絶え間なくひとが行き交う賑やかな街。国民の十人にひとりが住んでいる計算となる首都の人口密度に、改めて驚きながら、

(東護じゃ、初詣の神社も初売りの電気屋さんでもこんなに混んでない…)

 保護用のサングラスで目を覆っているノゾムは、キョトキョトと様々な看板へ忙しく視線を向けていた。一応オシャレを考

えたチョイスで、やたらとレンズ部分が広くて顔の三分の一を隠してしまうコミカルなデザインのビッググラスである。

 それを先導するのはアル。少年と言える年齢だが現在2メートルを軽く越える身長に加えて214キロの巨躯。超ド級の大

兵肥満は周囲から好奇の視線をひきつけまくっているが、ジロジロ見られる事には慣れているので特に気にする様子も見せな

い。むしろ一緒に居るノゾムの方が衆目を気にしてしまう。

 時折携帯の地図案内を確認していたアルは、「あったっス!あそこのビルっスね」と前方を指差した。

 前面が広くガラス張りになっていて、店内やエスカレーターが透けて見えるのは、プラモデルやゲーム機などの玩具類も取

り扱っている電気屋。

 ネネから貰った小遣いを握り締めたアルがノゾムを伴って繰り出したのは、電気屋の多さでも有名な商店街。何度かアンド

ウに連れられて来た事があり、その値引きっぷりと品数の多さが印象的だったので、目当ての品もここでなら安く手に入るだ

ろうと考えて足を運んでいる。

 案内板で売り場を確認し、エスカレーターで三階に上がって、すぐ目に付いたショーケースに歩み寄ったアルは…、

「コレっスか?このゲームっスよね?」

 ショーウィンドウ内に展示されている無数の品の中から、サイバーな雰囲気が漂うオンラインRPGのパッケージを指差し

て問う。

「うん。これだね、新章版のスペシャルパック」

 丸い狐が丸顎を引いて頷く。

 長く趣味にしているゲームがあるのだとノゾムから聞いた事があったアルは、ポンと大金を渡された事もあり、思い切って

これにトライしてみる事にした。

 パソコン版も据え置きゲーム機版も携帯ゲーム機版もあり、どれでも一緒に遊べると聞いた北極熊は、せっかくなので他の

ゲームも遊べるようにいずれかのゲーム機本体を購入する事にしたのだが、据え置き機と携帯機のどちらを購入するかで一晩

悩んだ。何せゲーム機を買うのは生まれて初めてなので、選択が難しいしドキドキやワクワクもあった。

 画像が綺麗なのは据え置き機版。手軽に遊べるのは携帯機版。どちらも利点があるのだが、結局選んだのは…。

「本体って思ってたよりデカいんスね?」

 最終的にアルが選んだのは据え置き型の本体だった。本体購入でついたポイントを利用して特典アイテム付きのパッケージ

版ソフトまで買ったら、ネネから貰った五万円はほぼ無くなってしまったが、北極熊は大満足のホクホク顔。手提げ袋入りの

箱をギュッと胸に抱き、期待でピコピコと尻尾を上下させながらエスカレーターへ歩いてゆく。

「でもそれが一番高性能だからね。映像も綺麗だし迫力もあるし…」

 体験もしないで本体とゲームをポンと購入するアルの度胸に心底感心しながら、

(…後悔しないように、楽しんで貰えるように、ぼくが頑張らなくちゃ…!)

