第十六話 「護るべきモノ」(前編)

「行ったよアル君!」

「うス!」

薄暗く、狭い路地にユウトの声が響き、純白の巨躯が巨大な得物を振りかぶる。

突進して来た半透明の馬に、カウンター気味に打ち込まれた大戦斧は、その頭部を粉々に破砕し、胴の半ばまで切り裂き、

その体を勢い良く跳ね飛ばした。

「ナイス一本足打法!」

半透明の馬を後ろから追い立てたユウトが、親指を立ててウインクした。

「昔リトルリーグやってたっスから。昔混んだ稲妻ってヤツっス」

「…昔とった杵柄?」

「それっス。にしても…」

アルは物珍しそうに、自分が仕留めた獲物を見下ろした。

「ケルピーなんて、資料以外で見たの初めてっス」

頭部を吹き飛ばされ、胴を半ばまで切り裂かれた馬は、見ている内にドロドロと液状化していき、今や溶けたアイスのよう

になっている。

「ブルーティッシュが睨みを効かせてる首都圏と比べると、こっちの警備は少し甘いからね、結構刺激的なモノが輸入されて

来るんだ」

ケルピーの残骸を見下ろしているアルにそう応じると、ユウトは改めて彼の姿を見る。

純白の美しい体毛に覆われた巨躯は、ユウトと比べても決して見劣りしない。

 丸太のような腕も足も、どっしりと太い頑丈な造りの胴や腰も、熊獣人の特徴である。

 今はブルーティッシュのユニフォームは身につけておらず、水色のシャツに紺を基調としたアーミーベストとパンツという

普段着の装いだ。

その戦い方を見るのは今回で二度目だが、ユウトから見てもアルは実に良く鍛え込まれていた。

 16歳の若さで、国内最大のチーム、ブルーティッシュの主力部隊に抜擢されているだけの事はある。戦闘能力という一点

だけで見るならば、一流の調停者と比べても遜色ないレベルであった。ただ…。

「どうかしたんスか?神代さん」

「え?あ、うん。ちょっと考え事してただけ。さあ、次に行こうか。少しペースを上げるよ。相手はうじゃうじゃ居るからね」



危険生物を大量に密輸しようとしたタンカーが、港湾警備に拿捕されたのは、東護港に入港した直後の事だった。

珍しく水際阻止かと思われた時、その事件は起こった。

監査官達が踏み入った際に、恐らく場慣れしていないのであろう密輸組織の乗組員がパニックを起こし、事もあろうに危険

生物を格納していた特殊ケージを全て解放したのだ。

危険生物がタンカーから港へと逃走し、港湾地区に緊急避難命令が出されたのは午前10時。逃走範囲が拡大し、国内で8

例目のエマージェンシーコールが発せられたのが正午。

アルが事務所を訪れた翌日の事であった。



本部となっている警察署からの危険生物の目撃情報を受信し、ユウトとアルが次に駆けつけた臨海公園では、戦いはすでに

終わっていた。

公園にただ一人立っていた青年は、二人の姿を目にすると、刀を一振りして鞘に収める。

「すごいっスねぇ…」

アルは感心して呟く。タケシを見つめるその目には、尊敬の光すら宿っていた。

園内に倒れ伏す異形の生物は10体を越えている。にもかかわらず、頬に散った返り血を手の甲で拭う青年には、かすり傷

どころか疲労の色すら全く見て取れない。

「リーダーが言ってたっス。剣技に関して自分と同等の腕を持つのは、国内じゃ不破さんぐらいだって」

「買いかぶりだ。剣技においても、もちろん総合力においても、俺はダウドの域に遠く及ばない」

謙遜する、と言うよりは淡々と事実を述べる様子でタケシは応じる。

「数が多すぎて何処も手が足りないようだ。俺はこのまま港方面へ向かい、港湾警備隊を援護する。ユウト、アルの事は任せ

るぞ」

「了解。でも無理はしないようにね?」

「了承した」

タケシはユウトに頷くと、足早に公園を去っていく。

「タケシはもう少し天狗になっても良いんだけどね。たぶん、自分の腕がどれだけのものか、自覚してないんじゃないかな?」

