メケメケちゃん



C A U T I O N ! ! ! 


この作品にはマニアックかつ18禁表現が含まれています。
また、閲覧する事で本作品の序盤から登場する「その手のモノ」が苦手な方は特に気分が悪くなる恐れがあります。
閲覧中に発作、蕁麻疹、過度な拒絶反応等の症状が出た場合は、直ちに閲覧を中止し、記憶から消去して下さい。
以上の事をご理解なさった上で、「それでもオッケー!」という方はどうぞご閲覧下さい。

でも、蕁麻疹とか出ても責任持てないっスからね?









































中折れ式ハンディグレネードがカショッと音を立てて背筋を伸ばし、弾を加え込む。

賃貸マンションの廊下、ドアの右脇で壁に寄り、もはや鈍器と呼べる大型ゴム弾頭を装填したレッサーパンダは、自分の脇

に立つ二人の同僚に視線を向けた。

後方支援担当の若い人間女性が、麻酔弾が装填された拳銃を構えつつ「準備オーケー」と応じる。

もう一方、もっさりした被毛に全身を覆われている2メートルはあろうかという大柄な牛は、先がU字形になっている長柄の

得物、サスマタを両手で構えて頷いた。

視線をドアに戻したエイルはノブに触れ、その能力によってシリンダー内の機構に干渉した。

微かな音を立ててロックが解除された直後、エイルは素早くドアを開け、サスマタを手にしたハイランドキャトルが中に飛

び込む。

蒸し暑い夏の夜。室内に篭った湿気混じりの熱気が長い被毛を通して不快に肌を刺激する。

短い廊下の先で開いたままになっているドアを駆け抜けた牛は、雑然と散らかったリビングを素早く見回すと、間取り上は

寝室となっている部屋のドアへ駆け寄った。

すぐ後ろから飛び込み、牛とは違うドアやクローゼットの方を警戒しながら後に続いたエイルは、

「わ!?わわっ!?何だあんた…うわぁっ!?」

牛が入って行った寝室に目をやると、エイルはリビングのドアを閉めつつそちらへ向かう。

エイルの能力は条件付念動力である。物を動かすだけではなく、それに反発する力を感じる事で触覚に近い感覚を得る事も

できる。

触れた物の構造を解析するエイルの手は、壁に触れ、その内部まで不可視の指で触れた事で、トラップの類が無い事を確認

していた。

想像以上に…というよりも、もはや意外に感じる程に無警戒で、エイルは小さく首を捻った。

(もしや、部屋を間違って隣の住人宅に侵入してしまったのでありましょうか?)

もしもそうだとすればシャレにならない失態なのだが、エイルは表情一つ変えずに寝室を覗き込んだ。

散らかり放題だったリビングとは打って変わって、寝室は綺麗に整頓されていた。

周囲の壁は棚で埋まり、そこにはビーカーやガラスの水槽が並んでいる。

寝室の窓際に位置するベッドでは、その上に立つ大柄な牛に、小太りなシベリアンハスキーがサスマタを突きつけられてひっ

くり返っていた。

首をサスマタで捕らえられたまだ若いハスキーは、就寝中だったのかトランクス一丁というあられもない格好だが、エイル

はこの程度の事では動揺を見せない。

改めて棚を見回したエイルは、踏み込むのはこの部屋で間違い無かった事を確認する。

棚に置かれたガラスケースやビーカーには、普通に生活していたのでは見られない生物が入れられている。

角が七つあるカブトムシに、刻々と色彩を変えてゆく虹色のトカゲ。

アンコウのような触覚を額から生やした出目金に、体長30センチはある肌色のイモムシ。

いずれも資格を持たない一般人の入手や売買が禁じられている、危険生物指定を受けた生き物達である。

「調停者だ。無資格での危険生物取扱い、売買の容疑でお前を捕縛する。大人しく従えばよし、抵抗するなら…容赦しねぇ…」

ベッドの上に立ってサスマタで首を捕らえた相手を見下ろしながら、牛はドスの利いた低い声で告げた。

長い前髪の奥から睨みつける鋭い眼光に射竦められ、小太りのハスキーはあうあうと喘ぐ。

入念に室内を見回し、攻撃性の強い生物が居ない事を確認したエイルは、入り口で張っているバックアップの女性と、マン

ションの外、屋上から垂らしたロープにぶら下がって壁に張り付いている同僚に連絡すべく、襟元の無線に手を伸ばす。

が、操作を開始するよりも早く、エイルは襟から手を離しつつ、ゴム弾が装填されたグレネードを部屋の隅に向けた。

室内のビーカーや水槽の温度を一定に保つ機器に繋がる、管理と電力供給を賄う四角い箱型の装置と、口まで物が詰まって

いっぱいになっているごみばこ。

その陰に、ベッドの下の狭い隙間から這い出した何かがするっと隠れたのが目の隅で捉えられた。

牛からは死角になっていたが、気付いたエイルはグレネードを構えながら部屋の隅へとじりじり寄る。

「あぁっ!?だ、だだだダメだっ!逃げるんだメケメケちゃぁあああああんっ!」

鼻にかかった声を上げたハスキーを睨みつけながら、牛はゴツいブーツを履いた右足で、トランクス越しにその股間をぐしっ

と踏む。

「ひぐっ!?」

硬い靴底が柔らかなソコに押し当てられると、ハスキーは声を飲み込んだ。

「妙な真似しやがったら…、こいつを潰してやる…」

「ひぃいいいいいいいいいいいいっ!?」

ソコにググッと体重をかけられ、堪らず悲鳴を上げるハスキー。

警戒しながらゆっくりと部屋の隅に寄り、横手に回り込んで陰を覗いたエイルは、そこに隠れてプルプル震えている小さな

影を、その両目に映して困惑した。



首都の守護を担う国内最大の調停者チーム、ブルーティッシュの本部である巨大ビルディング。

その地下にあるトレーニング施設で汗を流した白熊は、地上の熱気とは打って変わって涼しい、冷房の利いた廊下を歩いて

いた。

プールで体を動かしてきたアルは、ランニングシャツに膝上までの紺色のハーフパンツという涼しげな格好。

歩きながら濡れた頭に両手をやり、タオルでワシワシと擦っていたアルは、行く手に細面の人間の男の姿を認めて片手を上

げる。

「お疲れっス!今日はもう上がりっスか?」

更衣室のドアの前に立ち、ノブに手をかけたまま声に首を巡らせた細面の人間の男は、「おう」と応じて肩を竦めた。

「人手はだいぶ増えたってのに、仕事はぜんっぜん減らねーのな」

「仕方無いっスよ。オレと違って指揮官なんスから」

(お前程は忙しくねーんだけどな…)