 余計な心労をまた一つ抱え込む餅狐であった。



 ブルーティッシュ本部に戻り、食道で腹ごしらえしてから居住エリアの自室に帰ったアルは、ノゾムに手伝って貰いながら

本体の接続と設定に取り掛かった。この手の事に明るいノゾムは頼りになり、予想外にすんなり下準備が済むと、アルはゲー

ムに取り掛かる前に一通り説明書をチェックする。概要についてはノゾムから簡潔に聞いてだいたい理解していたが、この辺

りは「マニュアル読まねー手合いは困ったからってひとに泣き付く権利なんかねーんだっつーの」「最低限の努力も怠る輩は

困って当然なんだっつーの」「マニュアルやインフォに目を通すのは最低限の礼儀なんだっつーの」というアンドウの教えも

あって徹底していた。

 キャラクタークリエイションから職業選び、複雑で多様なシステムが生み出す戦略性と、その割には意外と取っ付き易そう

な操作性。一通り目を通したアルは…、

「ノゾムはどんなキャラにしたんスか?」

「自分に似せたよ?」

 ノゾムの「ただし昔の」という一言が足りない説明を、そのまま鵜呑みにした。

「じゃあオレも自分に似た感じにするっス!」

 かくして、種族から体型から顔形まで事細かに設定できるキャラクター作製に、ノゾムのレクチャーを得ながら挑んだ末…、

「…ビックリするぐらい似てるっス…」

「…キャプチャーしたみたいにソックリだね…」

 出来上がったキャラクターは会心の出来で、ふたりがちょっと引くほどアル本人にそっくりだった。

 北極熊顔、どっしりした体型、手足のバランス、腹の出具合、胸のライン、尻尾、どこを取っても瓜二つの容姿である。こ

れで穿いているトランクスがハート柄だったり降り注ぐアップルだったり星条旗だったりしたら完璧だったなと、ノゾムは神

妙な顔で喉を鳴らした。

「…どうしよう?」

「どうって…、何がっス?」

「あんまり似てると、酷い目に遭った時ヘコむかも」

「酷い目に遭うんスか!?」

「殴られたり斬られたり火を吐き掛けられたりとか…」

「ええええええ…!って、考えてみたらいつもの事っスね?」

「いつもの事なんだ…」

「じゃあ決定っス!」

 かくしてアルの分身、そのまんまな名前の「アルビオン」が冒険の舞台に降り立つ。

 職業は自由にチェンジ可能だと事前に聞いて覚えていたアルは、まず近接戦闘が得意な物を選んで、ノゾムのレクチャーを

受けながら拠点を巡って位置を覚え始めた。が…。

「刀とかライフルとかも格好良いっスかね?」

「全部装備できる職業は無いんスよね?」

「成長ボーナスを何処に振るか考えとかなきゃいけないんスか…」

 などなど、会話の途中でアルが挟んで来る発言にノゾムは眉根を寄せた。

「アル君、ゲームとかあんまりやってないんだよね?」

「そうっスよ~」

『………』

「「アル」っス」

「「アル」でした…。それで、何かちょっと詳しいっぽく感じたんだけど…」

「アンドウさんがやってるのとか後ろで見てたりしてたっスから」

「アンドウさんゲーム好きなんだ?」

「色々やってるっスよ。…ミッションカウンターってここっスよね?」

「うん。練習みたいな易しいミッションだから、試しながら操作を覚えて」

「らじゃっス」

 不慣れだからなのか手が大き過ぎるからなのか、コントローラーの持ち方が少々窮屈そうなものの、初心者にも関わらずア

ルはスムーズにゲームを進める。ただし時折手元に視線を落としてボタンの配置を確認するのはご愛嬌。実戦慣れしているせ

いか画面だけに没入する事もなく、ノゾムと会話しながら操作できている。

 さらに、アルそっくりなキャラクター「アルビオン」は、実際の本人同様に…。

「アル君、何か強くない?」

「そうっス?」

『………』

「「アル」っス」

「「アル」でした…」

 ノゾムが言及するのも無理がないほど、初心者らしからぬ強さを見せている。数値の上では勿論強くはない。エネミーを倒

すためには攻撃を何度も当てなければいけないし、攻撃されれば目に見えて体力が減る。だが、押すボタンを間違えるなどの

ミスを除けば被弾しないし攻撃も的確である。

 実はアル、訓練と実戦で鍛えられた反射神経や行動洞察、タイミングの見切りを活用してプレイしていた。動作の隙や動け

ない時間帯、彼我の攻撃が届く範囲などをあっという間に把握してゆくので、異様なスピードでゲームに馴染んでゆく。

(そう言えばエイルさんが、アル君…アルはどんな武器の扱いもすぐに習熟するって言ってたけれど…、これもそんな才能の

影響?)

