第十四話 「バレたっ!?」

僕の名前は根枯村樹市。東護中三年。図書委員会所属。全身が薄いクリームの猫の獣人。

今、クラスでは文化祭の出し物について話し合いがされている。

喫茶店になることは大筋で決まったけれど、どんな喫茶店にするかで意見は割れていた。

…そういえば、去年のクラスでは季節外れのお化け屋敷をやったっけ…。

ふと視線を動かすと…、あ、やっぱり。

大きな体でよく目立つサツキ君は、話し合いには全く参加せず、ぼーっと窓の外を眺めていた。

僕とサツキ君は付き合っている。いわゆる、男同士の秘密のカップルというヤツだ。もちろん誰にも言っていないし、今の

ところバレてもいない。

彼はおそらく文化祭自体に興味が無いのだろう。黒板の前で高槻君と凪原さんが激論しているけれど、それには全く興味を

示さず、フワフワと漂う雲を眺めている。たぶん「マシュマロ食いてぇなぁ…」とか、そういう事を考えているんだと思う。

うん。きっとそう。

「な!?アブクマもそう思うだろ!?」

「そんな事無いわよねアブクマ君?私の案の方が客入り良いと思うでしょ!?」

いきなり話を振られ、サツキ君はびっくりしたように黒板の前に立つ二人を振り向いた。

話の内容は聞いていなかったようだけれど、彼は頭を掻きながらめんどくさそうに、

「いいじゃねぇか。喫茶で決まりなんだろ?どんなんでも中身に大差ねぇだろ…」

と答えた。これに対し、タカツキ君とナギハラさんがいきり立つ。

「違う!断然メイド喫茶だって!分かんねぇかなぁ!男のロマンなんだよメイドは!」

「…済まんシンジ、俺にはいまいち理解できねぇ」

「何言ってるのよ。ハードボイルドジャズ喫茶が良いに決まってるじゃない!」

「…悪ぃナギハラ、名前から中身が想像できねぇ」

ふと見れば、体育会系の我らが担任キダ先生にとっても、文化祭はどうでも良いイベントらしく、窓の前に立ち、ぼーっと

校庭を眺めていた。たぶん柔道部員をしごく特訓メニューでも考えているんだと思う。うん。たぶんそう。

話し合いは平行線を辿ったけれど、結局、間を取って(?)普通の喫茶になった。

「せめてノーパン喫茶!」

と、最後まで頑張っていたタカツキ君は、女子から軽蔑の目で見られていた。



「本当に体育会系なんだねぇ」

「ん?ああ、キダ先生か」

「サツキ君もだよ」

ボクが笑うと、彼は不思議そうな顔をした。自覚ないの?