青年が去って行った方を見遣りながら、ユウトは苦笑した。

「さて、ボクらも次へ行こう。コンサートホールの辺りには誰も行ってないみたいだし、まずはそこからかな」

「了解っス!」



小高い丘の上の展望台。手持ちの双眼鏡でコンサートホールを遠く眺めると、ユウトは厳しい顔つきでアルに告げた。

「救助のためにも応援を要請しよう。中にかなりの人数が閉じこめられてる」

アルはユウトから双眼鏡を受け取ると、驚きのあまり呻き声を上げた。

コンサートホールは、50を下らない数の危険生物達に取り囲まれていた。

入り口や窓の強化ガラスを突き破ろうとしている異形の生物達の向こうに、怯えた表情の人々の顔が見える。

「高校生っスかね…、制服着た若い人が多いっス」

「そっか…、高校の音楽コンクールか何かだったのかも…」

ユウトは手早く携帯を操作し、応援要請を発信する。その横で双眼鏡を覗いていたアルが「あっ!」と声を上げた。

「キラービーっス!」

ユウトはアルの手から双眼鏡をひったくって覗き込むと、ギリッと歯を噛み鳴らす。

「…どこから!?今さっきまで居なかったのに…!」

どこから現れたのか、毒々しい黄色と黒に彩られた中型犬ほどの大きさの蜂が、コンサートホールの周辺を飛び回っていた。

一体何匹居るのだろうか、飛び回る蜂は徐々に数を増していく。

「まずいね…、あれだけ居たらガラスが保たない…」

「…ガラス?でも、強化ガラスっスよね?まだ破られてないし…」

危険生物が侵入できていない以上、叩けば割れるようなただのガラスではない。間違いなく頑強な特殊ガラスのはずである。

対人殺傷目的の小振りな危険生物が集まったところで、粉砕できるとは思えなかった。

 訝しげに首を傾げたアルに、ユウトは

「あまり知られてないけど、キラービーはミツバチと同じ能力を持ってるんだよ」

「…ミツバチ?」

「つまり、集団で獲物に群がって、高熱を発して蒸し殺す事ができるんだ。数さえ十分に居れば、自分達の何十倍もある、毒

すら効かない生物を殺す事だってできる。あの能力を使われたら…、時間さえあれば強化ガラスも溶かされちゃう」

アルにとっては初耳だった。そんな現象を見た事も無かったし、ブルーティッシュのメンバーの誰からも聞いた事はない。

(そういえば、さっき会ったケルピーの習性にも詳しかったっスね…。神代さん、かなり若いのに何でこんなに知識が豊富な

んスかね?)

「応援は間に合わない、か…」

ユウトは小さく呟くと、即座に決断を下した。

「ボクが救出に向かう。時間稼ぎはしなくちゃね」

「了解っス!」

斧を肩に担ぎ上げたアルが力強く応じると、ユウトは首を横に振った。

「行くのはボクだけにする。あの相手はキミに向かない」

「え?キラービーも他のも、今まで戦った経験があるっスよ?」

ユウトは何かを言いかけて口を開きかけ、そして小さく頭を振った。

「判った。ただし、ボクが退いてと言ったら、即座に退く事。これが連れて行く条件」

「うス…」

アルは、自分の経験上それほど危険な相手とは思えなかった。コンサートホールに群がっているのは、実際にこれまで何匹

も仕留めている相手だ。何故ユウトが自分に向かない相手だと言ったのかが、この時の彼には判らなかった。



突如現れた二人の獣人が、異形の生物と交戦を始めたのを目にし、閉じこめられていた学生達と教師達はどよめき、次いで

歓声を上げた。

「あのデカい獣人達、調停者みたいだぞ!」

「やった!助かった!」

次々と安堵の声が上がる中、一人の少女が祈るように両手を胸の前で組み、包囲を破ろうと奮闘する二人を見つめていた。

「…ユウトさん…」



違和感に気づいたのは、何度目かのきわどい攻撃をなんとか避けた時だった。

(なんか、やりづらいっス…。いつもはこんな感じじゃあ…)