と、快活に笑うアルの顔を眺めながら、アンドウは心の中で呟く。

昼は学校へ通いつつ、夜はあちこちの任務に志願している上に、連日のトレーニングと専用新武装のテスト及び調整。

アルの多忙さはアンドウのそれを越えているのだが、本人はそれに気付いていないのか、疲れた様子も見せなければ、文句

一つも口にしない。

もっとも、学校で過ごす時間の多くは睡眠時間になっているのだが。

「さっきエイル達も帰って来てたな。駐車場で一緒になった。危険生物の捕縛に行ってたらしいが…」

アンドウは言葉を切ると、ドアノブから手を離して後退した。

内側から捻られたノブが回転し、ドアを押し開けて出て来たのは大柄な牛獣人。

シャワーを浴びたのか、長い被毛が湿っているハイランドキャトルに、アンドウとアルが声をかける。

「お疲れっス、バスクさん」

「よう、お疲れ」

大柄な牛はアンドウの顔を見下ろし、次いで自分よりもさらに背の高いアルに視線を向けると、フンと鼻を鳴らして一言も

無く歩き出す。

廊下を歩いてゆく大柄な牛の背中を見遣りながら、アンドウは軽く顔を顰めた。

「相変わらず感じわりーの…」

「まだ来たばっかりで馴染んでないだけっスよ」

不快げなアンドウと、さして気に留めた様子も無いアルは、別のドアが開く音を耳にして首を巡らせた。

「お疲れエイル」

「お疲れさんっス〜」

「お疲れ様であります」

女子更衣室から出て来たレッサーパンダは、ボディシャンプーの匂いをさせながら二人に歩み寄る。

そのむっちりした胸の前に両手で抱えられている小動物用ケージを見遣ったアンドウは、「何だそれ?」とエイルに尋ねた。

ネコ等を入れて運ぶための半透明なそのケージは、しかし濃い黒色で、中が良く見えない。

「捕縛した危険生物であります。珍しいタイプなので、解析のために自分の一時預かりとなったのであります」

「へぇ。どんなんスか?」

興味を覚えて身をかがめ、ケージに顔を近付けたアルの前で、エイルは蓋を開けた。

『…!?』

身を引くアンドウと目を丸くするアルの前で、エイルは蓋を開けたケージをぐいっと突き出した。

「遺伝子操作されたシーアネモネタイプの危険生物であります。水中以外でも支障なく活動できる上に、乾燥にも強いらしい

のであります。実に興味深いでありましょう?」

「きもっ!むっちゃきもっ!こっち向けんな!」

薄気味悪そうに顔を顰めて声を上げるアンドウの前で、目を皿のようにしているアルはまじまじとソレを見つめた。

イチゴ色のイソギンチャク。白熊はソレをそう認識した。

高さは25センチ程、下部の直径も同程度の台形のシルエット。

側面はトタンのように波打った形状で、まるで皿にあけたプリンのようにも見える。

本体の目に痛い赤色に加え、頂上部の口の周囲に生える太さ3センチ程の20本を越える触手はオレンジ。

鮮やか…というよりはいささか毒々しいカラーリングである。

「かわいいでありましょう?」

「かわいくねーよ…!」

一歩前に出るエイルと、じりっと後退するアンドウ。

「そうでありますか?この愛くるしさが理解できないとは…。アンドウさん、可哀そうであります」

「同情するような視線向けんな。なんかムカつくから」

「メケメケちゃん。挨拶するでありますよ」

「めけめけちゃん?」

「メケメケチャン?」

アンドウとアルが揃って首を傾げつつ、口々に妙な響きの言葉を発する。

「可愛い響きでありましょう?飼い主がつけたこの子の名前であります」

エイルが抱えたケージの中で、イソギンチャクは直径3センチ程の触手をワサワサと揺らしながら、ズングリした体全体を

前傾させ、首を傾げたままのアンドウとアルにおじぎした。

「ペコってしたっス…」

少々驚きながら呟いたアルの後ろで、アンドウは薄気味悪そうに顔を顰めている。

何故こんなやるせない響きの名前をつけたのかも疑問だが、そもそもこういう生物を飼おうと考える者の気が知れない。

自分ならば金を払ってまで飼いたいとは絶対に思わない。そんな事を考えるアンドウは、不快げに顔を顰めたまま続けた。

「で、まがりなりにも危険生物なんだろ?ちゃんと閉じ込めとけ」

「あ。そういえば危険生物なんスよねコレ?危険度どのくらいなんスか?」

「精密検査がまだなので推定の段階でありますが、おそらく第八種であります」

エイルがそう応じると、アルは「ん?」と首を捻った。

「はち?八種って…、そんなのあったんスか?」

「お前、調停関連書ちゃんと読めよ…。この国の基準での最低ランクだよ。例えるならまぁ、ゴミ捨て場にカラスが一羽居る

ぐれーの危険度」

耳慣れないランクに首を傾げた白熊に、相変わらず距離を取っているアンドウが説明する。

「オレ、担当するの二種から四種ぐらいが主っスから。馴染み無いっス…」

「最低でも猫科の大型肉食獣クラスかよ…。まぁ切り込み役だしな。平和な任務じゃかり出されねーか。結構居るんだぜ?こ

ういうのを違法に取引してる連中はよ」

イソギンチャクに視線を戻したアルは、サワサワと触手を揺らしているその姿を眺めながら続けて尋ねる。

「でも、本当に危険なんスかコレ?なんか、海に放せばそのまま他のイソギンチャクに紛れて、普通に生きてきそうな気もす

るんスけど…。でなければ水族館で暮らすとか…。カラスぐらいの危険性ならほっぽっといても大丈夫そうっスけど…、毒で

もあるんス?」

「ばーか。危険生物の種別認定は、攻撃性や毒の有無ばっかが基準じゃねーんだっつーの」

楽観的な意見を述べたアルを、アンドウは軽くたしなめた。

「陸上で普通に生息できるイソギンチャク?そんなの自然界にゃ居ねーよ。しかも、どうなってんのかは知らねーが、エイル

の言葉を理解する程度の知能がある。判るか?人為的に産み出されたコレが、自然界に放たれた後どういう風に変化するか、

