第一話 「潜霧士」
金色の大熊「神代勇仁」と、黒刀を携えた少年「不破武実」。二人はダイバーとして霧中を駆ける。
第二話 「実地訓練」
ユージンに連れられたタケミは、ホームとは違うゲートからダイブを行なう。異なる環境での日帰り実地訓練。…の、はずだったが…。
第三話 「霧抜き」
神代潜霧捜索所は休暇に入る。定期的に設定する休日で、この仕事には付き物ともされるダイブしない期間…。これを、霧抜きと呼ぶ。
第四話 「内々の話」
街に出て施設を回る中、タケミはスーツの新調のため工房に連れていかれた。肉の付き方が気になる少年には羞恥の時間である。
第五話 「雷電」
素人を護衛しながらの潜霧、タケミには初経験の仕事。大変ではあるが少年の頑張りもあり、潜霧計画通り順調に進んでいたが…。
第六話 「黒狼」
綿密な潜霧計画は、予定外のアクシデントで崩された。ユージンは走り、タケミは倒れ、そして…。遠吠えが、深い霧をも震わせる。
第七話 「猟師の帰国」
それは、大きく、白く、強靭で、何もかもが規格外だった。多くの者には理解不能な規格外、しかし少年にとっては、何より馴染んだ親友だった。
第八話 「四等昇級試験」
タケミが長らく備えてきた昇級試験が始まった。合格すれば大穴表層の何処にでも行ける。夢へ近付く階段に、少年は足をかけた。
第九話 「土肥の大親分」
四等昇級試験中に起きた大規模トラブル。実戦でも殆ど遭遇しない土蜘蛛の群れ。キナ臭さを感じて調べに回るタケミとアル。その行く手に…。
第十話 「昇級祝いBBQ」
タケミとアルの四等昇級祝いに、約束されていたパーティーが開催された。ダリア達も交えて休日を堪能する中、タケミは雌虎に訊きたい事があった。
第十一話 「ホールと狸と捜索と」
事務所に舞い込んだ依頼は、大隆起当時の住居から思い出の品を回収したいという物だった。立ち入り制限区域に、少年達はダイブする。
第十二話 「彼岸の帰郷」
四等昇級の墓前報告も兼ねて、タケミは秋の彼岸で故郷に帰る。住み慣れた故郷、馴染んだ実家、そして…。
第十三話 「いつか見た星」
憩いの時は瞬く間に過ぎる。思い思いに過ごす短い帰郷を終えれば、次の潜霧が待っている。
第十四話 「土肥遠征」
昇級試験の折、避難的に足を踏み入れた土肥を、今度は目的地として目指す。土肥の大親分との面会を前に、緊張気味のタケミだが…。
第十五話 「刀利き」
父の遺品でもある黒刀は、かつて土肥で打たれた大業物。そう聞いていたタケミは知らない事ばかりの愛刀を、トラマルの案内で工房に持ち込む。
第十六話 「巻き狩り」
俵一家をはじめとする土肥の潜霧団と共に、タケミとアルは危険生物の大規模駆除活動に従事する。とはいえ、タケミは大親分の供回りになり…。
第十七話 「地下を闊歩する者達」
巻き狩りの最中に上がった狼煙、それは合同訓練を兼ねた駆除活動の終了を意味する合図となった。かくしてアルは出会う。己の心の傷に。
第十八話 「緊急通達」
危険生物の駆除を兼ねた巻き狩りの演習は、それどころではなく中断された。出現する機械人形。彼らを呼び寄せる何かを巡り、大穴に緊張が走る。
第十九話 「それは普通に下らない」
機械人形の出現にはある荷物が関係している。狸がもたらした情報が拡散され、捜索と対処が進む中、タケミはヘイジに預けられ、行動を共にするが…。
第二十話 「ダイバーズハイ」
後悔がある。取り返しのつかない事がある。それはきっと生涯埋まらない穴。…けれど、もしも、埋め合わせの機会に恵まれたならば…。
第二十一話 「鎧袖一触」
数を増す機械人形。演習のはずだった巻き狩りは生存競争の場に変わる。されど、剛弓が震え、豪拳が唸る。土肥ゲートは俵一家の庭。管理権限は人形に無い。
第二十二話 「自切り」
その男はかつて、将来を期待された。その男はかつて、栄えある立場をあてがわれた。その男はかつて、その立場を放棄した。そして男は責任を取る。
第二十三話 「血清」
霧。因子汚染。獣化。人類には現在有効な対抗手段がない現象。しかし、もし手段が存在しているとしたら…。それは、余人に触れさせてはならない禁忌となる。
第二十四話 「法律屋」
事件の裏を読みながらも、目前の事に対処するべくあちこちに手を回すユージン。そして俵一家は、かつての同胞の処遇を決めた。
第二十五話 「それもまた平凡な日々」
新体制と導入した作業機を試しながら、神代潜霧捜索所はホームの熱海でダイブを繰り返す。潜霧、講習、買い物、メンバーはそれぞれ平穏な日々を過ごす。
第二十六話 「あるいはそれもまた平凡な日々」
タケミの霧抜きを挟んだ週末は、潜霧もなく各々がそれぞれ用事を作った。少年は久しぶりに保護者と二人だけの休日を送る。
第二十七話 「たぶんそれでもまだ平凡な日々」
思い思いに羽を休める所員達。少年は金熊と網焼きバーベキューを楽しみ、満ち足りた気分でゆっくり風呂に、…浸かるはずだったのだがそこへ…。
第二十八話 「南征」