 なんかずるい。と思わないでもないが、成長が早いならそれに越した事はない。やられ難いなら一緒に遊び易くなる。フレ

ンドを紹介して一緒に遊ぶところを想像し、ノゾムはフサフサと尻尾を振った。

 一方で、繰り出す技の派手なエフェクトや、スタイリッシュなアクションが気に入ったのか、アルも終始ピコピコと尻尾を

振っていた。

 途中でノゾムと交代して、実際に目の前で操作しつつ立ち回りのコツや小技を教えて貰ったり、アイテム類の収集方法や報

酬の稼ぎ方をレクチャーされたり、予想していた以上にシステムも複雑でやる事も多いなぁと感じながら、仮想世界の広がり

にワクワクするアル。

 気に入って貰えたらしいとホッとしながら、満面の笑みでガイドを続けるノゾム。

 ゲームその物もだが、友達とあれこれ喋りながら過ごすのも楽しい。時間も忘れてゲーム画面ばかり見ていた二頭は、思い

出して入浴に行き、しばらくしてからまた思い出して食事を取りに行き、夢中になってたっぷり遊んで…。




















C A U T I O N ! ! ! 


ここから先には「第八種」が出現するため、例によってマニアックかつ18禁表現が含まれるようになります。
また、閲覧する事で「その手のモノ」が苦手な方は特に気分が悪くなる恐れがあります。
閲覧中に発作、蕁麻疹、過度な拒絶反応等の症状が出た場合は、直ちに閲覧を中止し、記憶から消去して下さい。
以上の事をご理解なさった上で、「それでもオッケー!」という方はどうぞ先へお進み下さい。

でも、蕁麻疹とか出ても責任持てないっスからね?






















 遊び疲れてた二匹は、アルの部屋で雑魚寝する格好になった。

 どちらも満足げ、平和な寝顔でクゥクゥ寝息を立てている。

 だがしかし、ふたりとも気付いていなかった。就寝間際に接近し、息を潜めていた存在には全く…。

 止まっている換気扇のカバーが外れ、中のファンも外れ、四角い穴がぽっかり空いている。そのすぐ下の壁面を、保護色で

壁と同化している侵入者がヌヌヌヌッと床の方へ移動していた。

 秘密の七大能力の一つ「いつだって傍から見ているぜステルス」を解除し、たちまち本来の色を取り戻したのは、高さは2

5センチ程、下部の直径も同程度の何か。

 皿にあけたプリンのようなシルエット。

 ボディカラーはショッキングなイチゴ色。

 頂上部の口周辺に生えている触手はビビッドなオレンジ色。

 その姿はイソギンチャク。しかしてその正体はただのイソギンチャクなどではなく、陸上環境に適応した知性あるイソギン

チャク。

 危険度分類第八種。ゴミ捨て場にいる鴉一匹ぐらいと評される危険度カテゴリーに属する危険生物、個体名メケメケちゃん、

メケッと参上メケッと侵入。

 最近エイルが忙しいのであまり遊んで貰えておらず、欲求不満だし暇だしおやつも用意されていなかったので夜が切ないメ

ケメケちゃん。友達が来ているから…とここ数日全然遊んでくれないアルにちょっかいをかけつつ、夜食(若いたんぱく質)