どういう変化を周りに与えるか、ちょっと予想できねーだろ?ほいほい野放しにゃできねーんだよ」

遺伝子操作で産み出された害虫駆除用の昆虫が、製作者の意図に反して短期間で進化し、人間サイズに成長して地下に巣食

うというパニック映画を思い出したアルは、なんとなく理解できて「なるほどっス…」と頷いた。

「で、解剖でもすんのかソレ?」

「いいえ、簡単な検査だけであります。危険で無いと判断できれば、後は好きにして良いと言われたので、その後の事はそれ

から考えるであります。自分の部屋に同居させても良いでありますし」

「同居ぉっ!?」

信じられない、といった様子で声を上げたアンドウに、エイルはさも当然だと言わんばかりに胸を張る。

「可愛いでありましょう?任務で疲れた皆さんも、メケメケちゃんを見ればきっと癒やされるであります」

「癒やされねーっつーの…」

呆れたように呟いたアンドウは、「そろそろ着替えてくる。んじゃな」と、話を打ち切り更衣室のドアを潜った。

取り残されたアルは、エイルと並んで歩きながら地上へ向かった。

蓋を閉めたケージの中で蠢くメケメケちゃんのシルエットに、時折珍しげな視線を向けながら。



明くる日の午後。メケメケちゃんは攻撃性も薄く、有害な毒なども持たないらしい事が判明した。

そして、エイルの強い要望もあり、今後は居住区内の彼女の部屋で飼育される事となった。

それからというもの、医務室や談話室など、連日様々な場所へ連れて行っては癒やしを振り撒こうとするエイルだったが、

すこぶる不評であった。

「アレを可愛いって評価するエイルの気がしれねーよ…」

本部ビル上部に位置するレストランで、アンドウはドライカレーをつつきながらこぼした。

なお、レストランへは他のエリアにさきがけ、いち早くメケメケちゃんの連れ込みが禁止された。

むしろエイルの部屋からの持ち出し自体を禁じて欲しいと切に願っているアンドウに、向かいの席でヤキソバをモリモリ食

べていたアルが応じる。

「水槽なんかで普通のを飼ってるひととかは居るらしいっスよ?」

「そりゃあ共生するクマノミなんかと一緒にだろ?単体で、しかもあんなどギツい色でお徳用サイズだぞ?」

「良いじゃないっスかお徳用。何だって多い方が良いっス」

「はいはい。そんな価値観してっから特盛りでぶっちょになんだよ」

「ひでぇっス!」

頬を膨らませたアルを無視し、アンドウは逸れかけた話を戻す。

「おまけに地上で活動するヤツなんか飼う気しねーだろ普通…。気味わりーだけだっつーの…」

「そんなに気持ち悪いっスか?」

「…そう言えば、お前はあんまり気味悪がんねーのな?」

「食えって言われればゴメンっスけど、見てるだけならどうって事ないっス。それに、見てると思い出すんスよねぇ…、ネネ

さんに連れてって貰った南の海…」

三年ほど前、アルがまだ中学生だった頃、海外出張ついでにネネが南国の島へと連れて行ってくれた事がある。

そこで潜り、眺めた珊瑚礁の景色には、色とりどりの珊瑚の他にもカラフルな魚やイソギンチャクの姿があった。

その時の楽しい記憶があるせいか、アルにはメケメケちゃんを忌避する気持ちが湧いてこない。

「お前、時々変なトコで寛容なのな?」

「変スかね?」

首を傾げたアルは、山盛りのヤキソバを食い終えると、メロンソーダをガブッと飲み干して立ち上がった。

「んじゃ、調整あるんでそろそろ地下降りとくっス」

「おう。ごくろーさん」

片手を上げたアンドウを残し、アルはのしのしとレストランを出てゆく。

その背を見送ったアンドウは、東護から帰還した後のアルに生じている変化に思いを馳せる。

計測した最新のデータによれば、現在216センチの203キロ。

帰還直後はかなり脂肪がついていたが、あれからそれなりに絞れている。

復帰してからのアルは、肉体の成長もさながら、精神面でも大きく成長している。

普段の振る舞いはそれほど変わらないが、任務中にはその変化が実感される。

以前と比べて落ち着きが出ており、戦闘中にも冷静に頭を働かせる余裕が生まれ、持ち味の柔軟性を活かせる変化が。

そして何より、調停者としての意識が変化しているように、アンドウには見えていた。

「能力の覚醒が影響してんのか…、それとも、春先の事件で知り合ったダチが影響してんのかね…?この変化には…」

呟いたアンドウは、コップを手にとって冷たい水を啜った。



「調子はどうだ?」

長机を挟んでプロジェクターを眺めつつ、新兵器の調整経過について意見交換をしていたアルと、白衣を着込んだ技術者達

は、気密ドアを潜って部屋に踏み入った大柄な虎を見遣った。

立ち上がって一斉に頭を下げる技術者達と、「なかなか進まないっス…」と顔を顰めるアル。

歩み寄った白虎に、白熊は困り顔で笑いかけた。

「って言っても原因はオレなんスけどね。レリック適性低いっスから」

「まあ、そこは仕方ないだろうな。多少手こずるのは想定内だから気にするな」

プロジェクターを見遣って目を細めたダウドは、「ほう…」と声を漏らす。

「予想よりだいぶ進んだな?感心感心、いつのまに…」

リーダーである彼の所へも調整の進捗状況報告は随時上げられているのだが、サブリーダーのネネに大半のデスクワークを

押し付けてホイホイ現場に出張っているせいで、ダウドは全くと言っていいほど書類に目を通していない。

例えたまたま机についていたとしても、ろくに見もせず決済するため、ダウドの判が押してあっても内容を知っているかど

うかは別問題となる。

「年内の実用化を目処にしていたが、このペースなら秋には実装できるんじゃないのか?」

意見を求められた年配の責任者は、「報告読めよ」と言いたいところを大人の対応でグッと堪え、特に重大な欠陥などが見

