!」
「えふっ!えほっ!うぇ、ぇぅうっ!」
俺は荒い息を吐きながら、チンポをハンタの口から離して、前のめりになってむせ返ってるハンタを見下ろす。
射精後の気だるい感覚と、快感の余韻で、頭の奥がジンジン痺れてる。
そして、俺はハンタの前に跪き、後ろ手に縛られたままえづいているハンタの体を、ギュッと強く、少し乱暴に抱き締めた。
そのまま右手を股間に伸ばし、さきばしりですでにヌルヌルになってるハンタのアソコを掴んだ。
「ひぅ…んっ!」
可愛い声を上げて身じろぎしたハンタを抱く左腕に、俺はさらに力を込める。今日はフェラさせたし、頑張ってたし、じっ
くり可愛がってやんねーとな…!
俺は右手で睾丸を弄んでやりながら、押し倒すようにしてハンタを床に寝かせる。
仰向けになったハンタは、期待と羞恥の入り交じった熱い目で俺の顔を見る。
「今度は、お前の番な?」
「あ、あの…、アキヤマ君…?赦して、くれ………ぅんっ…!
ハンタの口を、俺は乱暴な口付けで塞ぐ。
…良いんだよ。赦すも何も、最初から怒ってねーっての…!ああいうドジな間違いも、お前の可愛いトコの内なんだから…。
でも、それを言ってやるのは全部終わった後だ。もうちょっと、弄らせてくれよな…!
口を塞いだまま、俺はハンタに覆い被さるようにして、小さな、そのくせギンギンに硬くなってるチンポをしごき立てた。
合わせた唇の隙間から、官能的なハンタの喘ぎ声が漏れる。
少し乱暴に、でも愛おしさを込めて、俺はハンタのチンポをしごきまくった。
被ってる皮をめくり、剥き出しになった亀頭を親指と人差し指で摘み、グリグリと弄る。
口を離した途端、ハンタの声から高い声が漏れ始めた。
「はっ、にゃっ…!あ、アキヤマ君…!ひんっ!は、激しっ…!」
「アキヤマじゃ…ねーだろ?ん!?」
なぶるように親指で亀頭をグリグリすると、ハンタは可愛く高い声を上げた。
「はにゃぁぁあああっ!な、ナオヒサぁっ!も、っと…!やさし、く、してぇっ…!」
散々焦らされ、責められ、ハンタのMっ子ゲージはリミットブレイク寸前だ。
感度が高まってる今、ハンタは僅かな刺激も強烈な快感として受信(?)してる。
もっと、もっともっと喘ぎ声が聞きたくて、俺は執拗にハンタを弄り倒す。
「はにゃっ!んぃっ!いにゃぁぁあっ!」
胸に口付けし、強く吸い、舌で乳首を転がすと、ハンタは首を左右に振ってヨロコぶ。
「いぅっ!んっ!んうぅぅうっ!」
乱暴に腹を掴んで揉みしだくと、ハンタは呻き声を上げて悶える。
もう、どうしようもなく、堪らなく、こいつの全部が愛おしい…!
「どうだっ…!?気持ちいいかっ…!?」
「んあぁっ!き、きもち、いぃっ…!いぃよぉっ…!」
高い声を上げてよがるハンタの唇を、俺はまた強引に吸う。
可愛いチンポをきつめに掴んで、激しくピストン運動を繰り返しながら、俺は自分の口に中に吹き込まれる吐息で、頭の芯
を痺れさせられる。
「んうぅぅぅううっ!」
合わせた唇の間から、ハンタの呻き声が漏れ、同時にハンタと俺の間で熱い精液が弾けて散った。
はぁはぁと荒い息を吐くハンタの上から体を退け、俺は栗色の毛を白い精液で汚したその姿を眺める。
へたっと脱力しきって、足を投げ出してるハンタの股間で、勃起してたチンポがしおしおと小さくなってく。
ムラムラッと、欲求が膨れあがった。…もうちょっとだけ、弄ってみるかな…!?
「あっ…」
両足を掴まれたハンタは、小さい声を上げると、トロンとした顔を俺に向けた。
俺は掴んだ両足を広げさせ、ハンタの股間に足をあてがう。つまり電気あんまの体勢だ。
俺の意図に気付いたんだろう。ハンタの顔色が変わった。…が、後ろ手に縛られて、仰向けに転がされ、両足を捕まえられ
たハンタには、もはや逃れる術はねー…!
