第十三話 「よしよし」

キイチが用意してくれた冷や奴は、美味かった。

慣れてねぇのに包丁握って、きちんとネギも千切りにして添えてくれた絹ごし豆腐は、ユリカに付き合って貰って選んで来

たらしい。

…後でアイツにも礼言っとかねぇとな…。

好物をあてがって貰ったって事もそうだけど、何よりキイチの行為が嬉しい。

気ぃ遣わせて済まねぇって思うけど、俺の事想ってくれてるのが嬉しい。

バレねぇように振舞ってたつもりなんだけどよ…、敵わねぇなぁキイチにゃ…。

キイチの話じゃ、出かけた先でばったり会った主将は、すっかりいつも通りだったらしい。

飯時にもまともに顔が見れねぇ意気地無しの俺は、主将がどんな様子か遠くからコソコソ窺うばっかだった…。

けど、キイチの話を聞いたら、少しばかり気が楽になった。

大会の帰りに見た、主将のあの笑い顔…。

後から思い出して、空元気だったんじゃねぇかって疑ってかかってたんだが…、本当に大丈夫なんだな…。

なら、俺もウジウジしてねぇで、気分切り替えねぇと!

こっから先は俺のわがままになっちまうけど、主将と一緒に少しでも長く柔道やる為にも、一試合でも多く勝ち抜かなきゃ

なんねぇんだからな!

上手い事全国まで上がれりゃ、夏休みの半ばまで稽古に付き合って貰える!

まぁ…、全国が首都じゃなくなっちまったのはちょっと残念だけどよ…。

キイチはなんでか、話の途中で名前が出た中学時代の柔道部の先輩…、オジマ先輩の事を聞きたがった。

イイノと俺との話で名前は何回か聞いてたけど、本人と話した事はねぇ。で、ちょっと気になるんだとよ。

会話した事はねぇけど、東護に虎獣人なんて一人だけだったから、何となく印象はあるらしい。

「先輩とはよ、階級も違うから公式の試合でぶつかった事はねぇんだ。けど、二回だけ本気で勝負して貰った事がある。まぁ、

内一回は俺が初心者だった頃、ハンデつきでだったけどな。でもって戦績は一勝一敗。俺が実際に手合わせした相手の中で、

キダ先生を別にすりゃあ一番上手ぇな」

「アル君よりも?」

そう尋ねて来たキイチに、俺は苦笑いを返す。

「言っちゃ何だが、アルは柔道そのものはあんまし上手い方じゃねぇんだ。馬力とスピードがズバ抜けてるけどよ、たぶん…」

俺は笑みを消して、遠くに住んでるダチの顔を思い浮かべる。

アイツが住んでる首都は、獣人の数自体少なくて、差別もひでぇって聞いてる。

電話じゃ曖昧に誤魔化してたが、高校に入っても友達はできてねぇらしい…。

中学ん時もそんなんで、たぶん稽古相手に恵まれてなかったから、たぶん…。

俺が全部言わなくても察したのか、キイチは耳を倒して項垂れた。

「全国大会の会場が首都だったら…。顔を見られたかもね…」

「だな…。ま、仕方ねぇさ」

そんな事をしばらく話し込んだ後、キイチは腕時計を覗き込んだ。

「そろそろお風呂どうかな?」

促されて時計を見りゃ、もうじき十時になる。時間も時間だな。

手早く風呂の支度をした俺達が廊下に出ると、隣の部屋のドアが丁度開いて、眼鏡をかけた狐が顔を出した。

手にマイブラシを握って、タオルを抱えたウッチーは、俺達に気付くと眉を上げるた。

「今から風呂かい?」

「おう。そっちもか?」

「ああ。ボクだけな」

肩を竦めたウッチーに、キイチが首を傾げながら訊ねる。

「オシタリ君は一緒じゃないの?」

「ボクらはキミらと違って毎回一緒に入ってる訳じゃないぞ?今日は勉強も無しだから別行動さ」

応じたウッチーは、たった今後ろ手に閉めたばかりのドアを振り返った。

「今日はホームビデオの紹介番組で、「我が家のペット特集」をやっているそうだ。早々と風呂を済ませて来たかと思えば、

画面前から動かなくなったよ。今も鼻の下を伸ばして画面に齧り付いている。アメショの子供に首っ丈だ」

「ホント猫好きなのなぁ、オシタリ…」

「キミもそうだろう?」

呟いた俺に、ウッチーがニヤリと笑いかけて来た。

…ま、まぁ…。否定はしねぇけどよ…。

「ま、ブーちゃんと違ってオシタリの場合は完全なネコマニアだが…」

ウッチーは言葉を切ると、「ん?」と首を傾げた。

「…そうか…。アイツが先生に対してやけに素直な理由が解った…」

「先生って、トラ先生?」

尋ねたキイチに頷くと、ウッチーはポツリと言った。

「虎は猫科だ」

「いや…、保証人になって貰った恩義があるからじゃねぇのか…?」

「そっちは従順な理由の19パーセントにも満たないだろうな」

…何だ?この確信めいた言い方と嫌に具体的な数字…?