られない限りは、ダウドの見解通り、予定より三ヶ月ほど早く実用化に漕ぎ着けられそうだと述べるに留める。

「それもこれも、アルが熱心なおかげですな。毎回文句一つ言わず、時に長時間に及んでもしっかり調整に付き合ってくれて

おりますので」

年配の技術者に誉められて「えへへ…!」と頭を掻いたアルを、ダウドは目を細めて見遣る。

「ふむ。これは、朗報を持って来てやった甲斐があったな」

呟いたダウドは、訝しげに「朗報?」と首を傾げたアルに告げる。

「休暇だ。急な事だが、お前が明日参加する予定だった任務は中止になった」

「え?中止って…護衛任務が?特自の朝田准将のがっスか?」

重要な任務だったのだが、急な中止を告げられたアルは戸惑いの表情を浮かべる。

「准将の湾岸視察自体が急遽取りやめになった。例のミョルニルを警戒しての事だろうな。一時期程じゃあないが、政治家と

要人の暗殺は続いている。先週もどこぞの新党の若いのが殺されたろう?犠牲者の影響力もピンキリで、暗殺対象の選定基準

がさっぱり判らんが、准将も狙われる可能性は高い」

アルはアサダという特別自衛隊の准将の顔を思い浮かべる。

筋骨逞しい壮年の獅子で、叩き上げの准将は調停者に対しても理解が深く、昨今持ち上がった一般非公開の法令改正…調停

者の発言力が強まる内容の調停法改正案にも賛成の意向を示している。

もちろん犯罪組織にとっては面白くない改正案である。推進派である准将が暗殺のターゲットにされる可能性は、ダウドが

懸念する通り非常に高い。

初経験となるはずだった要人警護が中止になり、少々残念がっているアルに、ダウドは笑いかけた。

「そんな顔するな。後々嫌になるほどやらせてやる。とりあえず、明日の所は調整以外に予定も無いから、空いた時間は休ん

でろ。ネネも休ませたがっていたからな」

「え?手が足りないトコ手伝うっスよ?学校も休みっスから…」

「なら勉強でもしとけ」

「えぇ〜っ!?」

嫌そうな顔をしたアルに、ダウドは豪快に笑いながら続けた。

「がははははっ!まぁせっかくのオフだ。過ごし方はとやかく言わんから好きにしろ。明日は調整が終わったら、たまには仕

事の事を忘れてのんびり過ごせ。勘が鈍るのが嫌なら軽くトレーニングでもしておけばいい」

「うス…」

突然降って湧いた休暇に戸惑いながら、アルは考える。せめて丸一日オフならば、東護へ飛んでゆく所なのに…、と。



その夜、自室に戻ってシャワーを浴び、タンクトップとトランクスのみの格好になったアルは、就寝しようか夜更かししよ

うか考えながら、リビングルームのソファーに腰を降ろした。

緊急呼び出しが無い限りはのんびりできるのだが、しばし休暇をとっていなかったせいか、時間をどう潰せば良いか判らず

に悩んでいる。

明日の日中はプラモデルを買いに行き、組み立て三昧で一日過ごそうと予定を立てたが、せっかくの休日前に早く寝てしま

うのも勿体無い気がしている。

散らかり放題の部屋を眺め回したアルは、テーブルの上に置いてある携帯に目をやった。

たまには迷惑にならない程度の長電話をしよう。そう考えて携帯を手に取ったアルは、表示されている時間を目にして呻く。

(この時間だと…アケミはまずいっスね…)

もうじき午前一時。深夜もいいところである。恋人にかけるのは躊躇われた。

次に思い浮かんだのは厳つい熊の顔。だが…、

(…もうじき高校総体っス…。稽古で疲れて寝てるっスよね…)

やはり時間がネックになり、かけるのは止めておく事にする。

次いで思い浮かべたのはポテっと太った狐の顔。同業者の彼ならばと思ってコールすると、吹き込まれている音声が再生さ

れた。

『ごめんなさい、現在取り込み中です。お急ぎの御用時の場合は、「ぴーっ」ていう音の後にご用件をどうぞ。こちらからか

けなおします』

(調停中っス?それともミーティング中?…どっちにしても急用じゃないんスから、伝言入れるのもちょっと…)

仕事中らしい相手の携帯に、声が聞きたくなったから電話をくれと吹き込むのも問題である。

いずれの相手も少々図々しいぐらい気にもとめないのだが、そこで強引に出られないのがアルである。

アルビオン・オールグッド、17歳。

生活サイクルが一般人とズレがちな上、友達が少ないが故にどこまで馴れ馴れしくして良いかいまひとつ判らず、付き合い

方がどうにも不器用になってしまう白熊であった。

電話を諦めてソファーに携帯を放り出したアルは、「はぁ〜…」と深く息を吐く。

寝るか、録画しておいたアニメを観るかしようと考え、寝室に向かうべく腰を上げた白熊は、ノックの音に首を巡らせた。

「あ、今開けるっス」

てっきりアンドウだと思ってドアを開けたアルは、珍しく夜中にやってきたレッサーパンダの顔を見て首を傾げた。

「エイルさん…、珍しいっスね?」

「遅くに失礼するであります。お願い事があってお邪魔したであります」

ペコッと頭を下げたエイルの両手には、例のケージ。

「明日はお休みとお聞きしたでありますが、間違い無いでありますか?」

「そうっスよ。…で、何スかねお願いって?」

頷いたアルに、エイルはケージを差し出した。

「実は、メケメケちゃんを一日預かって欲しいのであります」

「へ?」

目を丸くしたアルに、エイルは先を続けた。

「自分とアンドウさんは都市防衛意見交換会に出席する為、北街道へ出向する事になっていたのであります。ところが先程、

メケメケちゃんを連れて行く事は許可できない、とサブリーダーにダメ出しされてしまったため、非常に困っていたのであり

ます」

(それは当然許可されないっスよね…。たぶん飛行機だし、一応危険生物なんだから機内持ち込みが既にまずいっス…)