アルは戦斧を大きく振るい、何匹目かの敵を仕留める。そこへ、急降下してきたキラービーが鋭い針を突きだした。かろう

じて刺されるのを避けたアルは、振り切った斧を引き戻し、反撃を叩き込んで蜂を打ち砕く。しかしその直後、左右から同時

にキラービーが迫った。地面に身を投げ出してかわし、アルは宙を舞うキラービー達を睨む。

(っく!いつもは、こんなに群れて襲ってなんか来なかったっス!なんだって今日は…)

アルはそこではたと気づく。そう、相手は今日もいつも通りなのだ。だが、いつも通りでないのは…、

「アル君!」

白熊の背後に迫ったキラービーを、駆け込んだユウトが飛び蹴りで粉砕した。

「潮時だよ。退いて!」

本人も自覚していなかったアルの戦闘方法の欠点は、一対多に向かないと言うことであった。

 強力な大戦斧は、一撃ごとに確実に相手を仕留める。ただし、当たりさえすれば、である。

 振りが大きい事が災いし、素早く、小回りが利き、連携して襲いかかってくる多数の敵に対応し切れない。集団戦闘に慣れ

ていたアルは、これほどの数の差を体験した事が無かった。

対してユウトの武器は自分の五体である。少数で多数の敵を相手にする事に慣れてもいた。

 しかも、攻撃の一瞬しか禁圧解除できないアルと違い、短時間であれば解除を持続できるため、速度や回避能力においても

アルを大きく上回っている。

 これまでに踏んできた場数の差もあり、一度に対処できる数がアルとは段違いである。

「ま、まだやれるっス!」

意地になって踏み止まろうとしたアルに、再び数匹のキラービーが襲いかかる。

一撃で一匹を仕留め、斧を返して二匹目を仕留めようとしたアルは、斧を戻すよりも早く蜂に懐へと飛び込まれた。

 避けきれないと悟った瞬間、アルの体は地面に引きずり倒され、頭上を蜂が飛び過ぎる。

 キラービーが襲いかかったのを視界に捉えたユウトが、咄嗟の判断でアルの背後から腰にタックルをしかけ、地面に押し倒

していた。

素早く跳ね起きたユウトは、背後から襲いかかったアントの懐に後ろ向きのまま飛び込み、短い呼気と共に背中で体当たり

して吹き飛ばす。

凄まじい速度の体重移動と関節の固定によって、ほんの数センチの隙間と、踏ん張れる足場さえあれば、その爆発的な破壊

力を十分に発揮できる。ユウトの生家、神代に受け継がれてきた武術はそういったものである。

そのまま体を旋廻させ、宙を舞うキラービーを回し蹴りで粉砕する。次いで軸足で飛び上がり、ソバットを放ってもう一匹

を仕留める。

着地に殺到したマンティスのカマをかいくぐり、懐深く潜り込むと、その肩口を胸に当てて押し上げるように吹き飛ばす。

「ボクなら一人でも大丈夫だから!今は退いて!」

一瞬で周囲の敵を蹴散らし、ユウトはアルに叫ぶ。

白熊は悔しさに歯を食いしばりながら立ち上がった。護る事もできずに退くのかと、ちらりとコンサートホールを振り仰い

だ瞬間、アルは一瞬絶句し、慌てて叫んだ。