「それはそうと、お邪魔なようなら入浴は後にするけれど?」

俺達の顔を交互に、窺うように見てきたウッチーに、キイチは首を横に振って応じた。

「変な気の利かせかたしないでよ。一緒に行こう?」

頷いたウッチーと一緒に風呂場に向かいながら、俺は少しばかり口元を緩ませつつ、ウッチーと並んで前を歩くキイチをち

らっと見遣った。

傷痕が見えなくなってる事で自信をつけたキイチは、最近じゃ他の連中と入浴がかぶっても気にしねぇようになった。

ずっとコソコソ入るのも難しいとこだったし、こりゃあ嬉しい事だ。

…むしろ最近じゃあ、またぐら隠してる俺より堂々としてるしな…。



「食事制限一部解除?」

胸まで湯に浸かりながら素っ頓狂な声を上げたウッチーに、鼻下まで湯船にスッポリしてるキイチが「ゴボボッ」と返事…、

…返事…かな…?…うん、たぶん返事をした。

「だいぶ体も絞れて来たからな、お許しが出たって訳だ!」

風呂の縁に腰掛けながらニンマリ笑って応じた俺の体を、伊達眼鏡を外した狐がジロジロと眺め回す。

「…絞れた?どの辺りが?夏毛に生え替わっただけじゃないのか?」

疑わしげに目を細めるウッチー。

「見た目はそう変わってねぇけどよ、ちゃんと脂肪が落ちて筋肉が増えてんだぜ?」

「ふ〜ん。…嘘くさ…」

…この狐っ!!!