などと思いつつ、アルはレッサーパンダに尋ねてみた。

「何でオレなんスか?生き物の世話とか、あんまり詳しくないっスよ?」

「皆さんに断られてしまいまして、こうしてアルビオンさんにお願いに上がったのであります。食事の用意以外には特にする

事は無いのでありますが…、ダメでありましょうか?」

アルは少し考えた後、首を縦に振った。

「オレでいいなら引き受けるっス。けど、エサの事とか気をつけなきゃいけない事とか、もちょっと詳しく教えて欲しいっス。

こういうのまるで判んないっスから…」

「助かるであります。では、少しお時間を頂くであります」

頭を下げたエイルがケージの蓋を開けると、イチゴ色のイソギンチャクも、お辞儀をするように斜めになっていた。



それから二十分ほど、エイルはメケメケちゃんの世話の仕方についてアルに説明した。

片付けた(単に上の物を除けた)テーブルの上に置かれたメケメケちゃんは、何を思っているのか、テーブルの上をのろの

ろゆらゆらと終始歩き(?)回っていた。

「メケメケちゃんは寂しがりやさんなので、できれば同じ部屋に居るようにしてあげて欲しいであります」

「うス。たぶん部屋でゴロゴロして過ごすっスから、なるべく傍に置いとくっスよ」

エイルが礼を言って帰って行くと、アルはテーブルの上をゆらゆら散歩しているメケメケちゃんに視線を向ける。

「鳴かないから静かだし、居てもあんまり気になんないっスねぇ…」

聞いた限りでは手間もかからないらしい上に、エサの類もエイルが置いて行った。

世話と言っても気楽な物だと感じたアルは、メケメケちゃんが入っていたケージを持ち上げ、テーブルに置く。

「そろそろ寝室行くっスよ?お前も寝床に入るっス」

アルの言葉を理解したらしく、メケメケちゃんはノノノノノッと机の上を這い進み、大人しくケージに収まった。

「本当に言葉が解ってるんスねぇ…」

感心して呟いたアルは、ケージを手にして寝室に向かった。



最近とんと使っていなかったテレビのモニターをウェットティッシュで拭ったアルは、撮り溜めしておいたアニメを観るべ

く電源を入れた。

毎週観ているのだが、まだ眠くならないので観返してみようと考えたのである。

ベッドの上にあぐらをかき、オープニングが流れ出したモニターを眺めていたアルは、ベッドサイドのテーブルにふと目を

やった。

そこにはコーラのボトルや、神代の当主の影響で食すようになったシャケトバの袋と共に、メケメケちゃんのケージが置い

てある。

そのケージのハッチには、ペタリとひっつき、触手をウネウネさせているメケメケちゃんのシルエット…。

「…もしかして…、お前もテレビとか観るんスか?」

まさかと思いつつも声をかけたアルは、メケメケちゃんが頷くように身を傾けた事に驚愕する。

「マジスか!?え!?まさかこのアニメも観たりしてたんス!?」

メケメケちゃんが再びゆらりと頷くと、アルは驚きつつもぐっと身を乗り出した。

「観てたんスかっ!?ひょっとしてコレ好きだったりするっス!?」

またもやヌロンと頷くメケメケちゃん。アルは驚愕しつつも、仲間意識と喜びを胸の内から沸きあがらせる。

「で、出て一緒に観るっスか!?」

ヌラッと頷いたメケメケちゃんのケージに向かって手を伸ばしたアルは、ケージの蓋をあけつつ、コーラとシャケトバを載

せていたお盆をベッドに乗せ、そこにメケメケちゃんを下ろした。

初めて直に触れたが、ひんやりと冷たいその体は、しかし想像していたようなベタベタした感触は無く、表面には手が微か

に湿る程度の水気しかない。

ぱっと見、目はどこにも見当たらず、どうやって観ているのだろうかという疑問が頭をもたげたが、考えても判りそうにな

かったので棚上げにしたアルは、メケメケちゃんが乗っているお盆にシャケトバを数本乗せる。

「ひとの食べ物はたいがい大丈夫なんスよね?」

体を曲げて頷いたメケメケちゃんは、触手でからめ取ったシャケトバを触手の中央、頂部の口に運ぶ。

ベッドの上にイソギンチャクと並んでアニメを観るアルは、すこぶる嬉しそうである。

アルビオン・オールグッド、17歳。

友達が少ないが故に、意思疎通が図れる無口な謎生物と一緒にテレビを観る事すらも非常に嬉しく感じる白熊であった。

「もしかして、飼い主と一緒に観てたんス?」

アルの問いに頷いたメケメケちゃんは、くたりと触手を垂れさせる。

何やら悲しんでいるらしい事を察したアルは、慰めるように言葉をかけた。

「大丈夫っスよ。攻撃性の高い危険生物は取り扱ってなかったし、初犯だったらしいっスから、そんなに重い刑はあてがわれ

ないはずっス。きっとすぐ出て来れるっスよ。ね?」

ゆらりと頷いたメケメケちゃんに、アルは笑いながら頷き返した。



喜んでいるのか、触手をサワサワと揺らしているメケメケちゃんと一緒に午前四時までアニメを鑑賞したアルは、

「もうこんな時間っス…。そろそろ寝るっスよぅ…」

ショボショボになった目を擦りながら、メケメケちゃんをサイドテーブルの上に戻す。

テレビの電源を切り、部屋の灯りを落としてベッドに乗ったアルは、蓋を開けたままのケージに顔を向けた。

「お休みっス〜」

息苦しいだろうと考えたアルによって、蓋を開けたままにされたケージの中から、メケメケちゃんはワサワサと触手を振っ

て応じた。



そして、就寝から一時間後。

「クカ〜…、ス〜…、クカ〜…」

トランクス一丁でベッドの上に仰向けに横たわり、胸元をモソモソと掻きながら眠っているアル。

その傍のテーブルの上、蓋が開いたケージの中でフジツボ状になって眠っていたメケメケちゃんは、フルルっと身を震わせ、

収納していた触手を伸ばして背伸びらしき動作を見せた。

しばし静かに触手をゆらしていたメケメケちゃんは、どうやらアルの様子を窺っているらしい。

が、やがてサイドテーブルからボテッと床に落ちると、床をノノノノノッと這い進んだ。

口を半開きにし、あまつさえヨダレすら垂らしながら気持良さそうに寝息を立てているアルに、音も無くベッドに這い上がっ