「球技大会や町内運動会はあんなにやる気まんまんだったのに、文化祭となると対照的にテンション低いんだもん」

「だってよ、文化祭とか面倒くせぇだけじゃねぇか」

サツキ君は本当に興味が無いらしい。でも、クラスの合同作業になるから、彼にも一肌脱いで貰わなきゃいけないんだよね。

ナギハラさんにも頼まれちゃったし…。



「ねえ、ネコムラ君。ちょっとだけいい?」

今日の帰り際、僕はナギハラさんに呼び止められた。彼女はウサギの獣人で、薄桃色の被毛がとってもチャーミングだ。こ

の間、球技大会で一緒になるまでは殆ど話したことも無かった(まあ、僕がクラスメートとの接触を避けていたっていうのも

あるんだけど…)けれど、僕に気を許したのか、最近はちょくちょく話しかけてくる。

「アブクマ君、興味なさそうでしょ?彼、頭の芯にまで筋肉が侵食してるから、こういう行事にはとことん乗り気じゃ無いのよ」

「あ〜、うん。僕もそう思った…」

「でもね、彼、大工仕事が凄い上手なの。去年の文化祭で演劇をやった時、アブクマ君はほとんど一人で背景やら置物やら作っ

ちゃったのよ!」

まあ、家の仕事を継ぐ気らしいし、小さい頃から日曜大工やってたしね…。

「喫茶店の内装を良くする為にも、彼の協力が欲しいのよね。でも、私達が頼んでも素直に「ウン」とは言いそうもないし…」

「去年はどうして手伝ったんだろう?」

「製作中に背景が倒れて、裏方が怪我をしちゃったの。それでまあ、見てられないって感じでしぶしぶ手を貸してくれたのよね…」

「なるほど、サツキ君らしいや」

「どうしようもなければ役立たずの男子四、五人に負傷してもらって協力を促すところなんだけど…、さすがにそんな事すれ

ば良心が痛むと思うのよね。ほんのちょっぴり」

…その発想はかなりコワいよナギハラさん…。

「それでまあアブクマ君、貴方には随分気を許してる…。っていうか、気を遣ってるような所があるし、ネコムラ君から頼ん

でくれれば、なんとか引き受けてくれるんじゃないかなあと思って…」

「サツキ君、結構頑固だから…。興味が無い物にはとことん無関心だしね…」

「それでも、ちょっと声をかけてみてくれない?他に良いアイディアもないから、ダメならシンジとタクに怪我をしてもらう

事に…」

…人身御供はタカツキ君とイシモリ君なんだ…?

「う〜ん…。一応促して見る。でも、上手く行くって約束はできないよ?」

「有難う。それでも良いわ。…もしもダメなら、私が何とか手を考えるから…」

そう言ってナギハラさんは、クラスメートと下ネタで盛り上っているタカツキ君を見つめた。その時の彼女の目は、獲物を

狙う肉食獣の目だった。…ウサギなのに…。

「キイチー。帰ろうぜー!」

「あ、うん。今行くよ」

廊下から顔を覗かせて呼ぶサツキ君に返事をし、僕はナギハラさんに頷いて見せた。

…早まった行動に…出なければいいけれど…。



「ねえ。文化祭って、やっぱり興味ない?」

 並んで歩きながら、僕はサツキ君の顔を見上げる。

「あ〜?う〜ん…。あんまりねぇかなぁ」

あんまり、というよりも全く興味無さそうにサツキ君は答えた。

「でもさ。去年の演劇では、裏方で大活躍だったって聞いたよ?」

「ナギハラのヤツから聞いたのか?…ったく、あいつ余計な事を覚えてんなぁ…」

サツキ君は舌打ちして顔を顰める。

「ありゃ人手が足りねぇから手ぇ貸しただけだよ。舞台装置を作るヤツらが、ちょっとした事故で怪我してな。仕方なくだ」

「ふ〜ん…」

…さて困ったな…。本当に全く興味が無いらしい。でも、ここで引き下がったらタカツキ君達の身に何が起こるか…。もし

そうなったとしても僕のせいではないだろうけれど…、それはちょっと心が痛むな…。なんとか協力して貰えないものか…。

「どしたキイチ?」

少し先でサツキ君が僕を振り返っていた。考え事をしていたら足が止まっていたらしい。う〜ん…。良い案が浮かばないなぁ。

…こうなったら…。

「う〜ん。あのさ、サツキ君、大工仕事得意なんでしょ?」

「得意っつうかまあ…人並みには」

「謙遜しなくて良いよ。皆誉めてたもん。でも…」

僕は少し俯き、残念そうな顔をする。…演技だけど。

「でも、なんだ?」

サツキ君は僕の様子が気になったらしく、首を傾げていた。

「僕、サツキ君のそういう姿、見たこと無いんだよね…」

「あ?見世物じゃねぇし、見てても面白いもんじゃねぇだろ?」

僕はサツキ君の顔を上目遣いに見上げた。ついでに哀願するように目をウルウルさせる。

「でも、一度で良いから見てみたいな。大工仕事に精を出す、サツキ君のカッコイイ姿」

サツキ君は照れたように鼻の頭を擦り「む〜っ」と唸る。感触は良好!さらに一押し!