「神代さん!キラービーが二階の窓に!」

面積が広く、溶かしやすい正面口のガラスだったが、近づけないと悟ったのか、キラービーは二階の窓に群がり初めていた。

ユウトは素早く状況を確認し、再びアルに叫んだ。

「アル君!撤退中止!中に入って迎え撃って!」

「え?神代さんは!?」

「言ったでしょ、ボクは一人でも大丈夫。さ、早く!」

「で、でも…」

仲間を一人残していく事に躊躇するアルに、ユウトは声を大きくした。

「調停者アルビオン!キミが護らなきゃいけないモノは何!?」

ユウトの叫ぶような問いに、アルは殴りつけられたように身を竦ませた。やがてその顔に、理解と苦渋の色が浮かぶ。

「ほ、法と…、平和と…、民間人っス…!」

「なら行きなさい。急いで!」

ユウトがめったに見せない厳しい表情でそう言うと、アルは歯を食いしばり、コンサートホールの正面口目指して駆け出した。

(ヤマガタさんも…、あの時、こんな気持ちだったんスかね…?)

アルは迷いを断ち切るように戦斧を振り回し、行く手を阻む敵を一振り毎に粉砕し、敵の真っ只中を駆け抜けてゆく。

その背をチラリと見送ったユウトは、ほんの一瞬だけ、微かな笑みを浮かべた。

(さぁて…、ボクはこっちを何とかしなくちゃね…)

傍に居たカマキリの顎を蹴り飛ばしつつ後方宙返りし、ユウトは敵の群れから間合いを離す。

「それじゃあ…、失礼が無いようにトコトン付き合おうか!」

呼吸を整えながら、ユウトは両の拳を胸の前で打ち合わせ、自分を取り囲んでいる敵群を見回した。



正面口にたどり着いたアルは、先ほどまでの彼らの乱戦に参加してだいぶ減っていた敵を片付けると、強化ガラスの自動ド

アの隙間に爪をかけ、強引に引き開けた。

空いた隙間に押し込むようにして体を滑り込ませると、緊急時の作動なのだろう、ドアは素早く閉じ、再び外敵の侵入を防

ぎ始めた。

アルは呼吸を整え、説明を求めるような視線を向ける人々に向き直る。

「自分は調停者のアルビオン・オールグッドっス。これから言う事を、落ち着いて聞いてください!」

アルはそう前置きすると、もうじき応援が駆けつける事、正面の敵は自分の仲間が引き付けている事、二階の窓から敵が侵

入しようとしている事を手早く説明した。

「中に入り込んだ敵は自分が片付けるっス!皆さんは一箇所に固まって避難していてください!」

アルは引率の教師達に、窓のない地下の控え室へと生徒や観客を集めるように告げると、しんがりを務めて皆を避難させる。

地下への階段手前で立ち止まると、全員が抜けた事を確認し、アルは分厚い防火シャッターを下ろすべく、地下への階段脇

の基板の蓋に手をかけた。

しかし、シャッターを下ろすスイッチを押したその時、アルの耳に突如虫の羽音が届く。

アルは舌打ちをすると、階段を背にして斧を構え、通路の先へ向き直る。通路の向こうから、3匹のキラービーが飛んで来

るのが見えた。

(一匹だって、通せないッス!)