「何なら触ってみろ!ちゃ〜んと感触が変わったってキイチも言うんだからよ!」

腰を上げた俺は、ウッチーの前にザブザブ歩いてって腹を突き出す。

股間も大公開中だが、何回もモロに見られたもんな、もうウッチーやオシタリ相手に恥ずかしがる事もねぇ。

「僕はノーマルだぞ?出っ腹はともかくセガレまで突き出すな」

顔を顰めたウッチーは、湯の中から手を出して俺の腹をペチンと張る。で、叩かれた俺の腹はタプっと揺れる。

「軽く叩いただけで波打ってるじゃないか…」

「う、内側だよ内側!皮下脂肪じゃなくて中の方がかなり変わってんだよ!叩くんじゃなくて押してみろって!」

「押した所で判る訳ないだろう?元々そんなディープコンタクトなんてしていないんだから、感触の変化なんてイヌイでもな

いと判らないじゃないか。うっわボヨボヨ…」

ウッチーは俺の腹を左右から手の平でムニッと押し込んで、縦に揺らしながら顔を顰める。

「臍の下で段がついてるって辺り、呆れる程に脂肪満載じゃないか…。トラ先生もたぶんこんな感じだろうな」

「おう、だったぜ。けどぶら下がってるモンは太くて立派だったぞ?」

「そうなのか?ブーちゃんみたいな感じでも不思議は無いと思ってたんだが…。イヌイとどっちがデカい?」

「そりゃまぁキイチの方が。コレは別格だからなぁ」

先生の名誉のために、皮被ってた事は伏せとこう…。

俺達のやり取りを眺めながら、顔の半分を湯に沈めてブクブクやってたキイチは、チャポッと口を出しつつ微苦笑した。

「でも、他にひとが居ないっていっても、何て会話してるんだろうね?」

「男子寮ならではの話題と言えるな。…にしてもちょっと下品か…」

「ぬははっ!こういう事話せんのって、仲間内だけだよなぁ」

「違いない」

俺に頷いて同意したウッチーを、キイチは少し意外そうな顔をして見遣る。

「意外…。ウツノミヤ君、この手の話なんかは嫌うかと思ってた…」

「好きでも嫌いでもないさ。付き合いとしては参加するけれど」

肩を竦めたウッチーは、身を起こして風呂の縁を跨ぐ。

「ボクはそろそろ上がるよ。邪魔者は早めに退散ってね。…遠慮無くごゆっくり」

「ぬははっ。何もしねぇって!」

ニヤリと笑ったウッチーに、俺は苦笑いしながら言ってやった。

…ほんとは、これからこっそり中の方洗うけど…。この後に備えて…。



風呂上がりの水分補給。痩せられるお茶をガブ飲みして一息ついた俺は、さっそく寝室のエアコンを動かして来た。

ここ数日続いてるが、今夜も蒸すからなぁ…。せっかく風呂でスッキリして来たのに、また汗かいちまう。

かといって、風呂前の時間帯に「ああいう事」なんかはできねぇ。早ぇ時間だと誰が来るか判らねぇしよ…。

キイチがパソコンと携帯のメールチェックをしてる内に、忘れずに鍵をかけようとした俺は、丁度ドアの前に立ったとこで

ノックの音を聞いた。

…ほ〜れな。来るんだよこういう日って…。

ノブを掴んで開けてやると、さっき風呂で一緒になったばかりのウッチーが「や」と片手を挙げた。

「あれ?何か話し忘れたか?」

「その通りだよ。ブーちゃんのダイエット頓挫の話題と下品な話題に埋もれて、大事な事を話し忘れたな。遺憾な事に」

「頓挫してねぇ!効果出たからちょっと解禁なんだっての!」

俺は顔を顰めながらウッチーを部屋に入れると、キイチと一緒に座卓についた。

「林間学校の参加希望書、二人ともまだ出して無いだろう?」

開口一番ウッチーが言い、俺とキイチは顔を見合わせて、「あ!」と声を上げた。

「わ、悪ぃ!俺らも勿論参加するつもりだった!」

「ゴメン、忙しくて忘れちゃってた…」

慌てて謝る俺とキイチ。

ウチの学校じゃ日帰りの林間学校…、まぁ、遠足の代わりみてぇなもんがある。

一学期最大最後のイベントってヤツだ。…ま、その直前に最大最後の負のイベント、期末テストがあんだけどな…。

学年毎に別々のキャンプ場とか違う場所に行くんだが、中身の方は各出先の清掃奉仕活動だかなんだかと、昼飯の自炊。

あとはウォークラリーとか沢遊び、場所によっては海水浴とか、そんな感じの自由行動があるらしい。

一年は確か…、山ん中の県立公園に行くんだったか?

二年は一年とは別の山で、沢があるとこ。つまり沢遊び付き。

三年は海の近くのオートキャンプ場で、海水浴付きらしい。…俺そっちのが良かったなぁ…。

実は俺、キイチの水着姿を見た事がねぇ。…小せぇ頃を除けばだけど…。だから一緒にプールとか海とか行きてぇ…。

え?全裸見てんのに何を今更水着姿って?

…いや、なんかこう、水着姿も見てぇなぁとか…。上手く言えねぇけど、判んねぇかなぁこの気持ち?

まぁとにかくだ。俺もキイチも勿論参加するつもりだったんだが、大会やらその直前の練習試合ラッシュで、参加希望書を

提出しなくちゃなんねぇ事、すっかり忘れちまってた…。

…キイチが忘れんだから、俺が忘れても無理ねぇだろ?

「取り纏めまでは学級委員の仕事じゃ無いんだが、今日トラ先生が昼休みにぽろっとこぼしてね。ウチのクラスでまだ提出し

ていないのは、キミらだけだそうだ。期限は明日までだぞ?」

「判った。忘れねぇで出しとく」

「教えてくれてありがとう、ウツノミヤ君。すっかり忘れちゃってた…」

キイチが頭を掻くと、ウッチーは眼を細めて小さく笑った。

「ブーちゃん一人ならともかく、しっかり者のイヌイまでとは珍しいと思ってさ。ま、不慣れなマネージャーの仕事で忙しかっ

ただろうし、無理もないさ」

…お?いつもドライなウッチーにしては結構優しい言葉…。ってか、キイチには皆優しいよな、大概…。

「希望書とは言っても、何もなければ基本全員参加なんだが、返事も無いのにエントリーする訳にも行かないらしいからさ。

それで…」

ウッチーは一度言葉を切ると、俺達の顔を交互に見た。

「班編制の事だが、良ければ一緒に組まないか?ボクとオシタリとキミらの四人で」

「そりゃあ構わねぇけど?」

俺が返事をしてキイチも頷くと、ウッチーは壁を…、つまり自室の方を向いた。

「問題を起こすようなヤツらと一緒に組むのはごめんだ。キミらならその点心配要らないし、オシタリのヤツはああだが、何

だかんだ文句を言っても間違った事はしない。このメンバーなら問題無く活動できる」

「確かに、僕もウツノミヤ君やオシタリ君と一緒なら気楽だよ」

キイチが賛成して頷くと、ウッチーは俺の方を見て意味ありげに笑う。…何か企んでる顔じゃねぇのかこれ…?