足の裏に当たる、柔らかいチンポの感触を楽しみながら、俺はハンタにニヤリと笑いかけた。
「あ、アキヤマく…」
「アキヤマ禁止ぃぃぃいいいっ!」
「ひんにゃぁぁあああああああああ!?」
ぐりゅぐりゅぐりゅぐりゅっ!
「ひっ!ひぅっ!ひにゃっ!ひにゃはぁぁぁあああああっ!」
精液でヌルヌルになったハンタの股間は、面白いように刺激しやすかった。ポコッと丸みを帯びたハンタの腹が、振動でふ
るふると震え、喘ぎと共に激しく上下する。
イったばかりで敏感になってるせいか、ハンタの高い声はいつにも増して高く、もはや悲鳴に近い。
「ひぁっ!あっ!おっ、おね…がい!やめっ!やめてぇええっ!だめっ、だめぇええっ!」
ハンタは掴まれた足をバタつかせて逃れようとする。が、刺激で力が抜けてるせいで、押さえ込むのは簡単だ。
…それにしても、この必死な抵抗っぷり…。これまでに無いくらい激しいな…?
「ひにゃぁああっ!ご、ごめん、なさい!ごめんなさいぃっ!ゆるしっ…!で、出ちゃう!出ちゃうぅっ!」
ハンタは後ろ手に縛られたまま、身を捻って、首をブンブン振って訴え続ける。
出ちゃうって、もう一回出してんじゃん。素っ裸なんだし、今更恥かしがる事なんてねーのに。
「や、やめぇっ!ひっ!ほんっ…とうにっ!だめぇっ!も、もう、もう漏れちゃ…うぅぅううっ!」
その心地よく響く高い声に聞き惚れながら、俺は容赦なくハンタを責め立て、て…、ん?
しょわぁー…。
足の裏に、生暖かい液体がかかった。…精液…?じゃねーよな…?これって…、
「ひ、ひっ!ひぅぅうううんっ…!」
ハンタはきつく閉じた目から涙を流しながら、力無く泣き声を漏らす。
さっきまでの身悶えが嘘のように脱力したハンタの股間から、股を伝ってしょわしょわとしっこが流れてく。
…失禁したのか…!?…そういえば、射精後に敏感になってるのを刺激しまくると、漏らしたりもするって何処かで…。
「ふ…、えふっ、え、えぅうう…!う、えぅっ、うぇぇえええん…!」
仰向けに転がったままのハンタは、ぐったりしたまま泣き続けてる。
…これは…、さすがにトラウマになっちゃうか…?
少々焦りながら、俺はしっこ臭くなったハンタの背に手を入れて半分抱き起こし、腕を縛ってたホースを外す。
そして、シャワーのコックを捻り、胸から股にかけて綺麗に洗い流してやった。
恥かしいんだろう。無理もねーけど…。
ハンタはいやに大人しく、されるがままで、両手で目を覆いながら、めそめそと泣き続けてる。
…う〜ん…。また風呂場にトラウマ作ったなぁ…。こりゃ二度と一緒には入ってくれねーだろ…。
精液やらしっこやらを洗い流し、綺麗になった俺達は、一緒にバスタブに浸かった。
狭苦しいバスタブの中で、俺はハンタを後ろから抱えてる。ぴったりと密着してるから、息も心音もみんな伝わって来る。
項垂れたまま元気のねーハンタの頭に、俺は顎を乗っけてグリグリした。
「恥かしがる事ねーって。刺激し過ぎるとああいう事になるっての、知ってたし…。忘れてたけど…」
ハンタは項垂れたまま、こくんと頷く。
「そもそもさぁ、合体までしてんのに、今更お漏らしぐらい恥かしくもなんともねーだろ?」
笑いながら言ってやったら、ハンタは「う…」と呻いて、恥かしそうに身じろぎした。
俺はそんなハンタをぎゅっと抱き締め、耳を甘く噛む。
みじろぎしたハンタに、俺は耳元で囁いてやった。
「ほんとはさ、昼飯の事、怒ってなんかねーんだ」
「本当!?」
びっくりしたように勢い良く振り返ったハンタに、俺は苦笑いする。
「迫真の演技だったろ?お前を弄る格好の材料だと思ってなぁ、なぶってみてたんだよ」
「…もぅ!」
ハンタは怒ったように頬を膨らませた。その顔がまたかわいーのなんのって…。
「そもそも、昼飯のメニュー間違えたぐれーでそんなに怒んねーっての。さすがにそこまでは心が狭くはねーぜ?」
少し乱暴に頭を撫でてやったら、ハンタはくすぐったそうに耳をプルプルさせた。
「それとも、やさしぃ〜く愛撫して貰いたいって?」
俺の意地悪な質問に、ハンタはしばらく沈黙した後…、
「…優しく…、苛め…て…貰い…たい…かもぉ…」
と、恥かしそうにポソポソ呟いた。くぅっ!このMっ子がっ!堪んねーなぁもう!
