グリモア・スタンダード(前編)

 用水路にかかった短い橋の上を、鞄を提げたサラリーマン風の男がゆく。

 反対側からはジョギング中の初老の男が、スピードは遅くとも脚を上げて渡ってくる。

 視線も合わせずにすれ違うふたりは…。

「こっちには居ない」

「バス停の張り込みも連絡はない」

「新橋方面へ」

「ああ」

 それは、短時間の内に小声で交わされた言葉。男達はおかしな様子などみぜずにそのまま離れてゆく。

 その橋の下、用水路の両脇へ僅かに設けられたコンクリートの段…点検作業用の通路に、影が一つ蹲っていた。

 それは、厳めしい坊主頭にはなり切れない半端な短さの髪を茶色く染め、小太りでそばかすが目立つ、十代半ばと見える少

年だった。

(何で…)

 じっとりと汗ばんだ額を腕で雑に拭い、茶髪の少年は前後を素早く確認する。脅えた小動物のように落ち着きなく。

(何でこんな事になったんだよ…!)

 胸の内で嘆きながら、しかし少年は知っている。原因は、きっと…。

 汗で湿った手をポケットに入れる。デニムの短パンも汗を吸って、中の物を掴み出すのも一苦労。ようやく手を抜いた少年

は、握り込んだ手を震わせながら開いた。

 手の中にあるそれは、掌にすっぽり収まるサイズの石だった。何の変哲もない石ころに見えるが、コレが原因で自分は追わ

れているのだと、少年は気付いている。

「う、ううっ!」

 呻きながら腕を上げる。眼下の用水路の、昨夜の雨で茶色く濁った流れへ向けて、石を投げ捨てようとする。が…。

「ううううう~っ!」

 苦痛を堪えるような呻きを漏らし、少年は結局石を捨てられない。

 理由は知らない。理屈は知らない。だが、どれだけ手放したいと願っても、ソレを捨てる事ができない。

―魔法使いになってみたいと思わないかい?―

 この石を手渡してきた男の声が、耳の奥で蘇る。

(チクショウ…!)

 焦りと疲労で憔悴した表情のまま、少年は石をポケットに戻した。その途端、コツンと、石畳を難い靴底が踏んだような音

が聞こえ…。

「それを使いこなせれば、君の望みは簡単に叶う」

 少年がハッと顔を上げると、そこに男が立っていた。

 黒いタキシード。黒いシルクハット。白いステッキ。胸元に覗くフリル付きの白いワイシャツ。それは夏場の、しかもこの

国での格好としては、いささか不適切だった。

 白い顔に薄い笑みを貼り付けたまま、男は言う。

 橋の下、流れる川の上、何もない空中に立って、いやにはっきりと聞こえるが故に現実味の薄い声で。

「手放したらいけない。さあ、頑張るんだ」

(うううううううう…!)