たメケメケちゃんが接近する。

全く起きる気配の無い白熊のトランクスに、オレンジ色の触手が伸びた。

ぽっこり出っ張ったフカフカの白毛に覆われた腹に、ゴムが伸びてぴっちりかかったピンク地に黄色い水玉柄のトランクス。

その上端部にするりとかかった触手は、通常時の四倍以上、1メートルほどに伸びている。

そろそろと下着がずりおろされても、熟睡しているアルは目を覚まさない。

下げられたトランクスはしかし、仰向けに寝ているアルの尻尾に引っかかり、さらに体重がかかって押さえられている事も

あって、完全には脱がせられなかった。

しばし思案するようにゆらゆらと触手を揺らしていたメケメケちゃんは、アルの出っ張った腹、下腹部の段がついている位

置にトランクスのゴムを引っ掛けて止め、触手を離す。

そしてアルの大きな尻の下に平べったく変形させた触手を滑り込ませると、しばしウネウネと蠢かせた後、白熊の短い尾を

尻尾ホールから外し、少しずつずらす様にしてトランクスを下げ始めた。

そして約三分後、アルのトランクスはベッド脇の床にパサリと落ちる。

ベッドの上には全裸にされてなおクークー眠っているアルと、一仕事終えて満足気に触手をくねらせているメケメケちゃん。

気持ち良さそうに眠り続けているアルの太腿に這い上がり、メケメケちゃんは触手を伸ばす。

ぽっこり膨れた腹の下、蓄積された脂肪でむちっと三角に段がついた下腹部のさらに下で、被毛と脂肪に埋もれる形になっ

ている体格にそぐわぬ小振りなソレに。

先端まで皮をすっぽり被ったそれを、オレンジの触手がやけに慎重な動きで撫でる。

かなり小さいが、どうやらソレは目的の部位に間違い無さそうだと判断したメケメケちゃんは、太腿の付け根まで這い進み、

コロッと転げて逆さになりつつ、触手の中央にある口でソコを咥え込んだ。

「んっ…」

小さく呻いて顔を顰めるアル。だが、股間に刺激を受けてもなお、まだ目を覚まさない。

白熊の小振りなソレを咥え込んだメケメケちゃんは、体全体をポンプのように蠕動させ始めた。

股間を覆うヒヤリと湿った何かに逸物を摩擦され、かつ吸引される感覚。

しばし「ん…、む…、う…!」と呻いていたアルは、薄く目を開けてベッドに手をつき、身を起こす。

視線を向けた股間には、逸物があるらしき場所に逆さまになってくっついているイソギンチャクの姿。

「え…?…あ!ちょ、ちょっと!?何してるんスかお前っ!?って、あふっ!」

ギュ〜っと陰茎を吸われ、息を漏らしたアルは、メケメケちゃんを引き剥がそうと、その体に手をかけた。

伸ばした触手で腰に巻きつき、秘所だけ覆うその姿は、さながら派手な紐パンのよう。

簡単に引き剥がせると思っていたアルだったが、しかし上手く行かなかった。

メケメケちゃんを引っ張ると、飲み込まれた陰茎が一層強く吸われる上に、軟体の体は先程よりも多く湿り気を帯び、掴ん

だ手がヌラリと滑る。

「あ…!ちょ…!ほっ…!んぅっ…!や、やめ…!ダメっスぅ!」

メケメケちゃんに吸い付かれたアルの肉棒は、覚醒前からすでに半勃ちの状態であったが、激しく吸引され、蠕動摩擦で刺

激された事で、小さいながらも怒張して硬くなっている。

ひとの唾液にも似た体液を分泌し、アルの逸物を飲み込んでいるメケメケちゃんは、エイルも知らなかった事であるが、実

は「こういった事」を目的に品種改良された生物であった。

おまけに、何でも食べるが大好物は精液。

かつての主とのむつみあいで磨き上げたテクニックを披露し、アルの精液を頂こうとするメケメケちゃん。だがこの行為、

恩返しでもある。

ここに来てからというもの、悲鳴を上げられ、薄気味悪そうな視線を向けられてきた自分を嫌わず、アニメを見せてくれた

上に慰めてさえくれた太った白熊。

彼にどんなお返しができるだろうかと考えたメケメケちゃんは、かつての主にしてあげて喜ばれた事を、彼にもしてあげよ

うと思ったのである。

しかしそんな健気な思いも、寝込みを襲っては美しさ半減である。

アルにしてみれば正体が良く判っていないメケメケちゃんが、自分のソコをエサと勘違いして捕食しようとしているのでは

ないかと感じており、気が気でない。

必死になって剥がそうとするのだが、股間を集中的に刺激され、背筋を電気にも似た刺激が這い上がり、抵抗にも力が入ら

ない。

「ちょっ…と!ダメ…、ダメっスぅ…!そ、ソレは一口サイズだけど…、食べ物じゃ…な…!」

震える声で中止を訴えるアルは、ビクリと背を逸らした。

メケメケちゃんに咥え込まれたアルの逸物が怒張し、ビクンと震える。

「んっ…!ふあぁああああっ!」

体をブルブル揺するアルの股間で、メケメケちゃんは放出された精子を吸収する。

柔らかな口の内側で擦るようにして、肉棒を綺麗に舐め取られてゆくアルが、「あっ!あっ…!」と声を上げながら身を震

わせる。

ご馳走を飲み込んだメケメケちゃんは、しばし動きを止めた。

はぁはぁと荒い息を吐いているアルは、首を起こして股間を見遣る。

「ひょっとして…、食べようとしてた訳じゃないんスかね…?」

メケメケちゃんがあいている触手を揺らして肯定するようなしぐさを見せると、アルはほっと息を吐いた。

直後、顔がカーッと熱くなる。

「だ、だだだだダメっス!そんなとこ触っちゃダメっス!…っていうか出しちゃってゴメンナサイ…」

今度こそ除けようとしてメケメケちゃんに手を伸ばしたアルは、

「んひっ!?」

再びメケメケちゃんが蠕動を始めた事で、伸ばした手を宙でビクンと震わせた。

「ちょっ!?待っ…!い、今イったばっかで、そ、そん…んぁああああっ!」

久々に口にした精液がお気に召したのか、再度精液搾取を試みるメケメケちゃん。

強力な吸引と激しい刺激で、アルはベッドの上で体を仰け反らせながら喘ぐ。

「あっ!あぁああっ!ひぐっ!ふぇ…!あっ!んぐぅうううっ…!」

ジュブジュブと音を立ててアルの肉棒を愛撫するメケメケちゃんは、当初の目的であった恩返しの事は頭の隅に置き、もは