を頂こうという心積もりである。

 今夜は珍しく友人も一緒、さてどんなフレンズが来ているのかと、目(?)を凝らしたメケメケちゃんは、仰向けに寝てい

るプックリモチモチな丸々肥った狐の姿を捉える。そして犬と認識。

 これはなかなかとウネウネ頷く、ストライクな様子のメケメケちゃん。顔立ちも可愛らしく毛並みも良く肉付きも良い、文

句のつけようもないメケ好みな少年である。

 とりあえず味見に向かうメケメケちゃん。ヌノヌノヌノッと足早に進むその足(?)取りは、しかしやおらピタリと止まる。

 仰向けで寝ている狐の、緩やかなカーブを描いている柔らかそうな腹部。寝間着にしたランニングシャツが捲れてヘソが出

ている。その露出したヘソ下が、うっすらとオレンジ色に光り始めていた。

「うぅん…」

 軽く顔を顰めたノゾムの下腹部の中からスゥッと浮上するように現れたのは、長い胴に短い手足、尖った耳と狐顔、フサフ

サの尻尾を備えた、オレンジ色に燃える管狐(仮称)。

 短い腕を組んで短い脚を軽く開いて、ノゾムの下腹部からデンドンデンドンデンドンデンドンと何処からか聞こえてくる勇

ましいマーチをBGMにせり上がって来た管狐は、ノゾムの腹から足先がちょっぴり離れて控えめに浮遊した状態で、メケメ

ケちゃんを睥睨する。

 危険度分類ぶっちぎりの神話級。下手すると都市一つがソドムとゴモラ案件な危険度カテゴリーに該当する危険生物サラマ

ンダー…の休眠幼体。個体名は「まだない」。忍び寄る影に反応して出撃。

 《コンッ!》と威嚇する管狐。言わんとしているところは恐らく、「キサン何処の鉄砲玉じゃあ!」あるいは、「何処のプ

レスじゃオドレェ!」というところか。

 対して、触手を五本ずつ束ねて二本の腕とし、拳を握ってシュッシュッとシャドーするメケメケちゃん。言わんとしている

ところは恐らく、「メケメケにしてやんよ」。なお、管狐は光学的に言えば見えない存在なのだが、メケメケちゃんは元々目

に頼っていないので関係ない。どういう理屈かは不明。

 一応休眠状態だし地味に疲れるのか、管狐はさっさと浮遊をやめてノゾムの腹の上にチョコンと着地し、シャッと口を開け

て牙を見せた。

 メケメケちゃんはシュルルルッと四方八方へ触手を広げ、各々の先端からシュッと紫色の霧を散布する。

 メケメケちゃん秘密の七大能力の一つ「良いから身を任せて楽にしてなフォッグ」。強制鎮静作用がある霧で、吸ってしま

えば体が弛緩したり眠くなったりする。しかし管狐はエネルギー体。比喩でなく「息してない」系存在なので無効。

 スッと尻尾を立てて、上体を低くして尻を上げ、猫っぽく構える管狐。「良いから身を任せて楽にしてなフォッグ」は効か

なかったものの、どうやら宣戦布告と認めたようである。

 なおもシュッシュと霧を散布したメケメケちゃんは効果が無いらしいと察すると、触手を絡ませて五指とし、体全体を使っ

てひとの手首を表現、繰り出すのは最近アニメで学んだ新技、「中指立て」。文化圏によっては致命的な関係断絶に発展する

一撃だが、そういった文化圏とあまり接触を持って来なかった管狐にはまたもや無効。

 エネルギー体を実体化させ、ノゾムの腹をポヨーンとトランポリンのように弾ませて跳躍、メケメケちゃんを襲撃する管狐。

上から来るぞ気をつけろ。

 宙で体を丸めて縦回転。全身に攻撃判定がありそうな回転は、アルが興じるゲームをノゾムの中から半分寝ぼけて眺めてい

て今日覚えた動き。シュッシュされまくったせいで部屋に充満している紫霧を引き裂き、今まさに管狐抜刀牙が…キャッチさ

れた。

 メケメケちゃんはシュバァッ!と数本の触手を普段の三倍ほどに伸ばし、回転中の管狐・ローリング・サンダーを絡め取っ

ている。無駄にモーションが長い上に攻撃判定が無い予備動作があだとなった。

 管狐を捕らえたままシュルルンッと触手を縮めて引き寄せたメケメケちゃんは、残る全触手を構える。そして、雪崩のよう

なメケメケラッシュが、防御も回避もできない管狐の全身を容赦なく乱れ撃つ。メケメケメケメケメケメケメケメケメケメケ

メケメケメケナケメケメケメケメケメケメケメケメケ!

 間断なく叩き込まれる触手のラッシュにポニョポニョポニョポニョと全身を打ち抜かれ、堪らず《コンッ!》と苦鳴(?)