 汗でじっとり濡れた顔をゴシゴシ擦った少年がもう一度目を向けた時には、もう男の姿はどこにもなかった。




 犬の警部が資料を捲る。その後ろを通りかかった若い刑事が、「何だったんですか?東護町の児相からの電話」と声をかけ

ると、犬は尖った耳をピクピク震わせた。

「頼み事をしていてね…」

 日本犬の雑種ならではの没個性かつ見慣れた風貌で、四十歳目前にも関わらず均整の取れた締まった体つき。目を引くのは

デスクに立てかけられた、銀色に光る松葉杖。

 乾健之助は白黒でプリントされた顔写真つきの、ある少年の資料を閉じる。

 数年前に知った、地元の少年である。

 冬が目の前のその日、ケンノスケはヤンチャ坊主同士の喧嘩を家の近くで仲裁した事があった。グループ同士のそれなりに

派手な喧嘩で、地元の警察官が到着する前に出て行ってしまったのは、職業意識以前にケンノスケ自身の性格があっての事。

ケンノスケはその折に、少年達の中で一際鈍くて最も手酷くやられていた子供を庇って割って入る格好になった。

 まとめて補導されたその少年達は結局更正などしていないのだが、ある意味ではそれで縁ができたのだろう。ケンノスケも

その少年も互いの顔を覚えてしまい、住んでいる地区がすぐ傍という事もあって、ちょくちょく出くわしたりもしていて…。

「一週間前から捜索願が出されているんだ。私の近所に住んでいて、知らない少年じゃなくてね…。行方の心当たりなどを訊

かれたんだよ。私も気になったから、何か判れば教えて欲しいと頼んでいたんだ」

「夏休みだし、ハメを外して家出ですかね?」

「だったら良いんだが。…いや、良くはないな。うん」

「それでその子、なかなか見つからないんですか?」

「その通り…」

 ケンノスケは顔を顰める。

 防犯カメラに映像はあったものの、本人の居場所はまだ判っていない。それどころか、何者かに尾行されていると思しいの

だという。

 カメラに少年が映ったのは二日前。コンビニから万引きの訴えがあって確認した際に判明したらしい。どうも、家にも寄り

付かず友人の所へも行かず、物を盗みながら食い繋いで逃げ回っているようなのだが…。

「おっと失礼」

 内線電話が鳴り、会話を中断した猿が受話器を上げ…。

「イヌイ警部ですか?はい来てますよ」

 犬の刑事は自分の名前を口にした猿へ、耳を立てながら目を向けた。


 丁度その頃、県警の駐車場では…。

「また今日も暑いな…」

 学生達が休みに浮かれる、夏の盛り。丸顔にフツフツと浮いてくる汗をハンカチで拭いながら、肥った警官が赤ら顔を顰め

ていた。

 夏用の装いとはいえ腰周りにはいつもの装備品。ベルトを中心にして腰から蒸れるし汗もかく。駐車場のアスファルトが揺

れて見える中、カズキは傍らに並んだ金色の熊を見遣って口を開いた。

「変に気にされても困るから念のために言っておくが、別にあちらから希望があった訳じゃない。俺の方で適任と考えて選ば

せて貰った。面識もあるから都合が良いだろうし」

「だろうなぁ~、って思いましたよ」

 カズキに応じるユウトは普段どおりの涼しげな軽装。ただしカーゴパンツは膝丈まで捲り上げてボタンで留め、上は袖無し

のメッシュシャツ。多目的ベストも装備しているが涼しげな顔。…なお、背中や脇腹の裏側に設置したお手製ポケットに冷却

剤を忍ばせるという、現場のおじさん達御用達のアイスベストのような手段で涼を取っているのは内緒である。本人は良い事

思いついたとご機嫌なのだが…。

「嫌か?」

 カズキの問いに、ユウトは広い肩を僅かに竦めながら応じる。

「ボクらは嫌だの何だので仕事を選り好みできないじゃないですか?働かなかったらオマンマの食い上げだもん」

「まあそうだが、一応こっちとしては気が進まない仕事はやらせたくないんでな。モチベーションが低くて成果が伴わないよ

うじゃ困るし、何より常々強いストレスにさらされがちなのが調停者だ」

「カズキさん、そういうトコ優しいって言うか甘いですよね~。んふふ」

 思わず苦笑いしたユウトは知っている。

 監査官は真人間でも善人でもない。肌身で秘匿事項該当案件の危険性を実感する調停者とは違い、様々なフィルター越しに

それらと接する事が多い監査官の中には、「勘違い」してしまう者もある。

 ソレを自分の好きに扱えたら?

 アレを自分の物にできたなら?

 そんな風に自分を見誤り、対象を正確に把握できないまま、ちっぽけな欲で堕ちる者もある。

 そして、調停者を監督する権限を自分の「力」だと勘違いしてしまう者もある。調停者として場数を踏めば、担当する監査

官の値踏みの重要性は嫌でも判ってくる。

 だがカズキはそういった監査官に該当しない。むしろそういった手合いとは最も縁遠いと言えた。デスクワークが本分と述

べながらも可能な限り現場に出るし、必要とあらば自ら銃を抜いて危険生物とも対峙する。調停者をしっかり監督しながらも、

目的を同じくする者と見なして接する。だからこそ人一倍辛い思いもするのだが…。

「それに、まぁ…」

 県警本部を裏側から見上げ、ユウトは目を細めた。

「イヌイ警部は嫌いじゃないですよ。ああいうおまわりさん、子供が憧れる正統派の理想なんじゃないかな?」


「…協力者…というのは…」

 十五分後。会議室の一つへ足を運んだケンノスケは、既に部屋に入っていたふたりの顔を見て困惑の表情になる。上司に呼

ばれて資料室から戻り、ある件の捜査を命ずる旨の書類をペラリと一枚渡され、「極秘捜査を命じる」「協力者と会うように」

と促されて会議室へ足を運んでみれば、そこに居たのは…。

「お疲れ様です」

「どうも、お久しぶりです!」

 顔見知りの監査官と、朗らかな笑みを浮かべる大柄な金色の熊だった。

「ちょっと待ってくれ…!」

 ケンノスケの顔から血の気が失せる。

 上司から渡されたばかりの命令書の中身は、今まさにケンノスケが気にしていた少年の動向調査だった。それが極秘捜査と

銘打たれていた上に、その協力者がこの熊という事は…。

(あの子、相当マズい状況なのか…!?)