や精液を味わう事に主眼を置いている。

萎えることも許されず、勃起したまま逸物を愛撫されたアルは、下腹部に強い疼きを覚えながらのた打ち回った。

が、しっかりとくっついた軟体のメケメケちゃんは、アルが寝返りを打とうが体を丸めようがおかまいなしで好位置をキー

プし続ける。

うつ伏せになってもなお股間に吸い付いて離れないメケメケちゃんから、逃れる術はもはや無いと悟ったアルは、涙目にな

りながら枕を抱き込んで耐えに入る。

「くふ〜っ!くふぅ〜っ!んっく…!うぅうううっ!」

枕を抱えてゴロゴロのた打つアルの股間で、メケメケちゃんは小振りなソレを強く吸いつつ締め上げた。

「あっ…、あひぃいいいいいっ…!」

再びブルブルと体を震わせ、メケメケちゃんの中に精液を放つアル。

ビュクッ、ビュクッと吐き出されるその量は、二回目ともあってやや控え目。

しばし脱力した後、ゴロリと仰向けになったアルは、休み無く刺激されて痺れと痛みすら感じ始めた股間に目をやる。

「そ、そろそろ…、離して欲しいっス…!」

肩で息をしながら訴えたアルだったが、二度目の射精が控え目な事もあって、餓えていたメケメケちゃんは満足しなかった。

当初の目的であった恩返しの事はもはや完全に意識の外。いまや精液を頂く事しか頭に無い。

うねっと伸びた触手が、アルの太い両脚の間に滑り込む。

「ひっ!?」

ぬめったそれが肛門にあてがわれると、アルはビクンと体を震わせた。

「そ、そこは…!そこダメっ…あぎゃあああスっ!」

脚を閉じて尻を締めたものの、しかしメケメケちゃんは抵抗を意に介さず、グリグリとねじ込むようにして触手の先端を肛

門に押し付ける。

やがて、先を少し細めた触手が守りをこじ開け、ヌルリと肛門から滑り込む。

「おぎゃぁあああああああああああああス!?」

先端は細く変形したものの、そこから先は直径3センチ程の太さがある。尻の穴が強引に押し広げられ、アルは痛みから悲

鳴を上げた。

時には平べったく変形してパンツを脱がし、時には締った肛門をこじ開けて侵入する万能触手…。

メケメケちゃん秘密の七大能力の一つ「この手で今夜お前をオトしてみせるテンタクル」は、その多彩な変形機能をもっ

ていかなるガードも容易く崩す。なお、テレビ等のリモコン操作もバッチリである。

再びメケメケちゃんを剥がそうと、モゾモゾと身を起こして手をかけたアルは、「あんっ!」と声を漏らした。

尻から侵入した触手が腸内をまさぐり、ソコを刺激すると、すっかり萎えて縮こまっていたアルの逸物がヒクヒクと動き始

める。

「はひっ!まっ…や、やめっ…!もぉ赦し…て…っスぅ…!」

仰け反って身を震わせるアルの腹中で、メケメケちゃんの触手がウネウネと蠢き、執拗に刺激を与え続けていた。

顔から火が出そうな羞恥心と、無理やり触手を捻じ込まれた尻の痛み、さらに下腹部の圧迫感に耐えかねたアルは、メケメ

ケちゃんごと抱え込むようにして身を丸めつつ股間を押さえる。

しかし赦しを乞う声とは裏腹に、執拗に前立腺を刺激されたせいで、息子の方は再びいきり立っている。

今度ばかりは先程以上に強い抵抗を示すアルだったが、メケメケちゃんには、恥かしがりやの相手が抵抗するこんな時のた

めに備わっている能力があった。

しゅっと素早く伸びた触手が鼻先につきつけられ、アルは目を丸くする。

その顔面に、メケメケちゃんの触手の先からどギツい紫色の霧が噴射された。

「ぶふぉっ!?げほっ!うぇっほ!」

噴霧された紫の気体を吸い込み、むせ返ったアルは、眩暈を感じて脱力する。

抵抗心が薄れ、トロンとした表情で喘ぐアルは、不安げな顔でメケメケちゃんを見遣った。

「な、何…したん…スかぁ…?」

興奮状態の相手を強制的にリラックスさせて受け入れ準備を整えさせる、鎮静作用のある霧。

メケメケちゃん秘密の七大能力の一つ「良いから身を任せて楽にしてなフォッグ」は、その効果を遺憾なく発揮していた。

次いで、大人しくなったアルの尻に入り込んでいる触手の根本が、プクっと膨らむ。

膨らみはすすっと触手の先に向かって移動してゆき、アルの尻の穴に達した。

広げられた尻の穴に覚える、さらに強い圧迫感。何かが送り込まれてくる気配を察したアルは、

「ちょおっ…!?う…!な、何してるんス…?うっ!」

腹の中にひんやりとした何かが撒かれた感触に、呻き声を上げた。

ヒヤリと感じたのも束の間、次いで腹の中が熱くなり、その熱は次第に全身へと広がってゆく。

鼓動が速くなり、全身がカッカと熱くなり、肌がむず痒くなる。

直腸摂取、あるいは経口摂取させる事で、疲れた相手(のアソコ)もたちまち元気。

メケメケちゃん秘密の七大能力の一つ「まだまだ寝かせないぜ覚悟しなリキッド」は、その効果を即座に発揮する。

はぁはぁと荒い息を吐くアルの汗まみれになった体を、伸ばされたメケメケちゃんの触手が、透明なジェルを分泌しながら

撫で回す。

塗られた箇所の神経を活性化、さらに受ける刺激を快楽に変換させる作用を持つ液体が、アルの被毛に沁み込み、皮膚から

浸透する。

メケメケちゃん秘密の七大能力の一つ「こことか感じるんじゃないのかジェル」は、その効果をもって…、やはりメケメ

ケちゃんは、間違いなく危険生物であった。

うねる触手で乳首をまさぐられたアルは、目を硬く閉じて身を震わせつつ、「あはぁ…!」と切なげに声を上げる。

身もだえするアルの口に伸びた触手は、半開きになっている口に無理矢理押し入り、だめ押しの「まだまだ寝かせないぜ覚

悟しなリキッド」を飲み込ませる。

もはやされるがままになっているアルの、初々しい反応が新鮮だったのか、メケメケちゃんはフルルっと身を震わせて喜ぶ

と、ゾワッと一斉に伸ばした触手でアルの全身を愛撫し始める。

鍛えて厚くなった上に脂肪が乗ったムッチリした胸を、軽くサワサワと愛撫したかと思えば、鎖骨の辺りをクックッと押し

て刺激し、太い首周りの被毛に分け入って顎下や喉を撫でる。

ひとの指以上に繊細かつ変幻自在、効果的に刺激を加えて来るメケメケちゃんのテクニックに、アルは完全に制圧されている。

