おまけ
「…って。兄ちゃんに教えてもらったんだけど、知ってた?」
ゲーム機のコントローラーを握り、空中で目まぐるしい動きを見せる戦闘機を操作しながら尋ねる小柄な人間の少年に、
「ううん。知らなかった」
隣で同じようにコントローラーを握っている、大柄な黒熊の少年が、首をふるふると振りながら応じた。
「出ると一人前の男なんだって」
「ふぅん…。あっ」
操作する戦闘機が撃墜され、黒熊は口をポカンと空けた。
「あ」
分割された隣の画面で起こった爆発に気を取られた隙に、小柄な少年が操作する戦闘機も撃墜される。
「くぅ〜!惜しい…!」
「うん。もうちょいで次のステージだったのに…!」
二人は揃って悔しげに画面を睨み、それからコントローラーを床に置く。
小柄な人間の少年は、笹木恵一(ささきけいいち)。
大柄な黒熊の少年は、岩隈鉄也(いわくまてつや)。
小学校の時から付き合いのある二人は、クラスメートであり、部活の仲間でもある。
とある出来事がきっかけで、少々ギクシャクもした二人だったが、今ではすっかり元通りの仲である。
一旦コントローラーを置いた二人は、ジュースを飲みながら他愛ない話をし、しばしデモ画面を眺めながら休憩していたが、
「ね。さっき言ってたヤツ、僕にもおせーてくんない?」
テツヤはケーイチに、そんな事を言い出した。
「さっきのって…、オナニー?」
「うん」
首を捻りながら聞き返したケーイチに、テツヤはコクッと頷く。
「一人前の男になりたい。だからおせーて?」
「良いけど…。でもねテッちゃん?オナニーっていうのは…」
「うん」
「チンチン弄るんだけど…」
「…へ?」
(い、良いのかなぁ…?ぼくも、覚えたばっかりで、あんまり自信無いんだけど…)
背中を向けて、おずおずとブリーフを下ろしている黒熊の後姿を見ながら、ケーイチは耳まで赤くする。
かなり悩んだあげくの事だったが、テツヤは「大人の男」「一人前」などのフレーズの誘惑に負け、自慰の指導を願い出た。
股間を押さえてのろのろと振り向き、体を縮こめたテツヤは、上目遣いにケーイチの顔を伺った。
「で…、つ、次は…?どうしたらいいの?」
「え、えぇと…、す、座ってくれる?兄ちゃんがやってくれた時みたいに、やってみるから…」
「う、うん…」
微妙な空気が流れる中、テツヤは座布団の上に正座した。
「て、テッちゃん。正座してるとやりにくいから…、えっとぉ…、座布団にお尻ついて、あ、足を広げて?」
「え!?う、うん…!」
抵抗はあったが、テツヤは言われるままに座布団に座り直し、それから左右に脚を広げた。…股間をきっちり両手で押さえ
たまま…。
「テッちゃん…。チンチン隠してたら、その…、できない、よぉ…」
顔を真っ赤にしながら言うケーイチの前で、テツヤはゴクリと唾を飲み込み、両手を退け、体を支えるように後ろに付く。
黒くてクセの強い、モサモサとした剛毛に覆われた太り気味の体付き。
中学一年生としては破格の立派な体格をしたテツヤだが、そのまたぐらでは…。
(兄ちゃんのより、ちっさい…?)
段がついた下腹部の下、たっぷり余った皮に覆われた指先ほどの性器が、豊かな被毛と股間の贅肉に、半ば埋没していた。
「け、ケーちゃん…。僕、何か恥かしぃ…」
「だ、大丈夫…!すぐ済むから…。たぶんだけど…」
ケーイチはテツヤの股間へとそっと手を伸ばし、そしてピタリと動きを止めた。
(…あれ?えぇと…。ボッキしてない…?)
コータから指導を受けた際には、お互いに勃起していた。
が、テツヤの性器は勃起していない。
それどころか、緊張からなのか、むしろ縮んでいる。
「テッちゃん?ボッキさせて?」
「え!?」
唐突言われたテツヤは、当然面食らう。
「ボッキしてないと…、ぼく、やり方判んないんだ…。硬くなってるのでやってたから…」
「で、でも、ボッキって…、どう…?」
「ん〜と…。テッちゃんは、どんな時に硬くなる?」
「えぇとぉ…」
テツヤは視線を上に向け、眉根を寄せて考え込み、やがて顔を下ろしてポンと手を打った。
「朝起きた時とかっ!」
「…ダメじゃん…」
「ダメだよねぇ…」
途方に暮れるケーイチと、恥らいつつも困り顔のテツヤ。
「そ、それじゃあ…。このまま何とか、やってみる…」
「う、うん…。ごめんねぇ?ボッキしなくて…」
ケーイチはそっと手を伸ばし、皮を被ったテツヤのソレに、指先で触れる。
指先が触れた途端、テツヤは微かに身じろぎした。
「い、良い?始めるよ?」
「う、うん…。き、汚くない?嫌じゃない?」
「へ、へーき…」
ケーイチの手がテツヤの小さなソレを軽く摘み、皮ごと軽く捏ねた。
テツヤは脚を閉じたい衝動に必死に抗いながら、他人にソコを弄られるという初体験を享受する。
(テッちゃんのチンチン…。くにゅくにゅしてて、やぁらかいなぁ…。良い手触り…)
ケーイチは興奮を押さえつけながら、テツヤのソレを丹念に揉み、捏ね、擦る。
皮の上から亀頭を揉み、皮を少し捲って先を擦り、根本から先端へ向けて、引っ張るようにしてしごく。
そんな刺激を受けて、ドクンドクンと鼓動が強まる中、テツヤは、
(あ…、あ…?なんかこれ…、き、気持ち良い…かも…?)