 古藤野久道(ことうのひさみち)。それが、捜索願いが出されている少年の名。

 有り体に言えばワルを装いながらもなり切れない、仲間内でも気の弱さを見抜かれて下っ端扱いの、半端なヤンチャ坊主で

ある。

 カズキが提示した顔写真入りの資料と、確認された限りの足取りを纏めた時系列の表を前に、堅い表情のケンノスケは耳を

ピンと立てて説明に聞き入る。

「…という訳で、自分では正体を知らないまま危険なブツを所持して、関係者に追われている可能性があります。彼自身はと

もかく、持っている品と、それを狙っている連中が問題です。その子自身はその品をどうこうできないでしょうが、欲しがる

連中はゴマンと居ますからね」

「少し抜けてる子だとは思っていたが、何だってこんな落とし穴みたいな案件に…」

 頭を抱えて俯き、ため息まじりに唸るケンノスケ。

 この本当に参っている様子を見て、ユウトは微苦笑していた。気の毒に感じる反面、やはり信用できる「いいひと」だと。

「とりあえずですね、その品物を取り上げればオーケーです。追ってる連中はこっちの領分ですから、責任もってちゃんと対

処します。警部にお願いしたいのは、その子を探し当てるのと、品物を取り上げた後の保護です。…それで良いんですよねカ

ズキさん?」

「その通りだ。「辻褄合わせ」のためにも、警部が見つけて保護した事にならないといけないからな。…ああ警部、この神代

は今回、警部の身辺警護とサポートが目的での配備です。追っている側の排除にはまた別の調停者達が当たり、こちらでも可

能な限り危険が及ばないよう対処するつもりですが、万が一の時は神代が警部とその子を守ります」

 話がズンズン進んでゆく中、ケンノスケには用語レベルでの疑問も、ふたりに訊ねたい事も、山ほどあったのだが…。

「…彼を見つけて保護する。…それで安全になるんだね?」

 確認しながらも、既に話に乗る覚悟は決めていた。




(腹減った…)

 薄汚れた少年…ヒサミチは、そばかすだらけの顔を手で拭う。腕も足も薮蚊に刺されてあちこちが赤々と腫れ、脂と垢と汗

で体中痒い。恐怖が無ければ、渇きと餓えとみじめさで音を上げていただろう。

 少年はプロパンガスのボンベ脇で膝を抱え、息を殺していた。そこは喫茶店の裏手で、勝手口からはガスボンベを挟んだ反

対側にあたる。ブロック塀と店の壁の間にある狭い空間になっており、上にはボンベにかけられた雨避けのトタン屋根がある

ため、道路側からも店側からも死角になっている。蜘蛛の巣と虫の死骸だらけの汚れた空間だったが、ここを見つけた際には

涙が出そうなほど安堵した。

 暗くなるまでは動けない。何日経ったか思い出せず、記憶を手繰って状況を整理する。

 家には帰れない。初日にはもう家の周囲に、今自分を追っている「何処にでも居そうで、しかし全く見覚えのない男達」の

姿があった。

 友達も頼れない。そもそも友達とは呼べないかもしれないと、今になって思う。いつもつるんでいる連中が、困っている自

分を助けてくれるかと考えると、それは確実に無いと確信できた。喧嘩の時、いざこざの時、旗色が悪くなって逃げる時は、

いつも置き去りにされたから。

 どうして自分がこんな目に…。この境遇に涙する。

 初めは…、そう。やはりこの石だったと、少年はポケットの中の感触を確かめながら思い出した。



「やあ少年」

 そんな風にかけられた最初の言葉を随分軽薄そうな声だと感じた事と、コツンと鳴った靴音がやけに耳についた事だけは、

はっきり覚えている。

 影が長く伸びた夕暮れのアスファルト。いつものように仲間達にからかわれ、弄られ、パシリをさせられた帰り道。腹が立っ

ても言いたい事が言えない自分にも腹を立て、転がっていたペットボトルを蹴飛ばそうとした、その瞬間に声は聞こえた。

 ビクッと背を震わせて足を下ろし、振り返ったそこに、男は居た。

(は?)

 思考に投げ込まれたのは疑問。顔を彩ったのも疑問。

 それもそのはず、声をかけてきた男は、夏の日本とは思えない格好をしていた。

 黒いタキシード。黒いシルクハット。白いステッキ。胸元に覗くフリル付きの白いワイシャツ。肌は陶磁器のように白く、

髪は夜のように黒い。外国のマジシャンのような、英国紳士のような、そしてペテン師のような、魅力と怪しさが同居する奇

怪な印象。

 若い…ようにも見えた。三十にはなっていないと、モデルのように綺麗な顔から感じる。だが、本当にそうだろうかという

疑問も感じた。見た目通りの歳ではなさそうな印象もある。
まるで、メイクで実年齢が判らなくなってしまうテレビの向こう

の人物達のように、本当のところはどうなのかはっきりしない。

「魔法使いになってみたいと思わないかい?」

 男の口が流暢に言葉を紡いだ。それを聞いた少年はたっぷり十秒ほど間を空けて…。

「は?」

 当たり前に反応した。意味不明にも程がある問いかけに、それ以上妥当な反応ができるはずもなかった。

 魔法使い?何言ってるんだコイツ?格好もそうだけど頭もおかしいのか?