十人がかりが推奨される第一種最上位の危険生物をも圧倒する白熊だが、どうやら特定の第八種には勝てない模様…。

手触りが気に入ったのか、分厚い脂肪層を纏う真ん丸い腹部を、広がった触手があちこちからプニプニと押し、アルは恥か

しげに、そしてこそばゆそうに身じろぎする。

揺するように腹を一押ししたメケメケちゃんは、触手の一本の先端で下腹部の中央を下からすすっと撫で、その先にある臍

の窪みへ先端を押し込んだ。

クリクリと臍を刺激されて身もだえしたアルが、ハカハカと荒い息を漏らしているのを感じ取りながら、メケメケちゃんは

そろそろ頃合だと目星を付ける。

直後、直腸内でクネクネと触手が蠢き、アルは食い縛った歯の隙間から「んうぅうっ!」と呻き声を漏らした。

「あっ…!ひっ…!は、入って来るっ…スぅ…!」

うねった触手はそのまま奥へとズリュズリュ進み、腹中の圧迫感が強まったアルが顔を顰める。

「そ、そんな奥…、だ、だめっ…スぅ…!も、もう…、入らないっスよぉ…!」

奥まで入った触手全体がウネウネとくねり、白熊は荒い呼吸を繰り返しながらイソギンチャクに訴えた。

「ちょっ…!あっ…!き、キツい…っス!は、腹、苦しいっス…!そ、そんな…!グリグリ…された、らぁっ…!あふぅっ!

も、もぉやめてっスぅ…!」

が、アルの反応に気を良くしたメケメケちゃんは全く容赦しない。

尻に突っ込んだ触手で執拗に前立腺マッサージを繰り返し、腸壁を擦り、声を上げるアルを責め続ける。

さらにメケメケちゃんは「この手で今夜お前をオトしてみせるテンタクル」の変形機能を使い、アルの直腸内にピタリと

フィットするよう触手を太くした。

腹の中で触手を怒張され、アルは「んぁあああああっ!?」と苦しげな声を上げる。

さらに、今回の変形は二段階であった。太くなった触手の表面に、半球状のイボイボが発生する。

イボつき触手がまるで電動式の如く細かく、激しく上下運動を開始すると、大きく開いたアルの口から、

「あっ!はががっ!?あぎゃぁあああああああああああああああああああああス!!!」

と、凄まじい絶叫が迸った。

しかしメケメケちゃんは一切容赦せず、依然として咥え込んだままでいたアルの肉棒を吸引し始めた。

「あぎひぃっ!はひっ…!はっ…!あぐぅ…!ん、んうぅっ!」

悲鳴と喘ぎ声が混じりあいながら、下腹部と股間を押さえながら身もだえする白熊の口から漏れる。

「はっ…あ…ん…!んぅっく…。ひんっ…!お、おかしく…なりそ…っス…!ふぁっ…、はっ…、ひん〜っ…!」

だが、やがてその声は、あられもないよがり声へと変化して行った。

「だ、ダメぇ…!で、でちゃ…う…っスぅ…!そんな…、はっ…された、らぁ…!お、オレまた…、出ちゃ…」

か細く震える弱々しい声を漏らしながら、小刻みに全身を震わせていたアルは、突如ビクンと大きく痙攣した。

「んっ…!っく…!う、うっ…!ふぁあああああああんっ…!」

縋りつく物を求めるように両手を上に向かって上げ、わなわなと体を震わせながら、ビピュッと、三度目の射精をさせられ

るアル。

三度絞り出された精液をじゅるじゅると啜り、やっと満足したのか、メケメケちゃんはアルのソレを吐き出した。

射精直後の逸物が、やっと開放されてプルンと反り返る。

「だ、だめ…!お、オレもぉ…、ダメっ…スぅ…!チンチン痛いっス…!タマタマ苦しいっスぅ…!」

それが程無くしおしおと萎え、ドリル状に縮こまると、メケメケちゃんはノノノッとアルの上を這い進み、こんもり山になっ

ている腹の上に登った。

「何か…、大事なモノ…、奪われたような気がするっスぅ…」

泣きそうな震え声で呟いたアルは、そのまま目を閉じてコテッと首を倒した。

呼吸で上下する出っ腹の上から、気を失うようにして眠ってしまったアルの顔を(どうやって見ているのかは謎だが)見下

ろしながら、久々に大好物を口にして満足したメケメケちゃんは、触手を引っ込めて丸くなって眠りに落ちた。



…が、これで終わりかと思いきや、アルが目覚めると同時に覚醒したメケメケちゃんは、寝起きのアルに再び襲い掛かった。

アルの事をよほど気に入ったのか、それとも体型が以前の飼い主を思い出させるのが要因なのか、メケメケちゃんは泣いて

赦しを請うアルを散々陵辱し、精液を搾り取った。

そのまま数時間なぐさみものにされた挙句、用事があるからと何とか説き伏せ、ほうほうの体でやっとこさ部屋から逃げ出

したアルは、ぐったりとしながらその日の調整に向かった。

そして、夜が訪れる…。



「先程戻ったであります。メケメケちゃんは良い子にしていたでありますか?」

ドアを開けて顔を出したアルに土産のジャガイモ菓子を手渡したエイルは、彼が何やら疲れた表情をしている事に気付き、

首を傾げた。

「どうかしたでありますか?メケメケちゃんが何か悪戯でもしたのでありましょうか?」

「…何でもないっス…。良い子にしてたっスよぉ…」

微妙な半笑いを浮かべたアルは、現在メケメケちゃんが居ると思われる上方へと視線を向けた。

「今、リーダーの部屋に行ってるっス。今晩はそのまま泊まると思うっスから、明日オレが迎えに行って連れて来るっスよ」

「迎えになら自分が行くでありますが…」

「い、いやいや!オレが連れて来るっスから!ね!?」

慌てて首を横に振ったアルに、エイルは不思議そうに首を傾げながらも、結局は頷いた。

エイルが引き返した後、アルはリビングのソファーにぐったりと横たわった。

無理矢理ああいう事をするなら、二度と一緒にはテレビを見ないと言い含め、メケメケちゃんの説得に成功したアルは、し

かしその後も物欲しそうに腰周りに纏わりつかれて辟易した。

そういう経緯から、そんなに欲しいならと、スタミナも精力も無尽蔵に持ち合わせている白虎のところに預けて来たのである。

今頃は流石のダウドもぐったりしているだろうと、少々罪悪感を覚えたアルだったが…、明くる朝には、ぐったりしている

メケメケちゃんの姿を目にして驚愕するはめになる。