「こういう時、ブーちゃんが一緒の斑だと本当に心強いな。自炊の失敗についても心配要らないし、働き者だから清掃活動で

も活躍してくれる」

あ〜、そういう事な…。一体何をやらされんのかと警戒したけど、そのぐれぇなら何でもねぇや!

「よぉし、ドーンと任しとけ!何処の班より美味ぇ飯作ってやる!そのかわり、清掃活動は皆きっちりな?たっぷり働いた後

の方が、飯は美味ぇからよ!」

「ははは!無駄に頼もしいな。ま、ぼくもきちんと、過不足無く働くさ」

ウッチーは俺に笑い返し、キイチは身を乗り出して目をキラキラさせた。

「自炊、僕もいっぱい手伝うね?」

…いや、気持ちは嬉しいけどよ…。念のために手伝いは片付けだけにしとかねぇか?

…出先での事だし、オシタリとウッチーも食うんだし…、何かあったらまじぃからよ…。



用件が済んだウッチーが帰った後、俺はいそいそと、今度こそドアに鍵をかけた。

…よしオーケー。かかってる。間違いなくかかってる。これでこの間みてぇに突然、バターン!なんて開く事はねぇ…。

それに時間も時間だし、もう誰も来ねぇだろ。

包茎改善の日課、毎日欠かさねぇローション塗りは、今日はお楽しみと同時進行だ!

キイチの話しじゃあ、あのローションはノリみてぇな匂いと味がするらしいけど、味も匂いもあんまり強くねぇから、塗っ

た後に舐めても平気らしい。

湯につけて少し温めたローションの容器を手に、キッチンを出た俺は、

「やーっ!何か寒ぅーいっ!」

寝室から響いたキイチの声を耳にする。

…あ、いけね…。ウッチーが来る前に入れたエアコン、かけっぱなしだった…。

寝室に入ると、ひんやり冷えた空気が俺の体を包み込んだ。俺には気持ちいいぐれぇだけど…。

「俺はこのぐれぇのが過ごし易いんだけどよ…。寒ぃかな?」

キイチは両腕で自分の体を抱えるようにして、背中を丸めながら頷いた。

「だって、サツキ君は脂肪と筋肉の鎧を着込んでるもん…!」

…その鎧を貫いて、俺の心にサクっと刺さるお言葉…。

ま、まぁ…。寒ぃのが大の苦手だもんなぁキイチは…。

俺はドアを閉めてエアコンを止め、小柄なキイチの体に両腕を回して抱き上げた。

そして、ベッドに向かいながら抱き締めて、頬ずりしてやる。

ちょっと照れ臭そうに小さく笑ったキイチは、俺の首に腕を回して、キュッと抱き締め返して来た。

キイチを抱っこしたままベッドにどすんと腰を下ろし、ローションの容器を枕元に放り出した俺は、タンクトップの裾に手

を掛けた。

「あ。手伝ってあげる。バンザイして」

キイチは笑みを浮かべながらそう言うと、両手で俺のタンクトップを掴んだ。

ちょっと照れくせぇけど、言われるままに両腕を上げた俺の体から、キイチはずりずりっと、タンクトップを引っ張り上げ

て脱がしてくれた。

顔の前を一回タンクトップが覆って、それが過ぎるとキイチの顔がまた見える。

これやる度に何となく、外が見えるガラス張りのエレベーターを連想しちまう。

尻を浮かせてブリーフもずりずり脱がされて素っ裸になったら、今度はいよいよキイチの番だ。

細い体からダブダブの長袖シャツをペロンと脱がせて、ちょっと照れてモジモジしてるキイチのトランクスに手を掛ける。

立って俺の肩に手を乗せたキイチは、恥じらいながらも片足ずつ上げて、割と素直にトランクスを脱がされる。

丸出しになったのは、羨ましいドデカサイズのチンポ。

ちなみに、皮はもう全部剥けるようになってる。これも羨ましい。

すっぽんぽんになったその状態で、俺は中腰になってるキイチを抱き寄せ、その胸に頬を擦りつける。

薄い胸とくびれた腹を覆う、きめ細かくてポヤポヤな柔らけぇ毛…。

甘える俺の頭を、キイチは両手で包むように抱き締めて、首の後ろを撫でてくれた。

あ〜…。幸せ…!