 胡散臭さから警戒心を刺激された少年は…、

「例えば、いつも上から目線のハヤトを見返したいとか、顎で使うヒトシに仕返ししてやりたいとか、馬鹿にしている視線に

腹が立つシュウヤの鼻をあかしたいとか…」

「……………へ?」

 かなり間をあけて疑問の声を漏らし、ゾワリと鳥肌立った。

「…な、なんで…」

 寒気を覚え、怖れを抱き、しかし少年は逃げられない。まるで蛇に睨まれた蛙、そこから一歩も動けなくなっていた。

「喜びたまえ少年。君の望みは魔法使いになれば簡単に叶う」

 どこまでも軽薄に、底抜けに明るく、タキシードの男は両手を大仰に広げて歩み寄る。

「さあ受け取りたまえ。これが魔法使いの印、使いこなせれば簡単に望みを実現できるだろう」

 気付けば、少年は右手を男に取られ、掌に石を乗せられていた。

 不思議な石だと感じた。無機質なはずだが冷たくはなくて、生物の骨のような質感にも思えて…。

「それを手放してはいけないよ?手放すと資格が失われる…」

 男は少年にそう囁いた。が…。

「それを手放しては…いけないよ…。手放すと…資格が…失われ…」

 少年は石から顔を上げる。そこに、知らない顔があった。

「それを…手放して…けな…。手放…格が…なわれ…」

 痩せ細り、頬がこけ、木乃伊のように目が落ち窪んだ、サラリーマンのようなスーツ姿の男がそこに居た。か細い声に隙間

風のような呼吸音を絡めて、何処も見ていない目を少年に向けて、うわ言のように同じ言葉を繰り返している。

「…れを手放…ない…。手放す…が失われ…」

「ひっ!」

 手を振り払った少年の前で、石から手が離れた木乃伊のような男は、糸が切れた人形のように膝から崩れ落ち…。

「…して…けな…。すと…なわれ…」

 ボソボソと繰り返しながらうつ伏せに倒れ…。

「………………」

 もはや聞き取れないほど不鮮明になった声を漏らしながら、男の体は平らになっていった。スーツが一気に風化して塵にな

り、四肢が粉末状に分解し、少年の目の前で跡形も無く消える。

 幻でも見たのか?

 立ち竦んだまま目を擦り…。

「澤部と思しき男の消滅を確認した」

 不意に聞こえた声でハッとする。

 男が立っていたその向こうに、三人組の姿があった。コンビニで会っても気に留めないような、道端ですれ違っても気にな

らないような、ジャージ姿の若い男と、半袖ワイシャツにスーツのズボンの勤め人風と、大学生ほどに見えるお洒落なバッグ

を抱えた女性が。

「石を確認。民間人と思しき少年が所持している」

 ワイシャツの男が腕時計に向かって喋っている。

「これより回収する」

 女がバッグから何か抜き、それを拳銃だと認識する。

(何だこれ?何だこれ?どうなってるんだこれ?)

 パニックになりながら、少年は悟っていた。こいつらは自分を殺すつもりなのだ、と…。

(何で!?)

 悲鳴に近い思考。理不尽な状況、理解不能な状況への疑問。叫び出したくなった少年の前で…。

「…消えた!?」

 若い女が顔を強張らせ、銃を下げつつ周囲を見回す。

「落ち着け。…幻覚を見せられた可能性がある」

 ジャージの若い男が冷静に述べて、勤め人風の男が「また仕切り直しか」と舌打ちし、取り逃した旨を腕時計型通信機に告

げた。

(え?え?)

 少年は、「そこに立ち尽くしたまま」困惑する。

 三名はすぐさまバラバラに歩き出した。ジャージの男など、悲鳴を上げそうになった少年のすぐ脇を抜けて歩き去った。少

年がまだそこに居る事に、誰も気付かずに…。

 三人が居なくなって数分経ってから、少年はおどおどびくびくその場を後にした。

 それから、何人居るのか判らない正体も知れない誰か達に探され、追われ、何度も不思議な事が起きて逃げ延びて…。



(魔法使いって、何だよ…!)

 叫びたい気持ちでベソをかきながら、少年は涙を拭う。

 連中が持っているのは本物の拳銃だと、二度発砲されて気付いている。当たらなかったのは運がよかったからなのか、不思

議な事が起こったからなのか、少年には判らない。

 何が起きているのかも判らない。この石が何なのかも判らない。「ヤバい」という事を除いて自分がおかれている状況も判

らない。

 ただ、捕まってしまったら殺されるという事だけは、はっきり判っている。

(何でおれなんだよ…!何が、望みが叶う、だよ…!「使いこなせば」って…)

 そして少年はふと思う。

 「使いこなせなかったらどうなるのだ?」と。

(う…、ううう…!)