いよいよ南エリアへの遠征を開始した神代潜霧捜索所。未踏の地に挑むタケミ。その一方、南エリアには彼の到着を心待ちにする者の姿があった。
第二十九話 「月乞い」
南エリア、ウォールDとそこに属するゲートをホームとする潜霧団、月乞いの元へ挨拶に赴く一行。出迎えるのは精鋭達と、彼らを率いる狛犬兄弟。
第三十話 「南エリアの生き方」
新たに足を踏み入れたエリアで、実地訓練として現地潜霧士達とそれぞれダイブするタケミ達。過酷な生活環境を、少年達は肌で学ぶ。
第三十一話 「霧の影響」
南エリアでの一日が終わる。ジョウヤが話し易かったので、思いのほか緊張しなかったと安堵するタケミ。一方でアルは体の疼きが収まらず…。
第三十二話 「ヤマギシ」
新たに踏み入ったエリアで少年達はそれぞれ経験を積む。不気味な微震が繰り返す中、少年は故郷の友人の知り合いについて訊ねた。
第三十三話 「回収作業」
タケミ達が偶然発見できた倉庫の一室、その貴重な大隆起当時の品を残らず回収すべく、運び出し作業が計画された。
第三十四話 「足長と手長」
物品搬出作業の最中、協力して警戒に当たっていた各潜霧団から救援要請が上がる。出現した機械人形の中には、タケミが初めて相対する上位機種も混じっていた。
第三十五話 「データ照合」
足長に手長。上位機種であるそれらは、単純な戦闘能力以外にも厄介な点がある。共有データとの照合は、少年達に「過去の脅威」との共通点を見出す。
第三十六話 「救難頻発」
立て続けに上がる救難信号に、一等潜霧士達が対処して回る中、負傷者がキャンプへ集まり出す。治療と防衛と救護、人手は圧倒的に足りていなかった。
第三十七話 「ハイパーヴェロシティ」
気付けば、救難信号を辿るように転戦する羽目になっていたタケミ。道すがら目にする妙技絶技。そして少年は知る。「強さ」とはこうも多様なのかと。
第三十八話 「撤収」
救難要請の対応も一段落し、怪我人の搬送と撤収が視野に入った頃、突然の縦揺れが南エリアを襲った。ただの揺れか。「前震」か。緊張が走る。
第三十九話 「字伏」
「字伏」。霧を晴らす事を悲願とする氏族。そのために全てを投げ打つ一族。その歪みを、暗部を、味わわせたくない故に、彼らは少年に「伏せ」ていた。
第四十話 「やり残し」
滞在の最後に、自分の特技で世話になった事へ報いた少年は、ホームグラウンドへ戻る。だがその最中で知った。自分は一つ、やり残していたと…。
第四十一話 「土肥のお祭り」
神代潜霧捜索所は休暇を兼ねて祭り中の土肥を訪れる。大親分に用がある所長と副所長は別として、少年達は賑やかな空気を堪能し…。
第四十二話 「朽ちた鞘」
少年達を祭りに出かけさせた一方で、ユージン達は大親分と面会する。内容は南エリアの運輸改善の予定だったが、向こうから予定外の話が出る。
第四十三話 「インビジブル」
土肥の祭りに暗躍する影。誰も知らない、誰も見ていない、誰にも捕まらない、連続殺人鬼インビジブル。都市伝説の存在だったはずの、ソレが…。
第四十四話 「漣に蔭る水鏡」
表向きは「事故」しか起こっていない土肥を悪徳法律屋は闊歩する。騒動の正体も何をすべきかも解っている。彼にとって、それはただの「処理」だった。
第四十五話 「未遂のテロ」
土肥の夜を騒がせるはずだったテロは、計画者が予想していない形で完全に潰された。介入した両者はそれぞれの方法で現場を離れ…。
第四十六話 「配達人」
それは届ける者。如何なる障害も越え、到達し、結末に導く者。人の身で抗い切れる物ではない、不意に肩を叩いて訪れる、死、そのもの。
第四十七話 「ステージ9」
圏警などが事件の全容解明に奔走する中、土肥は日常へ戻る。熱海へ帰るアルが連絡を楽しみに待つその頃、観光客のクロコダイルは…。
第四十八話 「昏いしじまにたゆたう漣」
一件落着とは言い難い、関係者が事後処理に追われる夜。熱海に戻った一行はマミヤを加えて夕食を摂り、シロクマは気になる相手のメッセージを待つ。
第四十九話 「思い思いの後夜祭」
祭りも終わった土肥に陽が沈み、伊豆に新たな朝が来る。次の出陣までの短い日常、各々が思い思いに時を過ごす。
第五十話 「遠征準備と試験準備と」
平常運転に戻る神代潜霧捜索所。少年の遠征にシロクマの試験勉強と、並行してタスクをこなすその間、各所でも動きがあった。
第五十一話 「同好の士とひと時の幸福」
タケミが土肥に、ユージンが本土に発ったその日、シロクマは養母手製のシチューを引っ提げ同好の士の家に向かう。
第五十二話 「二面写真」
神代潜霧捜索所のメンバーが珍しくバラバラに過ごす夜、別の場所でそれぞれ、同じように写真を表示する者があった。片やクロコダイル。片や…。
~Long time ago~
過去の断片集。かつて大穴であった、様々な出来事の話。
「影と雷」
ユージンがまだ二十代だった頃。不破潜霧捜索所があった頃。皆が居た頃。いつも一緒に潜っていた、兄弟同然の男が居た。