しばらくの間、甘えるままにさせてくれたキイチは、そっと体を離してペタンと座り込んだ。

そして、枕元に転がってたローションの容器を摘んで、俺にウィンクする。

「まずは日課から。ね?」

「お、おう…」

照れながら頷いた俺は、いつもそうするように後ろに両手をついて、股を広げて股間を大公開。

…キイチ相手じゃなかったらぜってぇできねぇ恥ずかしい格好だ…。

おまけに条件反射なのか、俺の股間じゃ現在改善活動鋭意実施中の小振りな包茎チンポが、ピコンと勃起して自己主張を始

めてた。

鉄砲の弾みてぇな小せぇ容器の、ドーム型になってるキャップに親指をかけたキイチは、そのまま親指でグリッと少し横に

押した後、しゅぱっと一気に回す。

クルクル回ったキャップが抜けて、ポロッとシーツの上に落ちた。

…こいつも毎回だが、開け方が無駄にかっけぇ…。あの栄養ドリンクのCMを思い出すぜ…。

この間こっそり真似してみたら、容器のキャップが飛ぶどころか、首が折れてポロっともげちまった。…勿体ねぇ事した…。

ちょっぴり粘りけがあるトロッとしたローションを手の平に垂らしたキイチは、その手で俺のチンポを掴んだ。

ヌルッと濡れてるキイチの手が、優しく動きながら俺のチンポにローションを塗ってく。

…くすぐってぇ…。気持ち良い…。

全国にごまんと居るはずの、俺と同じ悩みを抱えてる皆さんは、たぶんこっそり自分でやってるんだろうが…、たまたまこ

ういう恵まれた状況に居る幸せモンの俺は、こうして恋人に塗って貰えてる。

自分でやる事もあるけど、キイチがやってくれる事の方が圧倒的に多い。

そりゃあ勿論恥ずかしいけどよ…、やって貰うのって気持ちいいし…。何よりこう、大事にして貰ってる感があって嬉しかっ

たりすんだよ…。

丁寧にローションを塗ってるキイチは、途中で皮の先を引っ張って、中にローションを注ぐ。

たっぷりかけられて溢れたローションが伝い落ちるが、キイチはそれをニコニコしながら、俺のチンポに擦り込むようにし

て塗ってく。

チンポから垂れたローションが、股の間を通って尻の割れ目に伝い落ちてく…。

まんべんなく塗り終えたら、ここからしばらくは我慢タイムだ…。

俺は深呼吸した後、軽く歯を噛み締めて口をつぐんだ。

キイチは俺の顔を上目遣いに見て、「いい?」と目で訊いてくる。

俺が頷くと、ヌルヌルになった皮の先っぽから、キイチの人差し指が入り込んだ。

亀頭の先端を指先が軽く擦って、俺の喉から「ぐぅ…」と声が漏れる。

皮が右側に引っ張られて、先っぽがチリチリ痛む…!けど我慢…!

口のとこをちゃんと広げて伸ばしとかねぇと、もっと痛ぇ事になるし…。

少し伸びて広がったら、今度は剥きにかかる。

キイチは慎重に、ゆっくりと皮を下に引っ張りながら「痛くない?」「まだ大丈夫?」と確認して来る。

息を止めて我慢してる俺は、問い掛けには黙って頷いてる。

薄ピンクの亀頭がちょっと見えた辺りで、ズキンと来た!

「き、キイチ…!そこらでもう…!」

俺がギブアップすると、頷いたキイチは皮を下ろすのをやめて、手の位置をキープしながら小さく息を吐く。

「また、前より少し剥けるようになったかも?」

「そ、そうか?本当に!?」

キイチはニッコリ笑いながら頷き、俺も嬉しくて顔を緩ませる。

最高だぜズルムケローション!この調子でお願いします!

…いつごろ亀頭全部出るまで剥けるようになるかなぁ…。待ち遠しいなぁオイ…!