 その末路を知っている。最初にソレを見せられた。

 自分が石を渡された時、目の前で崩れて消えたあの男…。このままだと自分もあの木乃伊のようになるのではないかという

不安と恐怖が、少年を脅かす。

(帰りたい…!もう嫌だ、帰りたい…!)

 喫茶店の換気扇から漏れてくるのか、ピザのような匂いが鼻先をくすぐった。

(帰りたい…!)

 膝を抱え、顔を伏せ、少年はさめざめと泣いた。

 コツンと、背後で靴音が聞こえた。

「君の望みは叶うとも」

 軽薄に、楽しそうに、耳元であの声が囁く。

 ひとが立つスペースすらない背後に生まれたその気配を、少年はもう確かめようともせず啜り泣いていた。




「足の具合どうなんです?キツくなったら無理しないで下さいね、休憩取りますから」

「有り難う。だがこんなザマでも具合は随分良いんだよ。杖にも慣れて、一日中だって歩き回れる」

 ユウトが運転するレンタカーの助手席で、ケンノスケは困ったような気恥ずかしそうな、どっちつかずの笑みを見せた。

 東護町での捜査用車両としてカズキにあてがって貰ったのは、ユウトが希望したのでワゴンタイプになった。

 視界が高くなるので探し易く、車内スペースも広いので松葉杖のケンノスケも具合がいいはず…というのが理由の半分。も

う半分の理由は、狭い車だとユウト自身が運転し難く、同時に恥かしい思いもするのである。具体的には、ハンドルに豊満な

腹部が接触してしまい…。

 ユウトから車両タイプの希望を聞いた際にカズキは気付いたが、デキる監査官は何も言わず、気付かぬふりで書類にメモし

ていた。ユウト曰く甘いらしいが、それでも優しさは優しさである。

「けど、無理して悪化しないとも限りませんし…」

「キツくなったら正直に言うとも。なに、息子を怒らせたのと比べれば、この程度は大した事じゃ…」

 苦笑いを凍りつかせて言葉を切るケンノスケ。微妙な沈黙に眉根を寄せるユウト。疑問の色がはっきり見て取れる金熊の視

線に促されるように、犬の警部は口を開く。ため息まじりに。

「…息子は学生寮に入っていてね…」

(ああ。サツキ君と同じ学校って言ってたっけ…)

 親戚筋にあたる大工の棟梁から、ウチの倅と同じ所へ進学したと聞いていた事を思い出すユウト。

「余計な心配をさせてスクールライフの邪魔にならないように、負傷した事を黙っていたんだが…。夏休みで…帰って来て…

怪我の事を知って…、そうしたらもう…ね…」

「おこですか」

「おこだったよ」

 息子を怒らせたのがよほど堪えたのか、シオシオと項垂れるケンノスケ。ため息すらも青白く見える気がする。

「教えて欲しかったんでしょうね。でもボクはイヌイ警部の気持ちも判る気がするなぁ…。あ、ボクの方は立場が逆なんです

けどね?心配かけないように実家に黙ってる事多いし…」

 気の毒そうに目尻を下げて慰めるユウト。

 ワゴン車は東護のある学校…件の少年が通う学校傍からショッピングモール方面へと移動してゆく。ケンノスケの心当たり

から、少年と初めて会った公園を訪ねたりもしたのだが、こちらは空振りに終わっていた。

 もうじき夕暮れという頃合い、夜に備えて白い老人のオブジェが目印のファストフード店のドライブスルーに入り、品物を

受け取ったらそのまま駐車場に入って、車内で手早く夕食を済ませる。杖をつかなければいけないケンノスケをなるべく歩か

せないようにと気を使ったユウトだが…。

「…店内の方が良かったんじゃないか?」

 そのオーダーした量…小パーティーができそうなチキン類とバーガーを行儀よく、手際よく、かなりのスピードで平らげて

ゆく金熊を横目で見遣りながら、ケンノスケが耳を倒す。

「平気ですよ。仕事柄、立ったまま詰め込む事も多いですからね。座って食べられるなら文句無し!」

 笑顔のユウト。やや堅い笑みを見せるケンノスケは、キールから小骨を器用に取り外して解体して食べる金熊の顔と腹をそ

れとなく見比べる。幸せそうにチキンを貪るのは結構なのだが、これだけ食べて大丈夫なのかと、やや心配になりながら。

 何せ捜査はこれからが本番。見つからないという事は、少年は日中の移動などを避けている物と思われる。夜になれば動き

出す可能性が高い。

(今頃どうしてるかな…、あの子…)

 手にしたチキンサンドを見つめ、ケンノスケは思う。

 家にも帰れないほど怖い目にあっているのだろう。きっとお腹を空かせているのだろう。何とか助けてやりたい。

 ケンノスケはガブリとサンドにかぶりつき、急いで咀嚼した。一方ユウトは時刻を確認し、相棒の言葉を思い出す。

(もう少しでタケシが連絡入れるって言ってた時間だ。上手く調べがつけばいいけど…)