僕は周囲に人気が無い事を確かめると、サツキ君の隣に寄り添い、腕に抱き付く。彼は突然のアプローチにドギマギしなが

らボクの顔を見下ろした。

「ね?僕も工作とか得意な方じゃ無いんだ。良い機会だから、教えてくれると嬉しいな」

「教える?」

「うん。僕、工作の班に入ろうかと思って。だから、サツキ君が傍で色々教えてくれると嬉しいんだけどなぁ。それに、終わっ

たら勿論お礼もするし…」

サツキ君は少し迷った後、

「そういう事なら、やってみても良いかな。…お前にゃ勉強も教えて貰ってるし、この程度でもちっとは借りが返せるか…」

と、頭を掻いた。やったね!色仕掛け成功!

「有難う!お礼は…、終わってからのお楽しみって事で。今は秘密ねっ!」

「なんだよソレ?気になるなぁ」

それは…、こんな所では恥ずかしくて言えませんよサツキ君…。



工作部隊(?)は僕とサツキ君と、なんとか「不幸な事故」に遭わずに済んだタカツキ君とイシモリ君だ。

僕らは工作室を使わせてもらい、喫茶店らしい内装を演出する小道具を製作していた。

小道具と言っても、実際にはカウンター席を丸々一つ作る事になっている。いや、そうなった、と言った方が正しいかもし

れない。

「せっかくやるんだから、カウンターぐらいはキッチリ作った方が良いよな?」

と言い出したのは、他でもないサツキ君だった。やる気を出してくれたようで僕も実に嬉しい。

ベニヤ板と角材をテキパキと組み合わせ、凄いスピードでクギを打ち込んでいく、生き生きとしたその姿を見ていたら、な

んというか、本当にこういう作業が好きなんだなぁと思えた。

僕らといえば、サツキ君の指示に従って、組みあがっていくカウンターを押さえたり支えたりしているだけだった。

「おしっ、こんなもんかな」

サツキ君は組みあがったカウンターを眺めて頷いた。

「細けぇ仕上げは後で良いだろ。とりあえず他のも形にだけはしちまって、それから見栄え良く仕上げしようぜ」

サツキ君の言うとおり、僕達はまず品物を形として揃える事から始めた。組み上がっているっていう実感があるからか、作

業は退屈しないものになっていた。何より…、

僕は棚の釘止めをしながら、テーブルを作っているサツキ君の姿を眺める。真剣な表情で、でもどこか楽しそうに作業に打

ち込むサツキ君の横顔は、とてもステキに見えて…、

ごすっ!

「いったぁあああああああああああ!!!」

僕は左手の人差し指を押さえて声を上げていた。サツキ君に見とれている内に、金槌で自分の指を思い切り打ってしまった…!

「だ、大丈夫かキイチ!?」

サツキ君が造りかけのテーブルを放り出し、周囲の椅子を蹴散らしながらブルドーザーのように駆けて来た。

タカツキ君とイシモリ君も驚いて手を止めている。

「平気…、ちょっと手元が狂っただけ…」

サツキ君は僕の手を掴むと、指をじっと見つめる。人差し指の第一関節から先が赤くなり、爪の中で内出血していた。うぅっ

…指先がじんじん痛むぅ…!