下げた皮のキープをやめて、一回手を緩めたキイチは、俺のチンポを両手で掴んで、皮ごと捏ねるように揉み始めた。

揉まれてる最中にチンポが勃っちまうのは勘弁だ。…こりゃ我慢しようったってどうしようもねぇし…。

こうやって馴染ませてから、もう一回、下げられるトコまで皮を下げてみて、再度キープ。

こいつはズルムケローションの説明書に書いてあったのとは別の方法だ。

どうやら俺と同じ悩みを持ってる方々は結構居るっぽくて、キイチが探したら使用体験談なんかが纏めてある掲示板とかが

いくつか見つかったんだ。

こいつはそこに書いてあったいくつかの方法の内の一つなんだが、効果的って書いてあったし、道具もいらねぇし簡単にや

れるって事で、二人で相談して試してみる事にした訳だ。

実際のとこ、試してみたら説明書の方法より手間はかかるけど効果はあった。

それにしてもズルムケローション…、掲示板にあれだけ書き込みがあるって事は…、俺が思ってた以上に売れてる商品だっ

たんだな…。

「はい終わり〜」

二回目のキープを終えたキイチが手を緩めると、俺はホッと息を吐きながら体の力を抜いた。

…これだけでもう汗かいちまった…。

緊張から解放されて脱力した俺だったが、すぐさまビクッと身を固くする。

ローションでぬめったキイチのしなやかな指が、俺の尻にヌルッと…!?

「ちょ、あ…!い、いきなり!?あっ!」

動揺する俺のケツの穴に、ニッコリ笑ったキイチの指がヌププッと入り込む。

尻まで垂れてた分のローションと、キイチの手にたっぷり残ってる分のローションが潤滑剤になって、指は抵抗無く入り込

んできた。…まだ心の準備できてねぇのに…!

いきなりの圧迫感と異物感に思わず呻くと、

「わ…。凄い締め付け。吸い付いてくる」

キイチは面白がってるようにそう言って、先まで半分ぐれぇ入った指を少し動かした。

「あっ…!ふ…!」

声を漏らした俺の腹に手を当てて、キイチは「はい、仰向け仰向け」と、軽く押して来る。

こうなったらもう抵抗しようもねぇ…。俺は大人しく、キイチに言われるがまま仰向けに寝転がった。

大きく開いた股の間で、キイチは指をクププッと押し込み、指の腹で上向きにククッと、軽く押してきた。

まだ圧迫感がかなりあるんだが、これから来る快感に期待して、ケツの穴が勝手にヒクヒクし始める。

「あ、はぁ…!ん…、ん?んんっ!?」

半開きにした口から息と声の中間の音を漏らした俺は、腹に妙な感触を覚えて少し首を起こす。

山みてぇになってる俺の腹の上に、キイチの空いてる方の手が、広げられてペタンと乗ってた。

その人差し指が、俺のヘソに滑り込…。

「き、きっちゃん?まっ…ひゃうっ!?」

止める間も無く、キイチの指は俺のヘソを、軽くクリッとほじるように擦った。

「あ、ひ…!あ、あはぁぁあああ…!」

背骨を電気が伝って、全身に鳥肌が立つ!

ケツグリグリに加え、俺の弱点の一つでもあるヘソグリグリのダブルアタック!?

「うわ…!締め付け凄くなった!」

驚いてるような喜んでるようなキイチの声。

って…、あぁぁあああ!ヤベぇっ!久々にヘソほじくられたら尿意がっ!おまけに、尻に指突っ込まれてるから我慢が…!

「き、きっちゃん…!ヘソ…!ヘソだめぇっ!…し、しっこ出ちゃうっ…!本気で出ちゃうっ!」

「え?…えぇと…。同時攻撃はまずかったかな…」

キイチはちょっと残念そうに言って、ヘソから指を抜いた。…ホッ…。マジにチビるかと思ったぜ…。

「じゃあ、ついでに「よしよし」してあげるね?よしよし…」

俺の腹…ヘソの周りを、円を描いて撫でるキイチ。

「え…?「よしよし」ってそういう…?な…撫でるトコ…、おかしくない?」

「だってこの状態だと頭が遠いんだもん」

いや、確かにそうだけど…、キイチにとっちゃ頭撫でんのも腹撫でんのも一緒なのか?