 同時刻、東護町の地下に置かれた情報屋の隠れ家で、黒髪黒瞳の青年は、ずんぐり背の低い人影と向き合ってテーブルにつ

いていた。

 フードを目深に被った相手の顔は判らない。音声も機械的な処理が加えられた電子合成音らしいので、肉声がどのような物

なのか判らない。背は子供のように低いが、体型はやはりよく判らない。ずんぐりして見えるのはコートによる着ぶくれかも

しれないし、逆にそのままボディラインに近いのかもしれない。

 モニターが並び、配線が一見でたらめに這い回り、所狭しと機材が置かれた、情報屋ユミルの部屋。そこでタケシが目を通

しているのは町のあちこちで様々な人々を映した画像の数々。一般人に溶け込んでいる組織の構成員が、ユミルの照合で詳ら

かに所属を暴かれて、メモ書きだらけにされていた。

「連中はエルダーバスティオンから分派した新興組織だ。首都の日本支部管轄の班がそのまま離反した勢力で、勿論エルバス

からも狙われている。日本支部も、ブルーティッシュが睨みを利かせているおかげで首都以北へは手を出し辛いだろうが、そ

れも時間の問題だ。放っておいてもそう遠くない内に連中に処理されるだろうが…」

「生憎、淘汰を待つ余裕はない。相棒は既に配備についている。連中に時間を与えるつもりはない」

「…それが正解だろう。今回の件については、泳がせて処理を待つのは安全策と言い難い」

「例え組織間の尺度で弱者であろうと、力を付けられれば地方の調停者には厄介な手合いだ」

 タケシは無表情で資料を読み漁り、情報を片っ端から頭に入れてゆく。ユミルの存在も、勿論彼との関係も公にできないた

め、資料をそのままカズキへ提示する事はできない。あくまでも自分の行動に活用できるだけである。

「リアルタイムで追跡情報を流すプログラムを組んだ。携帯端末に入れて行け」

 頷いたタケシは資料から顔を上げ、ユミルに問う。

「何故「石」があの少年の手に渡った?何故この街に放置されていた?」

「…交換に出された品はやや高値だったな」

 依頼の前金として受け取っていた秘匿案件絡みの生物素材の価値を計算したユミルは、「サービスだ。背景について少し語

ろう」と述べ、追加で情報を提供する。

「三年ほど前、ある術士がこの近辺を訪れた。「アグリッパ」…名前は知っているか?」

「ああ。本当に名前程度の知識しかないが」

 タケシは僅かに瞼をおろし、半眼になる。

 大物の名前だった。他のレリックとも性質が大きく異なる品、「グリモア」を行使する素養を持った者…「術士」。その特

異な能力者達の中で、最も高名なひとりがアグリッパである。

「こんなアジアの島国にわざわざ?」

「その「わざわざ」を実行するだけの理由があったという事だ。彼がこの近辺を訪れたのは、ある術士を始末するためだった。

そう、酷く危険な…、しかしそれに自分自身で気付けていないが故に輪をかけて危険な術士を…。アグリッパ曰く、敵対関係

にあるその術士を放っておけば、世界中に害が広がる事は確実だったらしい。対決は避けられないとお互いに確信していたよ

うで、その術士はアグリッパを迎え撃つために、追いつかれると予測したこの近辺に大規模なトラップを仕掛けた」

「…まさか…」

 タケシの瞳が鋭く光る。そして、青年が予想した通りの言葉をユミルは口にした。

「その術士は、はた迷惑な事に広域防衛陣を多重敷設した」

 青年は納得した。

 高位の、それも自前のグリモアを造れる術士は、自らが作製したグリモアを用いて「陣」を敷設する事ができる。敷設者の

思念波で満たされたこの陣は一種の結界であり、範囲内では他の能力者の思念波が減衰するだけでなく、敷設者は踏み入った

者を感知型能力者級の精度で察知できる。敷設の仕方次第では、内部の者達から思念波を吸い出して衰弱させる事も、同時に

その思念波を要石たるグリモアに貯蔵する事もできるらしい。

 事実その事件でも、作製された陣の影響下におかれた東護町近辺では、思念波を「徴収」されて不調をきたす者が少なから

ず出た。ユミルが迷惑と述べたのは、市街地に陣が敷かれたせいで発生した被害を正確に把握しているからこそである。

「結局アグリッパは、苦労しながらも陣を破壊した上で、その術士を始末したが…、問題はその後の事だ」

 その術士が敷設した陣が、破壊し難いようあえて歪つに創造されていたため、アグリッパは中継機器たる全18個のグリモ

アの内、2つを探し出せなかった。よって、東護にはグリモアが二つ残されている事になるのだが…。

「独立希望の組織が追っている品が、その二つの片方という事か」

「そういう事だ。当代のアグリッパは歴代の中でも五本の指に入るほど術具を造る技能に通じている。クラフターとしての意

識もあって、粗悪なグリモアを使い捨てでばら撒いて歩くあの術士を見過ごせなかったのだろう。元同門となればなおさらだ」

「元同門?」

「先代から後継者に指名されなかったアグリッパ候補者、それが件の術士だ。当代のアグリッパから見れば兄弟子らしい」

 タケシはユミルの話を聞きながら、当時アグリッパもこの情報屋を頼って事に当たったのだろうと、その口ぶりから察する。

「アグリッパはどんな男だった?」

「穏やかな男だ。穏やかで理性的で、基本的に情け深い。だからこそ腹を決めると「こわい」」

「…なるほど」

 ユウトを思い浮かべながら頷く青年。アレも基本的に穏やかな生き物だが、怒るととてもこわい。

「それで、件のグリモアだが…。陣を敷設するためにばら撒かれた粗悪品ではあっても、歴代アグリッパが培ってきた技術が

幾分含まれている品だ。独立元のエルバスから狙われている弱小組織からすれば、喉から手が出るほど欲しいだろう」

「事情は理解した」

 表情を変えず腰を上げたタケシは、「…その事件、監査官達も知らないのか?」とユミルに問う。

「監査官にも調停者にも、あの件を把握できた者は居ないだろう。陣の完成から破壊、そして術士の排除まで半日かかららず、

症状が重篤化する者も出なかった。実に鮮やかで、速やかで…、グリモア二つが残らなければ、本当に何も残らなかったな」

 ユミルがここまで褒めるのも珍しいと感じながら、タケシは踵を返す。

(ユウトにはあらましだけ伝えておくべきだろう。接触の可能性が高い以上、相手の事を知っておいて損は無い)