サツキ君は僕の指をそっと口に含んだ。熱を持った指先が、ほんの少し楽になる。そして僕は、顔に血が昇って来るのを感

じていた。

「医務室に行った方が良いんじゃねぇ?」

イシモリ君が僕の顔を心配そうに覗きこんで言った。タカツキ君もそれに頷いている。

「そうだな、骨とかがどうにかなってたらまずいし、ちょっと見て貰って来た方が良いだろう」

サツキ君が僕の指から口を離し、心配そうに顔を覗きこみながら言う。

「二人の言うとおりだ。ヒビまでは行ってねぇと思うけど、一回見て貰おう」

…はぁ、情けない…。何してるんだろう、僕…。



「軽い打撲みたいだね。シップを張って、なるべく動かさないようにする事、入浴の時は暖めないように気をつけてね」

ビーグル犬の獣人で保健の先生、美倉先生がそう告げると、サツキ君は心底ほっとしたようにため息をついた。…結局、心

配だからと付いて来てくれたんだけれど…、つくづく情けないなぁ、僕…。

「金槌で指を打った場合、あっさり骨折する事もあるんだから、この程度で済んで本当に良かったよ。腕力があまりないのが

幸いしたね」

…重ねがさね情けない…。

軽く落ち込んでいると、保健室のドアが勢いよく開き、血相を変えたキダ先生が姿を現した。

「大丈夫なのかネコムラ!?」

「あ、はい。軽い打撲だそうです」

キダ先生はほっと胸をなでおろす。

「タカツキとイシモリが、お前が怪我をしたと私に報告に来てな。アブクマならば例えダンプに轢かれたとしても放っておい

て問題ないが、さすがにお前が怪我となると心配になって…」

「…先生…、俺ここに居るんだけどな…」

「ああ、知っている」

抗議するサツキ君をサラリといなし、キダ先生はビクラ先生に深々と頭を下げた。

「お手数をおかけしましたビクラ先生…」

「いえいえ、お気になさらず。大事にならなくて何よりでした」

笑顔を返すビクラ先生に、キダ先生は何度も頭を下げていた。



「なんかさぁ。キダ先生、ビクラ先生と話す時と、他の先生と話す時とで、態度微妙に違うような気がしねぇか?」

「それはまあ…、たぶん好きだからじゃない?」

「…へ?」

サツキ君は驚いて足を止めた。手当てが終わったので、僕らは工作室へ戻る途中だ。

「知らなかったんだ?まあ、僕も薄々そう思っていたってだけなんだけれど」

「あのキダ先生がねぇ…」

「そう。つまり、追試のトラップを仕掛けようがなんだろうが、エコジマ先生には初めから勝ち目なんか無かったわけ」

「確かに。気が強ぇキダ先生と、いつもにこにこしてて優しいビクラ先生、デコボコに見えて結構バランスの良いカップルか

もなぁ」

…僕らは、第三者から見たらどんなカップルに見えるんだろう…?誰にも秘密なんだけれど、なんだかちょっと気になった。

「んんっ?」

工作室のドアを開けたサツキ君が、中を覗いて首を傾げる。

灯りはついていたけれど、工作室の中は無人だった。

「帰っちまったのか二人とも…。まあ、ちょいと時間かかったしな」

そう言うと、サツキ君はさっき放り出したテーブルの所に行き、金槌を手に取った。

「もうちょっとでキリの良いとこなんだ。そこまでやってくから、先に帰ってて良いぞ?」

「ううん。待ってるよ」

「…そか。んじゃ休んどけ。作業はすんなよ?大事にならなかったっつっても、怪我は怪我なんだからよ」

作業を再開したサツキ君の隣に座り、僕は彼の手元を眺めながら謝った。

「ごめんね。足引っ張っちゃった…」

「気にすんなって、時間はまだまだあるんだ。それに、誰だってミスぐれぇするだろ?」

「…僕、サツキ君がかっこよくて、見とれちゃって…」

サツキ君の手から金槌がすっぽ抜け、壁まで飛んで行ってゴスン!と音を立てた。

「うおっ!あっぶねぇ!」

「ご、ごめん!急に気を散らせるような事言って!」

サツキ君はちょっと照れたように僕を見た。

「…かっこよかったか?」

「うん、すごく!」

僕が顔を突き出すと、サツキ君は照れ笑いしながら僕の肩に手を回した。そして、静かに唇を重ねて…、

ガラッ

 …ガラッ?

慌てて離れ、ドアを見ると、コンビニの袋を持ったタカツキ君とイシモリ君が、こっちを呆然と見ながら立っていた。

「……………」

「……………」

僕とサツキ君は、振り向いた姿勢のまま、硬直していた…。

「…あ、あの…。…ご…、ごめん…」

タカツキ君が呆然とした表情のまま呟き、イシモリ君は気まずそうに視線を逸らした。

…ば…バレたっ!?

…こっ、これは…、まずいっ!どうやって誤魔化せば…!?