アルは前方へ駆け出しつつ、先頭の蜂目掛けて斧を横薙ぎに振るった。斧は狙い違わず一匹を破砕し、アルは次の二体目へ

と下から斧を振り上げる。

 二匹目を微塵に粉砕し、斧を引き戻そうとしたその時、アルの脇を抜け、最後の一匹が階段へと向かった。

「ま、まずいっス!」

慌てて向き直るアル。その目に、ゆっくりと下りていく防火シャッターの前に、一人の女生徒が立っているのが映った。

「危ないっス!逃げて!」

背中まで伸ばした艶やかな黒髪の女生徒は、手にしていた鞄に手を突っ込み、スプレー缶を取り出す。その缶には「痴漢撃

退用強力スプレー」の文字。

目前に迫ったキラービーを前に、女生徒はスプレーを噴射した。

濃い、白い気体が勢い良く噴出し、見事キラービーに命中する。

 これが目潰しになったのか、キラービーは空中で方向を変え、傍にあった防火シャッターの操作盤に勢い良く激突した。

「伏せるっス!」

アルの声と同時に女生徒が身を屈める。振るわれた斧は、方向を見失って飛び回るキラービーを、屈んだ女生徒の頭上で叩

き潰し、そのまま壁にめり込んだ。

砕けた壁の破片がパラパラと降り注ぐ中、女生徒はゆっくりと顔を上げる。

 白熊は「ふぅ…」と安堵のため息をつき、女生徒に手を差し伸べた。

「無茶するっスねぇ…。でも、お陰で助かったっスよ」

女生徒は微笑むと、アルの大きな手を握り、立ち上がった。その手の細さに、しなやかな感触に、アルは一瞬ドキッとした。

 そして、母を除けば、これまで人間の女性の手を握った経験など殆ど無かった事に気付く。

「どうかしましたか?」

「あ、い、いや。なんでもないっス!」

アルはドギマギしながら慌てて手を離すと、操作盤に向き直り、そして硬直した。

キラービーに激突された操作盤はベッコリとへこみ、ショートして火花を散らしている。

「ああああああ!?し、しまってるぅうううっ!(しまった!の現在進行形)」

アルは配電盤を前に頭を抱え込む。地下への階段はここ一箇所だけ、これではこの女生徒を地下に避難させる事は出来ない。

強引に扉を持ち上げようかとも考えたが、万が一それで閉まらなくなると大いに困る。

どうしたものかと途方に暮れるアルの横で、女生徒がおずおずと口を開いた。

「あの…、アルビオンさん…、とおっしゃいましたっけ?」

「え?そうっスけど…」

「もしかして、ユウトさんのご兄弟ですか?」

アルは女生徒の口から出た名前に、びっくりして目を丸くする。

「神代さんを知ってるんスか!?」

「はい、この間お世話になりまして…」

女生徒、榊原明美はにっこりと微笑んだ。



数十体の異形の生物を叩き伏せたユウトは、乱れた呼吸を整えつつ間合いを取った。横たわる死骸は軽く30を越えている

が、まだ半数以上残っている。

さすがにきついのだろう、隠しようも無く肩が上下し、胸が酸素を求め、ふいごのように呼吸を繰り返す。

それでも一歩も引く姿勢は見せず、ユウトは自分を取り囲む敵の群れを睥睨した。

(まったく、タケシに言っといてなんだけど、少し無茶しなきゃならないかな…)

タケシに能力の乱用を控えるよう忠告しているように、ユウトにも使用を控えている奥の手が二つばかり存在する。

その内の一方は対多数の乱戦向きでもあり、この場を切り抜ける事も十分に可能なのだが、それは一年間以上もの間、たっ

たの一度も使っていない。ユウトが最も使用を避けている手段でもあった。

それを禁じ手にしている理由は三つ。体に想像を絶する負担が掛かる事。周囲に味方が居れば巻き込みかねない事。そして

最も大きな理由は最後の一つ。この能力を使用した自分の姿を、誰にも、特にタケシには見せたくないという事。

使用するかどうか逡巡していたユウトの上に、ふと影が落ちた。

反射的に見あげたユウトは、自分の遥か頭上を飛び越え、コンサートホールの破れた窓へと向かうその姿を捉え、息を呑んだ。

体長4メートルはあろうか、黄色と黒の縞に縁取られた巨大な蜂…。

「…クイーンビー…!?」

ユウトの顔に緊張の色が浮かぶ。

二階の窓へ向かう巨大な蜂を追い、駆け出そうとしたユウトは、しかし敵の群れに行く手を阻まれて足を止めた。

「なりふり、構ってられないか…」

ユウトは静かに呟き、覚悟を決めた。