を上げる管狐。

 しかしその目はまだ死んでいない。胴に巻きつくフニャフニャした触手に、短い腕を振り上げて…チョップ。実に地味なの

だが反応良く触手を緩ませるメケメケちゃん。おおむね空気が読めるイソギンチャクはリアクションもバッチリである。

 拘束から逃れた管狐は、メケメケちゃんに飛びかかってボディプレスを敢行。さらに触手を抱える格好で束ねて封じると、

テシテシテシテシッと高速猫キック。流血…は全くしていないがよろめくメケメケちゃん。一応ベビーフェイスという立ち位

置のつもりなのか、巧みにプロレス技を織り交ぜながらも反則になる噛み付き攻撃はしない管狐。

 そんな人智を超えた怪生物バトルの微妙な騒がしさに、アルとノゾムが起きる事は無い。何せメケメケちゃんがシュッシュ

しまくって部屋に立ち込めている「良いから身を任せて楽にしてなフォッグ」をたっぷり吸い込んでしまったので、完熟レベ

ルの熟睡に至っている。まさに出荷待ち状態のたわわな果実達。

 シュバッ、ヌヌヌッ、と分かれる管狐とメケメケちゃん。お互いにまだまだ気力体力その他力は充分、三分ぐらいの激闘を

繰り広げてもなお闘志は衰えていない。

 スララララっと、尻尾を増やして扇状に展開する管狐。エネルギー体なので九尾モードにも容易になれる。ただし別に性能

が上がったりとか特殊能力が追加されたりとかはない。

 キュイィィンッと全身を金色に染め、触手を後光のように広げるメケメケちゃん。七大能力の一つ「いつだって傍から見て

いるぜステルス」の応用で体色を自在に変化させられるのでハイパーモードにも容易になれる。ただしやっぱり性能が上がっ

たりとか特殊能力が追加されたりとかはない。

 無駄に派手な威嚇手段には事欠かない両者だが、しかし双方共に決定打がない。お互いに何となく判っていた事だが物理的

な攻撃力が絶対的に足りていない。今更ながら、えっ!?私の攻撃力低すぎ!?とショックを受けている。軽く。

 しかしめげないメケメケちゃん、それならば!と管狐に注意を払いつつ摺り足(常時)で油断なく移動した先には、赤地に

白抜きのハート柄トランクス…手足を投げ出して超熟睡に叩き落とされている北極熊のぶっとい腰。

 管狐が見つめる先で、アルの腹の上によじ登ったメケメケちゃんは、その万能なりし秘密の七大能力の一つ「この手で今夜

お前をオトしてみせるテンタクル」によって、アルのトランクスの前ボタンを外し、隙間から触手を入れる。

「…は…、ふ…!」

 ピクンと身を震わせ、たちまち呼吸を荒らげ始めるアル。メケメケちゃんの触手はアルの引っ込み思案なムスコを刺激し、

包皮の先から先端を潜り込ませる格好で亀頭を弄り、その粘膜を通してメケメケちゃん秘密の七大能力の一つ「こことか感じ

るんじゃないのかジェル」を浸透させてゆく。

「んっ…、んぅっ…!」

 深い眠りに落ちていてもなお刺激で喘ぐアル。しかし体は弛緩し切って満足に動かないらしく、いやいやをするように首を

弱々しく左右に振るだけ。腕は投げ出されたまま指だけピクピク動くのみで、メケメケちゃんを引き剥がしに動いたりはしな

かった。

 秋風のように穏やかだった寝息は乱れ、メケメケちゃんが乗る白熊の腹は激しく上下しているが、見事に制するメケロデオ。

振り落とされるようなヘマはしない。

 熱っぽい声を漏らして喘ぐアルの上で、得意げにグニャンと胸(?)を張るメケメケちゃん。

 その様子を眺めていた管狐はメラメラと昔の少年漫画のように瞳に炎を灯す。どうやら火が付いたようである。元々火だが。

 負けじとノゾムの腹の上に駆け上ると、前足で器用にパンツのボタンを外し、開いた窓へスポンと顔を入れる。上体全部を

パンツの中にもぐりこませた管狐は、短い腕でノゾムのフニャッとしている陰茎を抱え、体を擦りつけ…。

「あ…」

 ピクンッと、ノゾムの体が軽く弾んだ。

 ピコンッと、埋まり気味の肉棒が勃った。

「は…、はっ…!んっ…」

 喘ぎはじめ、僅かに身を揺すって悶えるノゾム。管狐は抱える格好で包皮を下げて亀頭を露出させ、上下動に加えて鈴口付

近をチロチロと舐め始めている。

 この様子を見てピタリと止まるメケメケちゃん。