ボクが内心パニックになりながら、どうするべきか迷っていると、

「悪ぃ。今見た事、他の皆には秘密にしといてくれねぇか?」

口を開いたサツキ君は、静かにそう言った。

キスの瞬間を見られた直後のこんな状況で、彼は、とても落ち着いた口調だった。

「…おう。分かった」

タカツキ君はそう答えると、工作室に入ってきた。

「コンビニで菓子と飲み物買って来たんだ」

イシモリ君がそう言ってドアを閉める。

なんというか、少しは驚いているようだったけれど、妙な事に、二人ともそれほど動揺はしていないようだった。

「悪ぃな。ビックリさせちまっただろ?」

サツキ君が気まずそうに頭を掻くと、二人は苦笑した。

「そりゃまあ、戻ってきていきなりラブラブなトコ見せられればなぁ」

タカツキ君が言い、そしてイシモリ君が頷く。

「でもまあ納得した。アブクマ、ネコムラと居る時は少し表情が違うからな。それがずっと不思議だったんだけどさ」

「そんなに顔に出てたか?」

「微妙にな。ほら、俺達ムードメーカーじゃん?空気を読んで、お客様の心理状態を把握しとかないと、ウマいウケは取れな

いわけよ」

二人がいつもの調子だったから、僕は心底安心した。

「気持ち悪がらねぇんだな?」

「まあな。一応、そういうのもあるって事は理解してるつもりだ。あ、言っとくけどその気はねぇぞ」

「そういう事。だから俺達に惚れるなよ?」

「安心しろ。俺はキイチ一筋だから」

「同じく。僕もサツキ君だけだから」

僕ら四人は、顔を見合わせて笑った。

一瞬どうなる事かと思ったけれど、知ったのがこの二人で本当に良かった…。ちゃんと理解を示してくれる人も、居るんだね…。



二人が買って来てくれたお菓子とジュースを広げ、僕らは作業そっちのけで座談会を開いていた。

二人が興味を持ったのは、僕達の馴れ初め。夏休みがあけたら急に仲良くなっていたのが気になっていたらしい。親しくな

るきっかけになったあの偽追試の事を話して聞かせると、二人は残念そうな顔をした。

「エコジマの顔、拝んどきたかったよなぁ…」

「見ものだったぜ?そりゃもうキダ先生に一睨みされたらガッタガタに震えててよ!」

僕らは声を上げて笑う。すると、イシモリ君が興味深そうに尋ねてきた。

「で、最初はどっちから告白したんだ?」

「俺だ」

サツキ君が軽く手を上げると、二人は意外そうな顔をする。

「もともとキイチにゃそっちの気は無かったんだよな。俺が一方的に惚れてただけなんだ。で、勇気を出して告白した結果…」

サツキ君は僕の肩に腕を回して抱き寄せた。

「こういう関係になれた訳だ」

僕はちょっと恥ずかしくなりながらサツキ君の顔を見上げる。彼は、とても誇らしそうな顔をしていた。

タカツキ君とイシモリ君も嫌悪の表情は見せず、心なしか僕らを羨ましそうに見ていた。そんな視線を注がれたら、僕も、

少しだけ誇らしい気持ちになった。

「さぁて、のろけるのはこれぐらいにして、作業作業!」

「おいおい、まだやるのかよ?」

「このテーブルだけな。もうちっとでキリが良いとこなんだ」

サツキ君はそう言うと、造りかけのテーブルの傍に寄って行った。

「なんつうかさあ」

タカツキ君が呟いた。

「デコボコだけど、いいカップルかもな?」

「デコボコ?」

聞き返した僕に、イシモリ君が笑いながら言った。

「正反対だけれど、補い合う組み合わせっていう意味では、バランスの良いカップルかもよ?」

…そうか、バランスの良いカップルなんだ。僕達は…。

「サツキ君。何か手伝える事ない!?」

「おう?…んじゃ、ちょっとそっち押さえててくれるか?指が痛むなら無理すんなよ?」

「うん!」

僕は笑みを浮べながらサツキ君の傍に歩み寄った。

僕の苦手なものをサツキ君がやってくれる。

僕はサツキ君の苦手なものを手伝ってあげる。

二人とも苦手なものなら、力を合わせて補い合う。

デコボコカップルか…。…うん!なかなか悪くない響きだ!