初めての感覚に興奮し、ブルッと身を震わせた。
「あ…、硬くなってきた…」
ケーイチの声を耳にして視線を落とすと、自分のソレが今正に、ムクムクと頭をもたげ始めているのが目に入った。
「け、ケーちゃん…!な、なんか、チンポの根本…っていうか…タマの付け根…っていうか…むずむず、し…て…」
肛門と睾丸の間の辺りにむず痒さを覚え、テツヤは徐々に乱れてきた息の下から声を上げる。
「あ、い、痛いかな?」
「うう…ん…。なんか、なんか…、き、気持ち…良いんだと…思う…!で、でも、なんか、もらしちゃいそ…!」
「も、漏れないから…!あ、漏れるけど、おしっこじゃないから…!出しちゃっていいヤツだから…!」
完全に勃起してもなお小粒なテツヤのソレを、興奮しながらしごきたてるケーイチ。
時々押し殺した声を漏らしながら、必死になって股を閉じたい衝動を堪えるテツヤ。
「あっ、あんっ!あ、け、ケー…ちゃ…!ひんっ!なんか、ヤバ、ヤバ、い!僕、どぉにかなっちゃいそ…!」
経験した事のない快楽により、不安と興奮でいっぱいになり、テツヤは縋るような目をケーイチに向けた。
「ぼ、僕ぅ…!なんか、こわ、いぃ…!」
「だ、大丈夫!大丈夫だよ!怖いことなんてないから…!ぼくも兄ちゃんもやったんだし…!」
ケーイチの手の動きが激しくなるにつれ、テツヤのふくよかな腹が、胸が、ふるふると揺れ始める。
興奮と快楽で乱れた、荒い呼吸を繰り返し、黒熊は硬く目を瞑った。
目尻に涙を溜め、あえいでいるテツヤを目にし、
(て、テッちゃん…、ちゃんと、気持ち良くなってくれてる…?)
ケーイチは、どうやら上手くいったらしい事を悟り、安堵した。
「け、ケーちゃん…!…あっ!な、なんか、ジンジン、痺れ…て…!お、お腹の下の方…!はっ!は、あ、あぁっ、あぁぁぁ
ああっ!け、ケーちゃん!ま、待って!なんか、なんか変な感じぃっ!」
テツヤの声を聞きながら、ケーイチはさらに激しく手を動かす。
ケーイチの手が握った、小さいながらもトクトクと脈打つソレは、その瞬間、ヒクンっと、大きく動いた。
次いで白濁色の精液が、皮が下に捲られ、半分だけ覗いた薄ピンク色の亀頭の先端から、勢い良く飛ぶ。
「あ、あ、あっ…!ひぐっ!」
初めて経験する射精の快感に、テツヤはブルルッと体を震わせる。
二度、三度と、大きく精液を放った後もなお、テツヤの性器はとうとうと、かなりの量の精液を垂れ流す。
予想外に多い量の精液が、自分の手や服、テツヤの股間、太ももを汚し、座布団に滴って行く様を、ケーイチは呆然と、目
をまん丸にして見つめていた。
「すご…」
ケーイチの呟きと同時にヒクっと動くと、テツヤの亀頭はようやく精液の噴出を止める。
「はふ…、はぁ…、はっ…、はぁ…!んっふ…、ふぅ…!」
呼吸を落ち着けながら、テツヤはトロンと弛緩した表情で、ケーイチを見つめた。
「どうだった?」
「す、すんごい…、ふぅ…、気持ち、良かったぁ…」
疲れ切った表情で応じたテツヤに、ケーイチは顔を輝かせた。
「ほんと!?」
「うん…。でも…、はぁ…、なんか…、今更だけど、恥かしぃっ…!」
両手で顔を覆ったテツヤに、ケーイチはキラキラした目で話しかけた。
「でも、すんごいよ?兄ちゃんもぼくも、こんな出なかったもん!出れば一人前の男なんだから、これだけ出れば、きっとす
ごい男らしいって事じゃないのかな?」
「そ…そぉ…?」
顔を覆った指の隙間からチラッと自分を見た黒熊に、ケーイチは尊敬の眼差しを向けていた。
「うん!すごい男らしい事なんだよ!きっと!」
「そ、そう?そうかな?」
ちょっとだけ嬉しそうに言ったテツヤは、しかし気付いていなかった。
一人前の男に憧れる純真さから踏み込んだこの行為が、世間様一般が寄り付かないある一線を、軽々と飛び越してしまって
いる事には…。
「ね、ねぇ?僕にもやらしてケーちゃん?」
「え?い、いやいいよ!恥かしいし…」
「僕だって恥かしかったよぉ!ね?やらしてお願い!」
「う、うぅ〜ん…」
純真な二人の少年の、残り少ない夏休みの一日は、そうやって暮れていった…。