 こやつ、できる…!と評価したようで、負けてなるものかと三本に増やされるテンタクル。増えた一本目は陰茎へ螺旋状に

巻きついて適度に締め上げながらピストン運動し、もう一本はたふたふの玉袋に巻きついて睾丸を揉み、痛いような苦しいよ

うな気持ちいいような刺激を与える。

 一方管狐は社会の窓から上体を引っこ抜き、メケメケちゃんの姿を、そして小刻みにフルフル震えながら眉を八の字にして

喘ぐアルの顔を確認すると、対抗心を燃やして体を発光させ、部分的に実体化を解き、エネルギー体となった上半身をスポッ

とノゾムのヘソの穴に突っ込んだ。

「んっ!」

 大きく弾むノゾムの体。透過して上半身だけ体内に潜り込んだ管狐は、何と腸内で手先だけ実体化させ、腸壁越しに前立腺

へのアタックを敢行。人智を超えた性能をどうしようもない事に活用してみせる神話級である。

 全く落ち度が無いのに妙な勝負に巻き込まれた少年達は、起きられないのを良い事に好き勝手に弄繰り回され反応を競い合

わされる。もはや競技用具のような扱いである。

 ハァハァ激しく呼吸するアルとノゾムはたちまちの内に汗だくになり、肥えた体をじっとり湿らせた。それでも勝負が(メ

ケメケちゃんと管狐の間では)つかなかったようで、二匹はそれぞれの少年の腹の上ですっくと立ち、睨み合い、激しく視線

の火花を散らす。メケメケちゃんにはそもそも視線どころか目に類する物が明らかについていないのだが、とにかく散らす。

 次に二匹が動いたのは同時だった。

 シュルルッと伸びる触手。スチャッと伸びる前脚。両者が同時に掴んだのは、肥った少年達のパンツのゴム。

 体重があるふたりの腰から、苦労してパンツを剥ぎ取りにかかる二匹。少し経ち、かなり経ち、相当経ち、やっと脱がせた

時にはアルもノゾムもかいた汗が冷え切っていた。

 下半身スッポンポンにさせたメケメケちゃんと管狐は、一仕事終えた風体で、それぞれ触手と前脚で額をぬぐう。どちらも

汗はかいていないが気分的な問題であろう。ついでに言うとメケメケちゃんには額に相当する(以下略)。

 そしてまたまた睨み合うメケメケちゃんと管狐。決着の時きたれり。「良いから身を任せて楽にしてなフォッグ」が充満す

る室内にそんな空気が漂う。

 ヌノノノッ、シュバッ、とそれぞれ動く二匹。

 メケメケちゃんはアルの股の間にヌラララァッと移動する。二本の極太大腿の付け根で、プックリ肉付きがいいお徳用三角

コーナーに埋もれがちな陰茎は、すっかり濡れそぼって屹立している。

 メケメケちゃんはそこへ逆さまになって食らいつくと、根元まで飲み込んでギュッポギュッポとポンプのように動きつつ、

シュバァッと触手を伸ばして尻の割れ目のピンク色へ侵入させた。

「ひはっ…!」

 顔を顰める北極熊。アナルから腸内へ侵入した触手が、肛門を解しながら本数を増やしてゆく。やがて、ヌレヌレと粘液で

ぬめった触手は、やおらその根元をプクッと膨らませた。膨らみは根元から先端に向かって移動してゆき、北極熊の尻の穴に

達すると、押し広げて内へ入ってゆく。

「ん、お…、おふっ!」

 腸内にブジュウッと何かを注ぎ込まれ、呻き声を上げる北極熊。メケメケちゃん秘密の七大能力の一つ「まだまだ寝かせな

いぜ覚悟しなリキッド」が腸から吸収され、メケメケちゃんが咥え込んでギュッポっている陰茎がビクビクンッと硬度を増す。

「あ、あっ!あふあっ!ひゅっ!ふんぐ…、んぐぅ…!ひぎゅ…!はひぃ…!」

 腸内に入り込んだ触手が景気良くドブドブと「まだまだ寝かせないぜ覚悟しなリキッド」を注入しつつ前立腺を刺激する。

ピストン運動と吸着力で陰茎が刺激され続ける。休みなく加えられる陰茎への快感と、腹の中をかき回される耐え難い感触に、

堪らず喘ぎ声を上げるアル。

 全力疾走した直後のように激しく胸と腹が上下し、半開きの口からは熱い吐息と嬌声がひっきりなしに漏れている。薬物が

効いているとはいえ流石に我慢できないようで、満足に動けないながらも巨体を揺すって悶える。時折ビクビクンッと痙攣し、

豊かな被毛と肉が波打って揺れるが、メケメケちゃんは外れない。余裕のよっちゃんでジュッポジュッポとカウパーを啜り込

んでいる。