 知らずとも遅れを取る相棒ではないが…。そんな事を考えて部屋を去ろうとしたタケシに、フードの下からユミルが問う。

「最近は一つ一つの事件に随分と執心するようになったが、この町に愛着でもわいたか?」

 無機質に響く合成音声では、興味をもっての質問なのか、からかっているのかも判らない。だが…。

「愛着…」

 タケシは呟いたきり足を止め、考え込んだ。

「…正直なところ、俺には判らない。だが、最も身近な土地というのは確かだ。記憶が無いせいで俺はこの町以外をろくに知

らない。実感を伴わない知識上の地理と短時間赴いた経験ばかりで、東護以上によく知る場所は無い。そういう意味で、最も

身近な街だ」

「………」

 ユミルはしばし黙す。フードの下に隠れた目が青年の真意を探るように後姿を窺っているが、内面に目を向けているタケシ

は気付かない。やがて、青年は適した言葉を探り当てて口を開いた。

「ホームタウン、という物かもしれない。愛着がどうのというのは判らないが、慣れてはいる。そうだな…、暮らす場所であ

り、帰る場所だ」

「…なるほど」

 そのユミルの音声には、答えに納得したというよりは、拍子抜けした…あるいは多少安堵したような節があったのだが、タ

ケシは変わらず気付かぬまま、ふと感じた事をユミルに問う。

「お前には他にあるのか?暮らす場所、帰る場所が」

「………」

 数秒の沈黙の後、

「その情報は、そうだな。現金払い9万でどうだ?」

 ユミルが提示した微妙な額を聞き、例え払っても有用な情報は得られないと悟ったタケシは、はぐらかされるために9万円

を払うのも馬鹿馬鹿しいので「不要だ」と述べた。

 そうして青年が出て行った後、ユミルは再び椅子にかけ、小さく息を吐く。

 そしてデスクの引き出しを開け、各種記録媒体やメモ類、拳銃やその予備マガジンが詰め込まれた中から煙草の箱を取り、

中から一本引き抜く。

「暮らす場所…。帰る場所…。そんな物がまだあったなら、こうまで後悔はしていない…」

 呟き、タバコを咥え、目深に被っているフードが焦げないよう少しだけ上げる。ライターの火に照らされて、フードの陰か

ら黒い鼻先が僅かに浮き上がった。

 あの頃からテイストが数度変わった。昔の味はもうしない。そもそも味覚も嗅覚も近頃ますます鈍くなってきたので、味自

体が変わっていなかったとしても昔のままではなかっただろう。それでもずっとこの銘柄のタバコを、頻度こそ落ちても呑み

続けている。まったくもって合理的ではないと思うのだが、習慣は抜けない。

 閉じた瞼の裏に、ふと昔の光景が浮かび上がった。


 灰色の髪の男の子と、すらりと背の高い黒髪の男が、こちらに背を向けて並んでいる。ホットコーヒーの入ったカップを手

に、作り物の窓…羊達がのんびり過ごす草原の景色が映し出された壁面を眺めて。

 広い通路の一角。象牙色の壁はそれ自体が仄かに発光しており、照明器具が無いにも関わらず影が殆ど生じない。元々存在

する建造物規模の遺物に、現代人の叡智を結集して築かれた要塞は、世界を幾度も滅ぼせるだけの力を内包しながら、しかし

宮殿のように美しい。

 空中要塞ヴァルハラ。先進国連合直轄の秘匿事項対策機関「フィンブル」の居城。暮らす場所、帰る場所、あそこは自分に

とってそう呼べる物ではあったのだろうと、ユミルは思う。

 何事か言葉を交わしている灰色の髪の男の子と、黒髪の青年。そこへのしのしと歩み寄ったのは、巨大な剣を背に担いだ大

兵肥満の北極熊。さらにその後ろに続くのは、身幅の狭いロングブレードを二本交差させて背負う、白い髪をショートカット