腹を嫌にゆっくり、優しく撫で回される感触は、我慢できる程度だけどこそばゆかった。

それより、「よしよし」ってキイチの言葉と一緒にやられると、何かちょっと嬉しいような恥ずかしいような微妙な気分…。

ひとしきり「よしよし」してくれた後、キイチはその手を俺のキンタマに下から当てた。

軽く握ってモミモミしつつ、指を動かして尻を弄るキイチ。

ケツの穴が慣れて圧迫感が薄れると、だんだん気持ち良くなって来る。

直腸の内側を腹側に向けて、キイチの指はそっと押してくる。

任せきってされるがままの俺の体からは、また徐々に汗が滲み出て来た。

冷房はガッチリきいて部屋の空気は良い具合に冷えてるが、汗っかきの俺はこういう事すると、すぐさま汗だくになる。

尻の中から下っ腹辺りまでがポカポカ暖まる。

ヘソの下辺りに心地良い疼きがある。

喘ぎ混じりの弾んだ息が漏れる。

恥かしさと気持ち良さで、体の奥、芯からカーッと体温が上がって、全身から汗が噴き出て、半開きにした口の中には唾液

が湧く。

「ふあ…、ふ…。き…っちゃん…!…あ…。気持ち…いぃ…。気持ち…、ふっ…、いぃ…よぉ…!」

キイチはクスッと小さく笑うと、チュポッと音を立てて、一旦指を抜いた。

「あ…!は…ぁ…!き、きっちゃん?」

思わず漏れた俺の声は、我ながら情けねぇ程物欲しげに響いた。

…いやまぁ、心の底からの本音言うと、まだ抜いて欲しくねぇんだけど…。気持ち良いトコだったし…。

首を起こして、催促するような目で見た俺を、

「そんな顔しないでよ?こんな半端でやめたりしないから」

山みてぇにこんもり丸い腹越しに見返したキイチは、そんな風に言って微苦笑する。

その直後、キイチの「えい」という声と同時に、俺の尻にグプッ!と、何かが押し込まれた。

「いっ…!?いぎゃあああああああっ!んっ!ぐぅうううううっ!」

二本だっ!二本同時に来たっ!キイチは人差し指と中指を揃えて、俺の尻に突っ込んで来た!容赦なくっ!

「き、きっちゃん!ちょっとキツい!いっ、痛っ…!苦しい、よぉうっ…!んっ、うぅうう!」

「あ!そう?ご、ごめんね!?十分ほぐしたつもりだったんだけど…」

キイチは焦ったように少し声を高くして詫びた。…けど抜いてくんねぇのな…。

指を二本に増やしたキイチは、俺を気遣ってか、しばらく動かさねぇでいてくれた。

その間にも空いた手で俺の出っ腹を撫でたり、キンタマを軽く揉んだりと、別の箇所を愛撫してくれる。

「きっちゃん…、ちょっと…、な、慣れてきた…かも…」

尻の圧迫感がいくらか薄れた俺は、キイチにそろそろ平気そうだと訴える。

すると、キイチは二本の指をぐぐっと曲げて、少し強めにソコを押してきた。

「あっ…!ん…あ…!ちょ、ちょっと…、んふぅっ…!強…い…!あっ…!ふぅ…!んっ…!」

しなやかな指で前立腺を強めにマッサージされ、俺はよがり声を上げる…。

ハカハカと乱れた息の隙間から、間違ってもキイチ以外にゃ聞かせられねぇ声を漏らして、間違ってもキイチ以外にゃ見せ

られねぇ格好で身悶えしながら、俺は下っ腹から脳天まで這い登って来る快感に耐えた。

尻の中で動くキイチの指二本が、グリグリとソコを強く押す。

気持ち良くて、少し苦しくて、「ひゅぐぅ…!」なんて変な声漏らしちまった俺に、キイチは小さく笑いながら尋ねてきた。

「気持ちいい?さっちゃん」

「い、いぃ…!んぅ…!すん…ごく…。ひんっ…!気持ち…いぃ…よぉ…!」

出っ腹越しに視線を向けると、キイチはちょっと嬉しそうな笑みを浮かべてた。

…俺がこういう声出すと、何でか喜ぶんだよな…。

気を良くしたらしいキイチは、軽く揉んでたキンタマから手を離して、チンポをそっと握った。

さっきからずっと硬くなりっぱなしの俺のチンポを、キイチの手がしごき始める。

「あひっ…!んっ…、くぅっ…!」

チンポとケツの穴、同時に弄られて悶える俺の耳に、

「さっちゃん。かわいいよ…」

そんなキイチの言葉とクスクス笑う声が届いて、脳みそがとろけ、顔がカーッと熱くなる…。

「じゃあ、ここもよしよし…」

キイチが呟いた次の瞬間、俺のチンポは上からグッと押さえ付けられた。

ちょっと苦しくなったそのチンポを、キイチの手の平がグリグリグリグリ…!

さらに、尻から入ってる指がバタ足するように動いて、一層激しくグリグリグリグリ…!

「んっ!んうぅっ!?ふぐっ!ん…!…あひゅっ!ば、バタ足だめっ!バタだっ…!あ、あひっ!き、きっちゃん!イくっ!

これイく!すぐっ!ひぎっ!」

「よぉし!いつでもどうぞっ!遠慮無く出しちゃってオッケー!」

何でか知らねぇが、やけに嬉しそうなキイチのお言葉が返って来るっ!

チンポから手を退けたキイチは、身を屈めて口に咥え、尻に入れてる指の動きを少し変えた。

それまで押してくるだけだった二本の指が小刻みに左右に動いて、腹の中を擦るようにまさぐって来る!