この場でもう一回弄ってやろうか?と、俺がそんな事をムラムラっと考えた時だった。
どんどんどん!
「おぉーい!何かあったのか!?」
「中でぶったおれてんじゃないだろうな…!?」
廊下側から更衣室のドアを叩く激しいノックの音と、寮監達の焦り声が聞こえたのは…!
「な、何でもねーよ!今上がるから!」
怯えたようにビクリとしたハンタを抱えたまま、俺は大慌てで返事をした。
…どうやら、入浴が長過ぎて何かあったのかと思われたらしい…。
「え!?」
タオルで頭をグシグシ擦っていた、湯上がりホコホコのハンタは、手を止めてびっくりしたように俺を見た。
どうやら、今俺が言った言葉が信じられねー様子だ。
ウーロン茶の缶を弄びながら、俺はハンタから目を逸らす。
「だから…。俺も…、お前と同じ大学行くって…、そー言ってんの…」
ハンタは完全に硬直し、目をまん丸にして俺を見つめてる。
最終確認でもトラ先生に言った事だし、隠しとくのもそろそろ限界だったし、無茶苦茶照れ臭かったけど…、もう言っとく
べきだと思ったんだ。
俺は、ハンタと一緒に居たい。
こいつには口が裂けても言えねーけど、俺はもうハンタに心底惚れちまってる。
地元も別だし、違う進路を選んだら、高校を出た後は会える機会も無くなる。
だから、こいつが行きたいって言ってた大学…、俺にはギリギリのトコだけど、一緒に目指す事にしたんだ。
「…めーわくかよ?」
つっけんどんにそう言った俺に、
「う、ううんっ!」
ハンタは首を横に振ると、タオルを放り出し、勢い良く飛びついて来た。
「お、おい!?何だよ急に!?」
ハンタが見せた、こいつにしては意外過ぎるリアクション。俺は戸惑いながらも、胸に飛び込んできた柔らかい体を抱き締
める。
俺の背に腕を回し、しっかりと抱きついたハンタは、恥かしそうな笑みを浮かべながら、俺の顔を見上げた。
「嬉しい…、アキヤマ君…!」
「…そ、そうか…」
俺は照れ笑いを返し、ハンタのおでこにキスをした。
「…それじゃあ僕、明日、先生に進路の変更の話をしなくちゃ」
「そうだなぁ。早い方が良…」
…ん?進路の変更?…言ってる事が何かおかしくねー…?
首を傾げた俺に、ハンタは恥かしそうな笑みを浮かべたまま口を開いた。
「僕、アキヤマ君と一緒の学校に行きたいって…思ってたから…、前に何回か聞いてた大学に、希望を変えちゃっててぇ…。
ほら、あそこぉ…」
ハンタが口にした学校は、あまり勉強しねーでも楽々入れそうだと、俺がチョイスしてたトコだった。
…つまり、実はハンタも、俺と同じトコに行きてーと思っててくれた…訳…で…、ん?
「ちょ!?だったら俺、無理して志望校のランク上げる事なかったんじゃねーの!?」
「え?う、うん…?そ…お…かもぉ…?」
ハンタは目をぱちぱちさせながら首を傾げた。
「お前は変えるな、俺が先生に言って変えるから」
「え?えぇ?でもぉ、せっかく志望を上げたのにぃ…、トラ先生、喜んでたんじゃ…?」
…う!?…そ、それもそうか?ランク上げるならともかく、きっぱり言い切った今になって下げるのは、イマイチあれか…?
「…仕方ねー…。予定どーりに頑張ってみるか…」
投げやりに呟いた俺に、ハンタは太い尻尾を左右にブンブン振り、嬉しそうに頷く。
「勉強、教えてくれよな?」
「うん!僕でよければぁ!」
笑みを交わした俺達は、そっと口付けをした。
そして、俺は体を少し離し、ハンタの背を押してベッドに誘う。
恥かしそうに上目遣いで俺を見た後、ハンタは小さく頷いた。
俺達は、ちょっといびつなサドマゾカップルだ。
…が、まぁ…、今日はずいぶん弄り回した事だし、たまには甘〜く愛し合ってみるのも良いか…。な?ハンタ…。
追伸。甘く愛し合ってみたら、なんか物足んなかった。…お互いに…。
…マジで真性なのな、俺達…。