 一方で、管狐もまたノゾムの足の間に立って、その股を見上げていた。メケメケちゃんのような触手は無く、様々な合成物

質も作れない。不利かと思われた管狐はしかし、こんもり山のようになっている腹の手前でそそり立つ、根元が埋まっている

ので全長があんまり無い肉棒を見上げ、勝利を確信していた。

 管狐は脚の間…割れ目へと、果敢に頭から突っ込んだ。気合の表れか、金色に発光しているがこれといって特にパワーアッ

プはしていないスーパー管狐の姿で。

「いぎっ!」

 歯を食い縛ったノゾムの口から苦鳴が漏れた。それもそのはず、管狐はノゾムのクリサンセマム・ゲートを押し開いて、体

の上半分を突入させていた。なお、管狐の胴回りはバナナぐらい。それを受け入れられるノゾムは…お察し下さい。

「ひぐっ!おっ、き、ぃ…!きつ…い、よぉ…!」

 とはいえ流石に寝言で泣き言。呻くノゾムはモチモチした腹に手を当てて…。

「ひゅぐっ!」

 弓なりに背を反らした。アナルから中に上体を侵入させた管狐は、ウナギのようにウネウネと身をくねらせながら、

「あ、あっ!ああっ!あうあっ!」

 前立腺へパンチパンチパンチパンチ…。無防備な前立腺はパンチングボール扱い、執拗に連打を浴びせる管狐は、途中から

ノッてきたのか回転を上げている。

「ひあっ…!ひんっ、す、すごっ、いい…!」

 きつく瞑った目尻に涙を浮かべたノゾムは…、

「だ、めぇ…!おかしく、なっちゃ、うふぅ…!」

 寝言がかなりノッている。

 片やモゾモゾユサユサと、片やビクビクガクガクと、一方的になぶられ続けたアルとノゾムは…。

『ひっ…!』

 全く同時に、息を詰まらせて痙攣する。

 ドロリと双方の股間を汚す白濁液。なお、メケメケちゃんは精液を飲んでいるので、汚れはアルの方が少ない。

 メケメケちゃんと管狐の、途中から何やらゴール地点がおかしくなった勝負は、同着という結果に終わった。



 二時間後。

 テレビの前には、ロボがバトルするアニメの録画を眺め、並んでちょこんと座る小さな影が二つあった。

 激闘を終えたメケメケちゃんと管狐はお互いを認め合い、二匹の間には確かな友情が芽生えていた。川原で殴りあうのも少

年をイかせあうのも勝負は勝負という事で同質なのかもしれないしそうでないのかもしれない。もしかしたら雌雄同体と性別

が無い同士で気が合うのかもしれないしあまり関係無いのかもしれない。とりあえず二匹が良いのでよしとする。よしとする

しかない。

 その後方では、精魂尽き果てた少年達がぐったりしているが、戦いに犠牲は付き物である。南無。



 カーテンの向こうが明るくなる。妙に喉が渇き、北極熊は喉を鳴らした。

「う、ううん…」

 目を擦って身を起こしたアルは、スースーする股間を何となしに見下ろし…、

「!!!!!」

 全身の毛をボフッと逆立てて真ん丸になった。

(な…、え?なんっ…、ええっ!?)

 夢精。そう認識して素早く首を巡らせたアルは、ノゾムがまだ眠っている事を確認すると、慌ただしくティッシュを引き抜

いて手早く拭いたりなんだりした後、大急ぎでトイレに駆け込んだ。なお、餅狐の下半身はテーブル向こうに隠れて見えなかっ

たので、スッポンポンである事には気付いていない。

 一方、その物音で目覚めたノゾムは、のろのろと身を起こして何故か涼しい股間に視線を落とし…。

「!!!!!」

 視線に力が篭って思わず発火しそうになる。

(へ!?こ、これ…、これって…!?)

 夢精。そう認識して素早く首を巡らせたノゾムは、アルがトイレに行っている事を確認すると、大急ぎで処理に取り掛かる。

 なお、管狐は既にノゾムの中に戻っており、メケメケちゃんは換気扇の蓋もフィンもちゃんと元通りにして退室している。

アルもまさかメケメケちゃんが痕跡を残さず帰れるようになっている…どころか実は数日に一回むしゃぶりつきに来ている事

など考えてもいない。

 かくして、夢魔か何かのような所業を働かれた少年達は、自分達の身に何が起こったのか気付きもしないまま、日常に戻っ

てゆくのであった。

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