にした褐色の肌の少女。北極熊に追いついて横に並び、太い腕を抱えるようにして抱きついた少女へ、北極熊は少し困ってい

るような、そしてまんざらでもなさそうな微苦笑を向ける。

 その後方、数歩の距離を開けて歩むのは、大剣を背負う姿勢良く背筋が伸びた赤い虎の美丈夫と、無骨なプロテクターを纏っ

た逞しい灰色の馬。

 白い巨漢が軽く手を挙げ、白髪の少女が手を振り、赤い虎が微笑を浮かべて会釈し、壁際で振り返った灰色の髪の男の子が

軽く肩を竦める。

 次いで振り向いた黒髪の青年は、しかし顔形がよく判らない。口元や顎の形を見るに、おそらく端正な顔立ちなのだろう。

だがその顔は、仮面舞踏会で用いられるような目の周辺を覆うマスクに隠されている。

 何となしにその様子を眺めていると、突然腰を肘でつつかれた。

 ふと横を見れば、燃えるような赤と涼やかな白、くっきりした黒が美しく鮮やかなレッサーパンダが、意味ありげにニンマ

リ笑っていた。両腰に拳を当て、いつものように無意味に自信満々なポーズで胸を張り、集団へ向けて顎をしゃくっている。

 そんな彼女へ首を軽く横に振る事で応じると、反対側の視界の外から胸ポケットに手を突っ込まれた。逆側を見遣れば、そ

こには煙ったように色が薄いレッサーパンダを従えた、白虎の偉丈夫の姿。勝手にポケットをまさぐってタバコの箱を取り、

一本失敬して咥えた白虎の鼻を、ピンと指先で弾いてやって…結局ライターを貸す。

―ディンから緊急指令だとよ。ジーク、スカディ、スルト、ザンザス…、アドヴァンスドコマンダー四人に、今回はロキとビ

リーも同行するんだと。おまけに四個大隊出るらしい―

 そうか。と虎に応じて視線を戻す。皆が集まった中心の、仮面の青年へ。

―竜狩りだ。また先進国連合のお偉いさんに泣き付かれたらしいぜ―

 白虎が声と紫煙を吐き出した。煙った空気の向こうには仮面の青年。印象的な紫紺の瞳をマスクの中から皆に向け、何かを

告げつつ、微かな笑みを口元に浮かべていて…。

 最近は竜狩りが嫌に多い。

 それは口に出して言ったのだったか?それとも胸の内で呟いたのだったか?どちらにせよ白虎もレッサーパンダ達も何も言

わなかったような気がする。

 あの頃の自分は愚かにも、全く考えていなかった。ぼんやりとした予感はあったはずなのに、考えようとしなかったのだ。

 いつか『黄昏』が訪れる。必ず終わりが来る。自分達はきっとこのままではいられない。

 きっと、頭のどこかではその可能性に気付いていたはずなのに…。


 瞼をあけ、紫煙を吐き出す。

(…不破武士はまず間違いなくシロと見て良いだろう。ラグナロクの命令で送り込まれた訳ではない。首都での戦闘でも不審

な点は無かった。問題は、確実にラグナロク由来の技術と「素材」で生み出されているが、内部でどのような立場だったのか

がはっきりしない。…性能と各種技能から見るにエージェントかそれに等しいクラスの立場に置かれていただろうが…。記憶

が戻れば重要な情報源になるだろうが、黄昏に戻る可能性も高い。価値と危険が共に高い存在、か…)

 ユミルはフードごと体を少し震わせて苦笑する。

(それにしても、暮らす場所であり帰る場所、と来たか…。お前は最後までその考えを変えずにいられるのか、それとも、い

つか手放して結局あちらへ帰るのか、…後者となるならば、私も身の振り方を考えなくてはな。何せ…)

 携帯灰皿にタバコを押し込み、始末をつけて情報屋は呟く。

「ラグナロクに居所を知られるのは、未だまずい…」