おまけに、咥えられたチンポが強く吸われて、皮の先っぽから入り込んだキイチの舌が、亀頭を舐めて刺激して来るっ!

「あ…、あぁぁあああああっ!き、きっちゃん…!きっちゃん、俺もう…、んぐっ!ご、ごごごごめぇっ…!出ちゃふゅっ!

あひっ!出ちゃうよぉおおおっ!」

亀頭責めと肛門責めで、俺の我慢はもぉ限界っ!

「出ちゃ…うんぐぅううううううううっ!」

下っ腹に強い疼き。チンポとキンタマの付け根と、尻の少し奥から広がる快感が、背筋を這い登って脳天まで届く。

体を震わせて射精した俺のチンポを、キイチは口をすぼめてしっかりと咥え直した。

俺のチンポがビュクッ、ビュクッと精液を吐き出すのにあわせ、尻に入り込んだキイチの指が、射精を促すようにして繰り

返し前立腺を押し込んで来る。

この時、俺のケツの穴は緩んで締まってを繰り返すらしい。意識してやってる訳じゃねぇんだけど、勝手に動いてる。

最後にブルルッと身震いして射精を終えた俺は、ぐったりと脱力した。

「は…、はひぃ…。ふひぃ…。はひぃ…。…んひゅっ!?」

尻からチュポンと指を抜かれて妙な声を漏らすと、キイチは俺の丸い腹に跨って、ニコニコしながら尋ねてきた。

「どうだった?」

荒くなった呼吸で上下してる腹が、キイチが楽しげに体を揺するのに合わせてゆさゆさ揺れた。

もちろん気持ち良かったに決まってる。余韻に浸りながらぐったりしてる俺は、耳を寝せながら「ん…」と頷く。

満足げに笑ったキイチは、俺の腹を両側から挟んで、平手でポフポフ軽く叩く。

「…じゃあ、今度はきっちゃんの番…」

「ちょっと休んでから交代でいいよ?」

俺の上で俯せに寝そべったキイチは、手を伸ばして、今度は普通に頭をよしよししながらそう言ってくれた。

が…、キイチのチンポが…、硬くなってるでっかいのが…、ヘソんトコに当たってる…。

疲れてるとか、そういうのは別問題で…。俺が我慢できねぇよコレ…!

「…やだよぅ…。すぐやる…!」

と口では言いながら、心の中では「そのチンポちょうだい!」と懇願しつつ、俺はキイチの体を抱き締めて、横に寝返りを

打った。

急な動きだったから、「わっ」と声を漏らしたキイチが仰向けになる。

俺は両手と両膝をキイチの脇につき、自重でボヨンと垂れ気味の腹と胸を使って、恋人の細い体を上から軽く圧迫してやる。

…全体重かけたらキイチが大変な事になるからな…。

キイチに密着させた腹には、硬くなってるでっかいチンポの感触…。

「きっちゃんの番…。ね…?」

鼻がくっつく程に顔を寄せた状態から念を押した俺に、キイチは微苦笑しながら頷き、期待に応えてキスしてくれた…。



横になって向き合い、キイチに腕枕してやりながら、俺は弛んだ胸を優しく撫でられ、揉まれてる。

気持ちいい事した後の、余韻に浸る至福の一時…。

この寝るまでの間の、ピッタリひっついてまったり過ごす時間が、俺は大好きだ。

キイチがこうやって優しく撫でたりしてくれて、幸せがじっくり噛み締められるからよ…。

…まぁ、この最中にまたムクムクっときて、延長戦に突入する事も結構あんだけど…。

にしても、冷房きかしてたのに結構汗かいたなぁ…。こりゃシャワーでも浴びねぇと駄目だ…。このまま学校行ったらもの

すげぇ匂い方すんぞこれ?

風呂は朝も六時半から一時間だけあくし、ちっと早起きしてかいた汗洗い落とすか…。

「朝、お風呂行く時には、ちゃんと僕も起こしてね?他に誰も居なかったら洗いっこしよう?」

俺の考えてる事を読んだみてぇに、キイチは首の下をゆっくり撫でながらそう言ってくれた。

早朝は夜と違って他のヤツらがあんまり来ねぇ。なもんで洗いっこチャンスがある。

「ん…。早めに起こすね…」

また嬉しくなって、俺はキイチをそっと抱き締める。

俺、阿武隈沙月。星陵ヶ丘高校一年で柔道部所属。

濃い茶色の被毛と胸元の白い三日月が特徴の、幸せモンの熊だ…!